第八話 12神傑剣士会議終了と第2座

 俺に似た能力、全ての剣士をレベル5まで上げることができる人間……か。任務にあたる側からすればなかなかに面白そうな相手だ。


 「そのレベル5のプロムは神託剣士を負かすのだ、それほどの実力がもともとあった剣士か、それに近しい実力を持った剣士だろう。接触した場合は注意を怠らぬこと」


 ってなると困るのは俺らだよな。相手は聞く限り俺らのこと知ってる様子だし、でも俺らは相手を知らない。圧倒的にスタートラインが不利だ。


 これをなんとかするのが神傑剣士なんだけど、レベル6に近いレベル5とか未知数過ぎる。死ななければいいんだがな。


 とは思いつつも俺は戦えることに正直ウキウキしていた。猛者と剣を交えることができるのは俺が神傑剣士になったときに勝負した当時第7座の神傑剣士で最後。他にも現第1座から第12座まで全員と戦ったがお互い本気ではなくお遊びだったので真剣ではなかった。


 「そしてこの任務の指揮はルミウ、君に任せる。状況判断が速い君なら適任だ」


 「了解」


 ルミウはドヤ顔でこちらを見る。


 分かってるってお前より私の方が上だって言いたいんだろ。状況判断の速さでお前に勝てるやつはそんないねぇよ。だから悔しくもねーし。


 どうせ剣を抜いて本気で戦うなら俺が勝つのでそこまで悔しくはない。むしろ煽られるのは楽しいと思えるほど遊んでやってる気分だ。


 まぁ、これも仲がいいと言えるかもな……。


 「私から最後に――プロムはよく短刀を装備して武器として扱う。その短刀で殺しにかかるのだが、君たちや神託剣士のほとんどには回避可能だ。つまり回避したら神託剣士以上の剣士だとバレることになる。そして短刀を投げられた剣士は必ず襲われている。もし投げつけられたのなら気をつけること」


 国王からの最後の言葉はこの前の俺を見ていたかのようなアドバイスだった。


 「陛下、短刀とはこれのことでしょうか」


 テンランに渡そうとして忘れていた短刀をホルダーではなく内ポケットから取り出す。


 「うむ。そのような形状だったが。まさか」


 「はい。俺も学園から帰宅する際投げられ、たまたまを装いましたがしっかり回避しました」


 こんなことになるなら刺さっとけば良かったな。どうせ刺さっても軽症、酷くて3cm刺さって出血ぐらいだったし。任務前からやらかしたかもしれないな。


 毒や殺傷力のある薬ではないと後で確認したからこう言えるものの実際その場で毒があるかないかなんて一瞬で見分けることは不可能。故に回避するしかないのだ。もし毒なら死ぬ可能性もあるのだから。


 「おそらく君が神傑剣士だとはバレていないだろう。だが、たまたま避けたとしても次は君を神託剣士と思い狙って来る可能性がある。良きことか悪いことかどちらに転ぶかな」


 できれば良きことになってくれないかな。めんどうは避けたい。


 クネクネした短刀で、一般的には使わない。ってか見たこともない。それはつまり刀鍛冶が作成したものってことになる。相当な腕のようで、作ったやつの殺意がほんの僅かに感じる。


 喧嘩を売る相手を間違えたと思わせれるか、それとも喧嘩を売って良かったと思わせてしまうか、さーどっちだろうな。


 「私からの話は以上。君たち神傑剣士からは何かないかな?」


 思っていたより早い会議だった。緊急過ぎたのもあるだろうがいつもは1時間ほど会議だけで時間を使うのに対して15分も経たずに話し終えた。


 任務はこの会議が終わり次第開始される。やり方は指揮されない限り自由。しかし俺にだけまだ穏便にというオマケがついているが。


 国王の問いかけに全員『ありません』と答え正式に12神傑剣士会議フォースドが終了となった。


 国務で忙しい国王はすぐに会議室を出られる。その前に全員で抜刀し剣を胸の前に掲げる。これでここにいる剣士の任務が始まった。


 会議は終わってもみんな帰らない。理由は滅多に集まることがないから。こんな集まれば仲の悪い剣士がいてもおかしくないのだが、なぜかこのメンバーは12名全員仲がいい。


 ルミウについては俺が敵対心を持たれてるだけで嫌いというわけではないらしい。そんなルミウも今は大変だ。


 「ねぇ、ルミウちゃん、私に指揮権譲ってぇ!」


 「無理です。これは国王直々の指名なので私の一存では譲れません」


 ド正論を食らったな。シウムはなぜこうも子供なのだろうか。駄々をこねるとこを見てると恥ずかしい。


 18歳の俺に幼いと思われる23歳とかもうどうしようもないわ。


 「にしても国王陛下もここフォースドでイオナとルミウを選んでくるってことは相当危惧してるみたいだな」


 「それは俺も思う。焦ってる感じはなかったけど選ばれた時に思ったな」


 第1座ルミウと俺を選んだことに俺と似た思いを持ったのは神傑剣士第2座のメンデ・トゥーリ。最年長の30歳で現神傑剣士の中で歴が最も長いのもメンデだ。


 8年前から第2座についており第1座を狙うこともなく、ただ挑戦してくる神託剣士を打ちのめし、この座をキープしている。国民に最も好かれているイケオジのような立場にあり、剣技の才は言うまでもない。よく任務に就くとき指揮を任される。異名は闇夜の剣士。


 「それよりイオナ、お前まだいじめられてんのか?」


 「違うぞメンデ、いじめられてるんじゃない、いじめられてやってるんだ。ここ勘違いするなよ」


 「はははっ!結局ボコボコにさらてんじゃねぇか!はははっ!!」


 高笑いを決め込む。こういうとこがたまにうざいが、嫌いではない。


 「お前をボコボコにできるのはそのリュートってやつだけじゃねぇのかよ、はははっ!」


 「……ったく」


 いつまで笑うことやら、あら涙まで出てきちゃって。そのうち俺の刀がお前の目を貫いてるかもしれないからな。


 イケオジとはいえ神傑剣士。正式な場所でなければ戦うことは許されていない。だからできて短刀での勝負。まぁ短刀でも勝つから場所なんてどうでもいいんだが。


 周りを見渡せばみんな久しぶりと笑い合ったりしている。この空気、俺は大好きだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る