第七話 12神傑剣士会議と第1座
「落ち着きたまえシウム。この任務にはもうすでに対応剣士を決めているんだ」
「えぇー、それって私じゃないってこと?」
同じ神傑剣士としてこんなちんちクリンに国の重要任務を任せたいとは思わないな。でも任せれるほどの強さと信頼はある。それでも思わないのは後先考えずに行動するタイプのシウムには荷が重い。
失敗はせずとも、国民に何かしらの情報が漏れる可能性はある。過去に1度、シウムのやらかしを見たときは信じられなくて開いた口が塞がらないとはまさにこのことだと実感した。
「今回の任務に当たってもらうのはルミウとイオナの2人だ」
シウムのことを無視して発した国王の選んだという剣士はなんと俺も入っていた。
「陛下、1つよろしいですか?」
「ああ、構わないよ」
「なぜ俺なのでしょうか。俺はまだ学園を卒業していません。もしバレたとき困るのは俺たち神傑剣士では?」
卒業まで名乗ることを許されてない俺が、公の場で姿を表し神傑剣士だと名乗ればそれは禁止行為にあたる。それなのに国王直々に指名するのは矛盾をしている。
そんな俺の発言に他の神傑剣士はそうだと頷く。
「これは極秘任務だ。だから君が任務に就かずとも誰もが公の場はもちろん、国民の前に出て活動することはない。だから君を選んだんだよ」
「ですが……」
「それに君もそろそろ退屈しているだろう?だからこれを機にその退屈を発散してくれないか」
国王は国民よりも俺たちを心配してくれる。俺が学園でいじめられてることはテンランに俺が口止めしてるので知らないものの、学園生活を力を持つ俺がストレスなく過ごせるよう気にしてくれている。
その国王が言うことは俺の今の悩みを解消するためのものだった。従わないわけにはいかない。いや、従いたいと思っている。
「ご厚意痛み入ります、陛下」
「うむ。賢く立ち回ることを忘れるでないぞ」
「はっ!」
こうして俺が任務に就くことは決められたのだが……。
「陛下、もう1つよろしいでしょうか」
「うむ」
「大変申し上げにくいのですが――ルミウが俺との任務に乗り気でないように思えるのですが……」
ルミウ。フルネームをルミウ・ワン。年齢20歳にして神傑剣士第1座に君臨するこの国最強の剣士だ。女性でありながらも恵まれた才を活かし努力を続け、俺が神傑剣士になる1年前に第1座に就いた。異名は陽炎の剣士。
そんなルミウなのだが、神傑剣士に最年少で就き、最強の座である第1座を得た猛者として王国中に広まった。ここまではいいのだ。しかし1年後、俺の噂が立ち始め、公ではルミウが最強となっていても国民には最強は第7座と知れ渡り実質俺によって最年少記録と最強の座を奪われたので俺に敵対心を持っているのだ。
ほらー今もめっちゃ睨んできてるし!嫉妬なんて可愛いもんだわ、睨むだけで殺意込めるとかどんだけだよ!
「ということだが、どうだいルミウ」
「乗り気ではありませんが任務には就くつもりです」
殺意を一瞬で消し、視線も国王へと向ける。その間はまさに刹那。目で追うことは不可能。そんなルミウの才能は計り知れないのが怖いとこだ。今飛ばした殺意もそうで、普通なら殺意は誰にでも察知できるものだが、ルミウの殺意は特定の物に向けて放つことができるので、俺以外に殺意に気づいた剣士はいない。
そんなルミウは任務には参加してくれても協力はしてくれないだろうし結局は単独行動かな……。
俺は仲良くしたいんだけどな。剣技に自信がある剣士ほどプライドも高いと言われるが高すぎるルミウは調整が必要だと思う。しかし高いプライドを持つことはすなわち誇り高き精神を持つことに繋がるので一概に悪いことだとは言えない。
「これでいいかい?イオナ」
「問題ありません。ありがとうございます」
それからルミウの殺意は襲ってこなくなった。代わりにシウムの私が行きたかったのにというぶつぶつ愚痴が聞こえてくる。みんな聞こえているが無視をしている。これが慣れというやつだ。恐ろしいな。
「では、詳しくその任務について話す。任務外の剣士も聞き逃さないように」
「はっ!」
12名寸分違わず返事をする。神傑剣士ならこうでなければ。
任務外の剣士が聞く理由は1つ。それは任務外であれ、各々やるべきことがあるから。これは暗黙の了解であり義務としても決められていないことだが、任務にあたる剣士が目標の討伐をするのに対して、任務外の剣士はそれを裏からサポートすることがある。そのために同じ情報を耳にする必要があるのだ。
「まず、今から任務で敵として出るレベル5を称して『プロム』と呼ぶ。そのプロムについてだが、レベル5にしては妙な強さを持っている。先程も言ったように神託剣士ですら敗北するほどの実力を持っているのだ。普通ならありえないが何らかの小細工をしてレベルを無理に引き上げていると思われる」
「小細工ですか?」
「ああ。小細工と言ってもパッと浮かんでこないだろうが、憶測で言うとイオナのように全剣技をレベル6で扱える人間が存在するように、プロムにも他人のレベルを5まで上げることのできる刀鍛冶または剣士が存在しているかもしれない」
久しぶりに国王の真剣な眼差しを見た気がする。なかなか見せないがそれほど今の状況がよろしくないのだろう。なるべく早く解決しなければ死者が出ると危惧するのも異例のことだ。
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