後編 俺は、夏芽雫先輩との関わりで、前向きになれるのだろうか…?
第23話 実妹と迎える、新しい朝食の時間
おっぱいとは――
大きい方がいいか、小さい方がいいか。
悩むところではある。
色々な胸の膨らみがあるゆえに迷い、考え込んでしまうのだ。
だがしかし、色々なおっぱいがあるということは、ニーズに応えられていることだと思う。
そんなことを思いつつ、春風浩紀は朝、自室で目を覚ました。
「今日は普通に学校か……」
ちょっと体が痛かった。
昨日、久しぶりに泳ぎ、普段は使わない部分を多用しことで、筋肉痛に陥っているのだ。
「でも、これくらいであれば、何とかなりそうだし……」
浩紀はベッドから立ち上がると、簡単なストレッチをし、背伸びをして自室の扉へとゆっくりと歩むのだ。
木曜日の朝。
自室を後にした春風浩紀は階段を下し、リビングへと向かう。
一先ず朝食をとった方がいいと思った。
一階リビング前にたどり着くなり、扉を開け、室内に入るのだ。
「おはようございます、お兄さん」
顔を合わせてくれる妹――友奈の姿が見える。彼女は朝食のおかずをテーブルに置いていた。
エプロン姿ではあるが、昨日とは違い、制服の上にエプロンである。
裸エプロンではないことに、ちょっとだけ寂しく思う。
もう一度、見たかったな……んッ、な、なに、妹に、そんなことを……。
浩紀は血の繋がった妹に変な思考を巡らせないために、一度、指で右の頬をつねるのだった。
い、痛い……。
筋肉痛の痛みよりかはマシだが、その痛みによって、ようやく本当の意味で、目が覚めたような気がした。
「お兄さん、一人で何してるんですか?」
「な、なんでもないよ」
浩紀は適当に内面の感情を誤魔化しつつ、テーブルの方へと向かった。
「今日は、お兄さんは好きそうなタコさんウィンナーにしておきました」
「別にそこまでは」
「でも、美味しいって言ってくれたじゃないですか」
「そ、そうだな」
「美味しいってことは、好きなのかと思いまして。違いました?」
「……」
なんて言えばいいんだ……。
好きじゃないとか言って、妹の悲しむ顔は見たくない。
そう思った浩紀は、本心を隠すように――
「いや、俺は普通に好きだったよ、ありがとな」
浩紀は多少の笑顔を見せつつ、妹へ返答するのだった。
「ですよね? お兄さん好きですよね? では、一緒に食事しましょう」
友奈は席に座り、箸を持つ。
「お兄さんも座って」
「ああ」
浩紀はテーブルに近づき、椅子に腰かける。
テーブル上には丁寧なほどに、タコさんウィンナーの他に、ご飯、みそ汁。そして、おしんこまで用意されていたのだ。
友奈はなぜか、おしんこが好きらしい。そもそも、おしんこを好んで食べる若者はあまりいないと思う。どちらかというと、年齢を重ねた感じの人が口にするイメージがあるからだ。
おしんことは、味付けされたキュウリや大根が基本となり、地域によって、多少の違いがあるらしい。
浩紀は一先ず、おしんこのキュウリを口に含んで、ご飯を食べた。
おしんこは、友奈が味付けをしているらしく、それなりに美味しい。普段から料理をしているだけあって、店屋並みの味がするのだ。
友奈も積極的におしんこを食べていた。
「お兄さん?」
ふと、おしんこを食べていた友奈の手が止まる。
妹は浩紀に視線を向けているのだ。
「どうした?」
「あの一応聞いておきますが、水泳部として活動するんでしょうか?」
「本格的にはやる感じじゃないけど……のちにはな、多分」
「続けるには続けるんですね?」
「まあ、そうだな」
浩紀は頷いた。
「でしたら、練習しているところを見たいんですけど、いいですか?」
「練習? いや、そんなに面白くないと思うけど?」
「そうでしょうか?」
「いや、本当につまらないよ? だって、まだ、ウォーミング的な練習ばかりだしさ」
「でも、久しぶりにお兄さんが水泳をしていますし。見たいといいますか。本当にダメですか?」
友奈は上目遣いで聞いてくるのだ。
「……見たいのか?」
「はいッ」
友奈は普段よりも元気な笑みを見せてくれるのだ
上目遣いの視線に加え、明るい笑みに圧倒され、拒否するのも申し訳なく思う。
「では、行ってもいいですか?」
「まあ、いいけど……」
「本当にいいんですよね?」
友奈は席から立ち上がり、兄である浩紀をまじまじと見つめている。妹の瞳は輝いていた。
「いいよ。それよりさ、まずは落ち着いて」
「はい」
友奈は妙に積極的だ。
好意を抱いてほしいから、グイグイ来ているのかもしれない。
妹は再び、箸を握りしめるのだ。
楽しそうに食事を続ける友奈は、本当に嬉しそうであった。
妹が喜んでくれるのなら、別にいい。
浩紀も、学校に遅れない程度の速さで食事を進めるのだった。
「では、制服も整いましたし。一緒に行きましょう、お兄さんッ」
友奈は後ろで、靴を履いている浩紀を見やる。
玄関にいる二人。
先ほど朝食を終え、制服を着、学校に向かう最終段階に入っていたのだ。
「お兄さん? 忘れ物とかないですか?」
「ないよ。そこまで心配しなくてもいいさ」
「ですよね。でも――……」
「え?」
どこか違う。
浩紀の視界に映る妹の雰囲気が異なる。
なんせ、顔を近づけてくるのだ。
その数秒後、浩紀の頬が薄っすらと温かくなった。
気づけば、友奈は頬を染め、愛らしく微笑んでいる。
「……」
「手を繋いでくれますか?」
「……」
「どうしたんですか?」
「あ、う、うん、ああ……」
浩紀はようやく現状を把握した。
冷静になって考えられるようになると、浩紀の体が熱くなっていく。
先ほど実の妹から頬にキスされたのである。
実妹からのキス。
血の繋がっている相手からだと、複雑な心境だ。
女の子から口づけは嬉しいのだが、心が動揺し、上手く返答ができていなかった。
多少、声が震えている。
「お兄さん? もしかして……恥ずかしいんですか?」
「え? ち、違うし……」
「でも、頬赤いですよ?」
「そ、それは、友奈もだろ……その、頬が赤いぞ」
「お兄さんも……」
「いや、友奈も素直になればいいだろ」
「お兄さんこそ、素直じゃないです」
「……」
「……」
二人は朝の時間帯なのに、どうでもいいことで、睨み合っている感じだ。
「はああ……もうやめようか。時間もないし」
「……そ、そうですね」
「まあ、いいや、手を繋ぎたいなら繋ぐよ、ほら」
浩紀は手を差し伸べてあげるのだ。
「⁉」
「どうした?」
友奈の要望通りに手を差し伸べてあげたのに関わらず、妹は頬を真っ赤に染め、恥じらっているのだ。
「い、いいですッ……わ、私、一人で行きますので」
友奈は背を向けるなり、玄関の扉を開け、一人で勝手に学校へと向かっていく。
やっぱり、恥ずかしいんだなと思いながら、浩紀も外へ出て、友奈を追いかけるように、学校へと向かって走るのだった。
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