第19話 水着姿の先輩の想いは、どこから…?
「浩紀。今月中、時間とかってある?」
「時間ですか?」
学校終わりの放課後。
プール近くの個室。
そこで、浩紀は水着姿の先輩から問われるのだ。
露出度の高い姿の夏芽先輩は、ベンチに座っている浩紀の右隣に腰を下ろす。
彼女はこの前、隣町のデパートで購入したビキニ系の水着を身に纏う。スク水よりもハッキリと谷間が見え、浩紀の性的興奮を加速させた。
しかも、彼女は豊満な胸を、浩紀の右腕に押し当ててくるのだ。
「ねえ、どうなの? 時間取れそう?」
「多分……特に今のところ予定はないですし」
「じゃ、水泳の練習試合に参加してくれない?」
「え?」
急な練習試合を突き付けられる。
なぜ、水泳をしなければいけないのだろうか?
マネージャーの何かとして、先輩の隣にいるのに、どうしてと疑問に思う。
「俺は、いいです……」
小さい声で、消極的に呟いた。
「無理なの?」
先輩は首を傾げる。
「……でも、どうして、水泳から距離を置こうとするの?」
「それは……もう、いいんです」
浩紀はあまり昔のことは思い出したくなかった。
「言いたくないこと?」
「……はい」
浩紀は水泳から視線をそらし、頷く。
心苦しさに襲われる。
過去のことを振り返りたくない。
昔は、水泳が好きだったものの。あの一件以来、水泳と距離を置きたくなかったのだ。
「私は昔のように戻ってほしいのに……でも、どうしても無理ってこと? プールの中に入るのも嫌?」
「はい……」
「見るのも?」
「見るのは別にいいですけど……」
プールの水に、入る気にはどうしてもなれなかった。
過去のトラウマが戻ってくるようで辛い。
「でも、浩紀にはもう一回、泳いでほしいなって思って。県大会に行けるほどだったでしょ?」
「……先輩って、もしかして知ってるんですか?」
「うん。知ってるよ」
先輩の口ぶりからして、中学生の時だった浩紀のことを知っている感じだ。
だがしかし、浩紀は先輩のことを知らない。
「だからですね……先輩が水着姿で俺の前に現れたのは。俺のことを知ってて、話しかけてきたんですか?」
「そうだよ、浩紀は知らなかったみたいだけど。私は知ってたよ」
「そうですか。いつから、俺が元水泳部だって気づいていたんですかね?」
「私が中学三年の頃から」
夏芽先輩は浩紀を優しく見つめている。
「どうしてやめたの? 嫌だったの?」
「嫌だったというか。別に嫌でもなかったですけど……」
浩紀は言葉に困る。
なんて答えればいいのかわからない。
思い出したくないという感情と過去の苦しさに襲われた。
「水泳について話したくないなら、これまでにする?」
「……」
「でも、私ね。浩紀が水泳をやっていたから、今の私がいるような感じなの」
「俺の影響?」
「そうだよ。浩紀が中学の頃、水泳をやっていなかったら、私、高校生になってもスク水なんて着ないし」
「そんなに俺、先輩に影響を与えていたんですか?」
「気が付かなかった? 浩紀は私の人生を変えてくれた存在だし」
「そんなに俺を持ち上げないでくださいよ。俺はそんなに優秀な人じゃないですし」
「浩紀は、自分のことを低く見すぎじゃない?」
「低いですから」
「そんなところよくないって」
夏芽先輩は豊満な胸を押し付けてくる。強引なほどに。
急なおっぱいの押し付け具合に、浩紀はドキッとした。
おっぱいの膨らみが重点的に当たる。
スク水よりも布の面積が狭く、余計に白く透き通った肌が接触するのだ。
水泳は好きじゃないのに、水着姿の先輩は不思議と魅力的に見えた。
「ねえ、もっと自分に自信を持ちなって、浩紀? もう少し心を曝したら? そっちの方が、気が楽になるんじゃない?」
「……」
心が苦しい。
夏芽先輩の体はなぜか暖かく感じる。
でも、心が締め付けられるように苦しいのだ。
やはり、過去のトラウマが強いからこそ前向きになれず、右隣にいる先輩を直視できないのかもしれない。
「俺はまだ、曝すことなんてできないです」
「ねえ、いつまで過去を恐れるつもり?」
さらにおっぱいを押し当てられた。
「……過去なんて……もう忘れたいんです」
おっぱいを感じつつ、色々な意味合いで緊張を抱え、苦しい感情を口から吐き出した。
「そんなんだと、いつまで経っても変わらないよ? それでもいいの?」
「俺はそれでもいいです」
浩紀は自信なく呟いた。
「私、いつも平凡に生きている浩紀を見てて辛いの。だからね、昔のように元気になってよ。中学の頃、水泳と向き合ってた浩紀は恰好よかったし」
夏芽先輩は自分で言っておいて、頬を紅葉させていた。
「なんか、先輩も恥ずかしいって思うときってあるんですね」
「な、なに? 私が恥ずかしがらないとでも?」
「だって、先輩は俺と出会う時、いつも水着姿じゃないですか。今だってそうですけど。羞恥心と無関係かと」
「そんなんじゃないし……浩紀にその気になってほしいから。水着姿だっただけだし。浩紀って、どんな水着が好き?」
「なんですか、急に話題の切り替えなんて」
「いいから。答えてよ」
夏芽先輩のおっぱいを通じて、右腕に彼女の内なる思いが伝わってくるような気がした。
「先輩が着るなら、別になんだっていいです……」
「本当? 嘘ついてんじゃない?」
「なんで、そう思ったんですか?」
「だって、声震えてるよ? 絶対に隠してるし」
「……ビキニ系とか?」
「じゃあ、今のままの姿が一番好きってこと?」
「はい……」
「じゃあ、今後もこの姿でいいってことね。放課後の時間帯は、この姿で決まりね」
夏芽先輩ははにかんでくれる。
嬉しそうに表情をほころばせる彼女の姿は魅力的に映った。
それは、おっぱいが大きいとかそういう理由で感じたわけではない。
純粋に、先輩の雰囲気に惹かれたからなのだと思う。
自分でも驚きだが、おっぱいに関係なく女の子と向き合ったのは初めてだった。
女の子の魅力はおっぱいだけじゃないと、今更ながら気づいたような気がしたのだ。
「ねえ、もう一度聞くけど……浩紀って、もう一度水泳とかやってみない? 新しいことがわかるかもしれないよ?」
「……あとで考えておきます」
「あとで? 今じゃなくて」
「はい。もう少し考えたいんです」
「まあ、それでもいいかな。浩紀が前向きになれる判断になるなら、いいよ。もう一度水泳をやりたいって、浩紀の口から聞きたいし。できれば、明日までに返答を聞きたいの。それでもいい?」
「はい……考えておきますから」
「じゃ、お願いね♡」
夏芽先輩は強引に胸を押し当てた後、距離をとるように立ち上がった。
立ち上がる行為だけで、先輩のおっぱいは大きく揺れ。ビキニだからこそ、余計に、おっぱいの大事なところが一瞬だけ見えてしまったのだ。
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