希薄な関係の実妹と、女友達のいる俺が、学校一の美少女と付き合うことになったら、おっぱいを見たり、感じたりする機会が増えたのだが⁉
第14話 俺は今からマークマターのところに行くんだけど、君も来るかい?
第14話 俺は今からマークマターのところに行くんだけど、君も来るかい?
「じゃ、またね♡」
「はい」
地元駅に、浩紀と夏芽先輩は戻ってきていた。
家が別々であり、駅の外に出ると簡単に挨拶したのち別れたのだ。
先輩と一緒の休日を過ごせただけでも、心地よいひと時だったと思う。
隣街のデパートで、先輩はビキニ系の水着を購入し、試着室内で生着替えをしてくれたのである。
先輩はどんな水着を着ても似合う。
たとえ、いつも通り、身に纏っている学校指定のスク水だったとしても魅力的に見えるのだ。
元々の容姿が良いため、露出度の高い衣装が、先輩の姿をさらに飛躍させているような気がする。
水着売り場の試着室にいる時は緊張のあまり、先輩の裸体や水着姿を直視することなんてできなかった。
来週、学校でもまじまじと見せてくれるらしい。そんなことを、帰りの電車に乗っている時に言われたのだ。
車内では隣同士の席で、先輩は楽しそうに水泳のことについて話してくれていた。
実際、浩紀もそこまで水泳は嫌いじゃない。
けど、昔のことを思い出すと、どうしても勇気を出せないのである。
水泳をやめてから、あともう少しで三年が経つ。
巨乳な先輩と一緒に遊んだり、同じ時間を共有できるのは嬉しい。
ただ、水泳の話はあまりしたくないのだ。
水泳という単語から距離を置いてしまうと、先輩からも距離を置かれそうで、水泳の話はしたくないと直接的には言えずにいた。
多分だが、先輩の場合、本当のことを言っても笑って許してくれそうな気はする。
でも、なんか、嫌だったのだ。
浩紀は隣街で先輩と一緒に購入したお菓子をリュックから取り出し、駅から離れ、食べながら道を歩き出す。
今は家に帰ってはいられない。
午後からは夢の家に行き、料理の味見をしなければならないからだ。
味見というべきか……そもそも、料理と呼べるものか怪しいところがある。
あれは、完全にダークマター……暗黒物質だと思う。
「……」
お菓子を口にし、一旦、味覚を確かめておいた方がいいだろう。
「……うん、クッキーは普通においしい。多分、俺の味覚は平常なんだ」
味覚がおかしくなったら最後。
自分の味覚だけは、ダークマターを口にした後も平常でいたい。
そう強く思っていた。
「ん?」
誰かの視線を感じる。
背後から見られているような気がして、不安になった。
ま、まさか、夢なのか?
もし、夢だったらと思うと、心が締め付けられるように痛む。
浩紀は一度深呼吸をし、胸を撫でおろすと、怖いもの見たさに、ゆっくりと振り返る。
「……よッ、浩紀」
「……って、真司かよ」
ホッとした。
夢ではなかったのだ。
デパートの試着室での出来事もある。
夢の想いを知ってしまったことで、なんの前触れもなく出会うと何を話せばいいのかわからなくなるのだ。
ファミレスで彼女が付き合いたいと口にした発言。あれは好きという意味合いだったのかもしれないと、今になって思う。
「どうしたんだよ、無言になってさ」
真司は浩紀の隣にやってくる。
「え……あ、ごめん、ちょっと考え事を……」
「考え事って、そんなに考えることあんのかよ。羨ましい限りだぜ。まったくさ。夢と、その上、妹とも付き合ってんだろ?」
「あ、あれは違うよ……」
でも、ふと、夢の言葉が脳裏をよぎる。
ハッキリとは断言できなかったのだ。
「まあ、それは冗談として、どうせ、嘘に決まってるだろ?」
「え?」
「本当だったとしても、嘘ってことにしておくよ。あとさ、この前さ、学校での出来事はすまなかったな。俺もあいつらの影響で話を合わせないといけなくてさ」
二人は会話しながら道を歩き。真司は申し訳ない表情を浮かべていた。
あいつらというのは、浩紀に対し、突っかかってくるアンチみたいな連中である。
アンチらは、学校内の美少女を独占したいがために、美少女から好かれている男子生徒へ、威圧をかけているのだ。多分、アンチらは学校の美少女らから相手をされないがために、その不満の捌け口にしているのだろう。
まったく困ったものだ。
「というかさ、お前って。さっきまで、どこに行ってたんだ? 駅の方面から歩いていたけどさ」
「え?」
「え? じゃなくてさ、どこか行ってたのか? 隣街とかさ」
「ま、まあ、そうかな」
「そっか。お前一人で?」
「え、まあ、そうかな?」
「そうかなって、なんで疑問形なんだよ。まあいいや、それにしても、一人でか、珍しいな」
真司からしたら、浩紀の休日なんて平凡で地味だと思っているのかもしれない。
本当は夏芽先輩と一緒に、隣街のデパートで、先輩が身に着ける水着を選んでいた。
先輩は学校一の美少女なのだ。
誰もが一度は付き合ってみたいと思うほどの存在。
真司だとしても言えなかった。
申し訳なさを感じてしまうからだ。
「まあ、それとな。今からなんかやることあるか?」
「今から?」
「ああ。この頃、お前に迷惑をかけてばかりだったし、ちょっとどっかで奢ってやるよ。この周辺に、食事処があるだろ? 昔ながらの食堂みたいな店」
「あ、あー、あるね」
「じゃ、行こうぜ。時間帯的に、昼時だしさ」
真司は食事に行く気満々である。
誘ってもらえるのは嬉しいが、少々用事があるのだ。
「ごめん。ちょっと今はさ」
「え? なんか、またどこかに行くのか?」
「うん……」
「どうした? そんなに真剣な顔してさ」
真司は、浩紀の横顔を見、何かを察したようだ。
「真司も来るか?」
「え? 逆に誘ってくれるなら俺も行くけど? どこに行くんだ?」
「ダークなところさ」
「は? どういうこと?」
「なんというか、戦場みたいなところだよ」
「……なんか、ヤバそうなところなのか?」
「多分ね」
浩紀は遠くの方を見据え、落ち着いた表情で言い切ったのだ。
もう戻れないかもしれないという黄昏れた思いを抱きながら――
「それでも、真司は来るかい?」
「い、いいや。俺はまだ彼女とかもできてないし。戦場みたいなところにはちょっとな」
真司は引き気味だった。
「じゃ、じゃあ、またな。生きて帰って来いよ。どんなところかは知らんけどさ。戻ってこれたら、来週にでもどっかの店屋に行こうぜ。俺が奢ってやるからさ」
「うん、ありがと」
浩紀は頷き、軽く笑みを見せた。
「……来週な、検討を祈るよ」
隣を一緒に歩いていた真司は、背を向け、さっき来た道をなぞるように、さっさと立ち去って行ったのだ。
「……じゃあ、行こうか」
浩紀は友人のいなくなったことを確認すると、再び歩き始める。ダークマターを錬成する夢の自宅へと向かって。
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