第6話 お兄さん…私の下着姿、どうですか?
「お兄さん?」
誰かの声が聞こえる。
先ほどまで寝ていたことで、その疑問が強くなっていく。
真相を知るため、自室のベッドで横になっていた浩紀は、ゆっくりと重い瞼を開いた。
そして、ぼやける視界。
次第にハッキリとわかるようになってくる。
浩紀が見ている光景は、自室の天井。
「お兄さんッ、ようやく起きたんですね。もう朝の七時ですから」
「……七時? 朝の……」
意識が鮮明になる中、浩紀は上体を起こし、声をかけてくる子へと視線を向けた。
声質的に、多分、妹の友奈だと思う。
「お兄さん? 起きたんですね。一緒に朝食でも食べましょう。私、一生懸命作ったので、食べてほしいんです!」
「え……うん」
浩紀は頷きつつ、眠い瞼を片手でこすり、そこにいる子をまじまじと見やった。
「……⁉」
同じベッドに正座している子は確かに、見間違うほどなく、ポニーテイルの髪型が特徴的な実の妹――友奈である。
だが、その姿にドキッとしてしまう。
血の繋がった妹に対してだ。
友奈は、紫色の妖艶なブラジャーとショーツだけを身に纏った下着スタイル。
大人びた下着と、貧乳はそこまで相性がよくない。
ぺったんこな胸が、悪い方向性に強調されている感じだ。
「ど、どうした⁉ そ、その姿⁉」
浩紀は今まで見たことのない妹の破廉恥な姿に困惑し、目を丸くしてしまう。
友奈は礼儀正しく、しっかりとした妹。兄である浩紀の前ですら、下着姿を晒したことがないほどに真面目な女の子。
「私、お兄さんの為に貢献したかったんです」
「貢献?」
「はい。私、お兄さんに好きになってほしくて……私の下着姿どうですか?」
「どうって……」
なんて、答えればいいんだ?
浩紀は一応、友奈の下着姿をあっさりと見渡す。
実の妹に対して、今までエロい目を向けたことはなかった。
そもそも、おっぱいは巨乳派なのだ。
大きい方を好む傾向があるゆえ、浩紀は妹の胸の膨らみを気にしたことはなかった。
昨日、ハンバーガーショップで抱きつかれた際に、初めて意識した程度。
再び、向き合うように友奈の顔を見た。
「どうです? ……やっぱり、お兄さんは大きい方が好きなんですか?」
友奈は悲し気に、両手で自身の小さいおっぱいを触っていた。
「いや……そうでもないけど……」
浩紀は咄嗟に嘘をついてしまった。
妹のウルウルした瞳を見てしまうと、大きい方がいいとは、堂々と口にはできなかったのだ。
「本当ですか、お兄さん! 小さくても、お兄さんを満足させることはできますか?」
「ど、どういう風な意味で……?」
「私、その……お兄さんが望むなら、おっぱいで色々と……♡」
友奈は恥ずかしいようで、頬を赤らめ、具体的に何をするかまでは言ってくれなかった。
「で、でも……そんなに無理するなよ」
「うん……。私ね、恥ずかしいんだよ」
「だったら、そんな恰好するなよ」
浩紀は妹から視線をそらし、気まずげな心境で正座した。
「でも、私……頑張るから」
いや、変なところで頑張らなくてもいいよ、と内心思う。
「お兄さんッ、私の、その……お、おっぱいを触ってみたいですか!」
全身全霊で、内に秘めていた想いを伝えてくる友奈。
「お兄さんが小さくても良いって言ってくれたので。私、少し自信がついたので……嬉しくて、その……触ってほしいんです!」
友奈からおっぱいを触るように、逆に懇願されてしまう始末。
これは一体、どういう……ことだ?
実妹のおっぱいを触る?
本当にいいのか?
浩紀は困惑し、目をキョロキョロさせてしまう。
今、視界の先で生じていることが現実だと思えず、脳内が混乱していた。
「お、お願いします、お兄さん。私、お兄さんに本気で好きになってほしくて」
友奈から土下座までされた。
「ど、どうして?」
「そ、それは……んんッ、い、言えない……です」
「言えないことなのか?」
「は、はい……恥ずかしいので」
友奈は頬を真っ赤に染め、俯きがちになり、黙り込んでしまう。
それにしても、なぜ妹が兄である浩紀のことを好きになったのだろうか?
でも、おっぱいを合法的に触れるならば、と思い、一応、妹の胸に右手を向けた。
「んんッ⁉ ほ、本当に触るつもりですか⁉」
「え。ちょっと、どういうこと? 俺、騙されたの?」
「ち、違います。その……触ってほしいですけど。やっぱり、恥ずかしいので、む、無理ですからッ」
友奈はベッドから降り、浩紀の部屋の扉を開けて立ち去って行ったのだ。
階段を下る足音が聞こえたので、多分、リビングとかに向かったのだろう。
「それにしても、朝っぱらから、ぶっ飛んでんなあ……」
浩紀はため息を吐き、頭を指で搔いた後、ベッドから立ち上がり、背伸びをする。
「んん……はああ……」
先ほどの友奈の下着姿が強烈すぎて、今日は眠いとか、怠いとか感じなかった。
「……友奈はあんな感じの子だったか……」
ふと、浩紀は心で思ったことをポロっと漏らす。
「朝食ができているなら、一応行こうかな……でも、気まずいな」
どんな顔で、友奈と関わればいいのかわからなかった。
今ここでモヤモヤと考え込んでいてもしょうがない。
一先ず、リビングに行こうと思う。
部屋を出、階段を降り、一階の扉を開いて、リビングに入る。
パッと見、そこには誰もいなかった。
が、よくよく耳を澄ましてみると、妹の声が聞こえたのだ。
それはソファの方からである。
「……友奈?」
「ひゃあ、んッ」
妹の可愛らしい声。
ソファで身を潜めるように横になっていた彼女は飛び跳ねるように態勢を変える。
「な、なんでしょうか、お兄さん……」
ソファの上で正座する友奈は未だに下着姿。
彼女は浩紀には目線を向けずに、俯きがちに話を進める。
「俺さ……正直驚いたよ」
浩紀は妹と向き合うように話す。
「え……?」
「なんていうかさ。俺、友奈から嫌われてると思っててさ」
「……なんでそう思ったんですか?」
「友奈とは距離を感じていたからさ。話しかけても、あっさりとした返答しかされなかったし。もしかして、俺、嫌われているかと」
「お、お兄さんは、鈍感ですね」
「え?」
「だから、鈍感だって言ったんです」
下着姿で正座している妹から上目遣いで言われる。
――⁉
浩紀は不覚にもドキッとしてしまう。
血の繋がった妹の表情はなぜか、エッチに感じる。
不思議な感覚。
浩紀はおっぱいの大きい女の子の方が好き。
だったはず――
友奈の魅力を今感じ、心が靡きそうになっていた。
そ、そんなはずは……。
巨乳を上回る何かが、友奈にはあるのだろうか?
ハッキリとはわからない。
けど、浩紀は血の繋がった妹に恋愛感情のような想いを抱きつつあった。
「お兄さん? そろそろ、朝食にしましょうか」
友奈の問いかけに、浩紀はハッと現実に戻されるのだ。
「あ、ああ。そ、そうだな」
「私ね……お味噌汁を作ったの。ワカメのお味噌汁なんだけど。結構自信あるの。朝はしっかりとお味噌汁を飲まないとね♡」
友奈は恥ずかしそうに軽く笑みを見せ、ソファから立ち上がる。キッチンの方へ、朝の食事の準備をしに行くのだった。
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