第4話 嘘なんてついても、ぜーんぶ、バレてるんだからッ
「それでは、今から大切なことを話しますからッ」
「お兄さんにとっても重要なことで、ちゃんと話に参加してくださいね」
ハンバーガー店。
先ほど入店した際に、注文を済ませ。
今、浩紀は二人の女の子と一緒に、ソファに座っていた。
一般的なハンバーガー店とは少し違い、ちょっとばかし各の高いお店。
ゆえに、椅子とかではなく、ソファが設置されているのだ。
そこはテーブルを挟むように、ソファが存在し、三人ずつ座れる仕様。
だがしかし、夢と友奈は、浩紀の対面上に座るわけではなく、両隣にいた。
「いいですか? ひろ、今回の件なんですけど、どうして、先輩と付き合うことになったんですか?」
「お兄さん、嘘はよくないからね」
二人の女の子から、ほぼ同時に話しかけられる。
「それよりさ……なんで、俺の隣に?」
その疑問を彼女らに問う。
「なんでって。それは、しっかりと話をするためです」
「そうです。それに、隣に座ってはいけない理由もないですよ? お兄さん、私たちの質問には真剣に答えてくださいね」
両隣から、強引な話し方をされる。
左には今日の朝まで、希薄な態度ばかり見せていた妹の姿はない。
右側にいる夢も同じであり、女友達程度の関係で、恋愛に発展することのなかった彼女も積極的な態度を見せていた。
「お兄さんは、どこで先輩と出会ったんですか?」
「いや……今日、学校で」
「学校? 本当ですか? 出会ってすぐに付き合うってなるんですか? 怪しいですね」
「怪しいって。俺もわからないよ」
先輩とは、単なるマネージャーとして付き合うことになった。一応、それは表向きの情報であり、本当は付き合っているのだが……。
そもそも、なぜ先輩と付き合っていることがバレているのだろうか?
夢は誰かから聞いたのだろうか?
わからな過ぎて怖い。
「お兄さん? 本当に嘘はついてないですよね?」
「あ、ああ……」
妹の友奈に頷いた。
ところどころ嘘をついている感じになっており、少々心苦しい。
「ひろ? 先輩のおっぱいとか見たんですか?」
「え、いや、み、見てないけど……どうして?」
「なんとなく聞きたくなっただけ」
と、夢は言い、おっぱいを右腕に押し当ててくる。
どう考えても、その膨らみ的に、普通サイズの大きさではないような気がしてきた。
「お兄さん? 鼻の下伸びてますよ」
「の、伸びてないから」
「そんな顔をするなら、私も」
「え?」
友奈からも左側の腕に抱きつかれる。
だが、そこまで大きくはない。
服の上から見た通りの、ほんのりとした貧乳サイズ。腕には、そこまで膨らみ具合は伝わってこなかった。
「……」
反応に困るサイズであり、浩紀はなんて話せばいいのか迷う。
「なんですか? 私の胸にはあまり魅力がないんですか?」
「いや、そういうことよりさ。先輩の話に戻らないか?」
「お兄さん……そう言って、話をそらす」
妹からジト目で見られる。
「そう言うなって……」
浩紀は色々と気まずかった。
強引にでも話題を変えたい。
だがしかし、話題を戻したところで、先輩のことについて話さないといけないため、どっちにしろ窮地に追い込まれるのは確実だ。
「ひろ? それで、先輩とは、今後どうするの? そのまま付き合うのかな?」
「えっとさ、夢? 先輩とはさ、恋人関係じゃないし……昼頃の件は、単なる噂だってことで片がついたはずだけど?」
「噂? 本当の事でしょ?」
「……」
どこか怪しい。
浩紀は夢のおっぱいを感じながら、彼女の様子を伺う。
「私ね、ちょっと聞いてたの」
「な、何を?」
「ひろと先輩が部室にいる時ね、廊下で聞いてたんだからね」
「え?」
浩紀はゾッとした。
まさか、聞かれていたとは思わず硬直してしまう。
そして、今思った。
学校の校門を出た辺りで、夢が丁度良く話しかけてきたのは、本日の授業終わりから尾行されていたのだと。
そう考ええると、内面から湧き上がる恐怖心に苛まれてしまう。
「そっか、すでに……」
「ごめんね、でも……昼頃の噂。ただの噂だとは思えなかったの。だから、放課後、ひろが教室を後にした直後から、こっそり追ってたの。ごめんね」
夢は可愛らしくウィンクして見せ、誤魔化そうとするが、浩紀からしたら頭を抱え悩む事態である。
「お兄さん? さっきの発言、嘘なんですね? やっぱり、先輩と付き合ってたんですね?」
「はい……すいませんでした」
「もうー……」
浩紀の左側の腕を抱きしめる妹は、ボソッと呟く。
「お兄さん? バツとして、私とも付き合ってください」
「え?」
左腕をギュッと抱きしめる友奈は、ありえない発言をする。
妹との友奈とは、血の繋がった妹。
付き合うのは考えられなかった。
「友奈ちゃんが言うなら……私も」
「え?」
「ちょっと、どうした?」
急に実妹と女友達から告白まがいのことをされてしまう。
どうしたらいいのかと困惑していると、ようやく注文したハンバーガーがテーブルへと届けられる。
店の人にまで、二人の女の子とイチャイチャしているところを見られるのは気まずい。
咄嗟に離れようとするが、そう簡単なものではなかった。
二人とも強く抱きつきすぎだって……。
そうこうしている間に、テーブル上にハンバーガーを置いたスタッフと視線が合う。
「……」
「……ん?」
スタッフの人は疑問口調になり。その声質、どこかで聞いたことがある。と、浩紀は感じ、スタッフの顔を見た。
「――って、なんで真司がここに⁉」
そのスタッフは、お店指定の制服を着た友人だった。
「いや、お前こそ。というか、おま、なんで、二人といちゃついてんだよッ、俺への当てつけか?」
「ち、違う。そうじゃないって」
「真面目なフリして。本当は色々とやってるんだろ?」
「そうじゃないんだ。これには色々な裏事情があって……というか、真司は何で、ここで働いてるんだよ」
「それはな……話せば長くなるが、短くもなる」
「いや、どっちだよ」
「まあ、今日はな、俺は女の子と街中で会う約束をしてたんだ」
「うん」
「それで、出会うっていうのは、デート的な意味合いじゃなくてな。その女の子の代役として、今日一日ハンバーガーショップで働いてくれって事だったんだ。俺はてっきり、デートだと思って。ようやく、ようやく付き合えると思ったのに……」
「なんか、大変だな。真司も」
「というか、お前の方が羨ましいからな。店の中で、見せつけるように付き合いやがって」
「だから、これは――」
浩紀が言おうとした直後、右隣にいた夢が――
「私、ひろと付き合うことになったの」
「え?」
夢の発言に、真司が驚き、後ずさる。
真司は、一応、夢の幼馴染でもあり、衝撃が強かったのだろう。
「私も、お兄さんと、その、付き合うことになったので」
妹まで、問題発言を口にする。
「くそー。なんで、お前が……。いつもナンパをしている俺よりも、なんで早くに彼女ができるんだよ」
真司は悔しそうに背を向け、店の奥まで立ち去っていくのだった。
「……」
何も弁解できず、ただただ、浩紀は絶望を感じていた。
これからどうなってしまうんだ……?
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