第3話 先輩のマネージャーになった日。浩紀は新しいおっぱいの膨らみを感じる

「これって……現実での出来事なのか……?」


 授業終わりの放課後。廊下に出た浩紀は、水泳部の扉を閉め、未だに信じられないことがあった。


 それは、学校で一番の美少女と、付き合うことになったことである。

 それが現実だと感じられず、浩紀は手を震わせ、動揺していたのだ。

 嬉しいけど、同時に、同性からのアンチが増えてしまうことにも恐怖心を感じていた。


「でも、あの状況的に、付き合うってしか言えないしな……」


 浩紀は首を傾げる。

 ようやく念願の大きなおっぱいを見れたことに喜びを抱きつつも、一つの不安があった。

 それは、水泳部の夏芽雫先輩の専属マネージャーになることである。


 元々、水泳はあまり好きじゃない。

 好きだったけど、今はそこまで関わりたくないのだ。


 少なくとも、先輩のおっぱいをスク水から谷間を見てしまったことで、彼女からの誘いを断るわけにはいかなくなった。

 変に断ると、変態だという噂が、学校全体に広がってしまうからだ。


 あくまで浩紀は真面目な性格を維持し、平凡な高校生活を過ごして、知り合いのいないところで、おっぱいの大きな子と付き合う。

 それが理想だ。


 水泳部の夏芽雫先輩と付き合うことになったことで、一応、今まで抱いていた願望は少しだけ叶った感じ。

 ただ、全校生徒の男子から人気のある美少女であり、先輩と付き合っていることを常に隠しながら生活していかなければいけない。

 先輩との話し合いで、表向きはマネージャーということで落ち着いたのである。


 誰にも付き合っていることがバレなければ、実際のところ変態だとか、そういった情報は洩れないはず。

 ただ、先輩はどこか怪しいところがある。

 危ない人だとか、そういうわけじゃない。


 どちらかというと、口が軽いのだ。

 今日の昼休みの噂だって、先輩が流したものだと先ほど部室内で聞いた。


 今のところ、先輩と付き合っていることは誤魔化しきれている。だがもしも、何かの手違いでバレたらと考えると、ゾッとしてしまう。

 今後のことを思い、浩紀は学校では真面目に過ごすと決意をため、水泳部前の廊下を歩き出すのだった。






 浩紀は今、水泳部の部室を後に、校舎一階の廊下を歩いていた。

 先輩は他にやることがあるらしく、専属のマネージャーとして活動するのは明日からになったのだ。

 一応、今はフリーである。


 今日は友人から奢ってもらう約束をしていたが、とある女の子と出会うことになったと言われ、さっさと学校を後にしていった。

 結果的にいつも通りに一人か、と思い、昇降口で外履きに履き替え、校門へと向かって歩き出す。


「……」


 一人で岐路につくのは、普段からの事。

 そんなに悲しいとかはなかった。


 むしろ、今こそ、冷静にエッチなエロ画像を見ながら帰宅できるというもの。

 通学路を歩いている浩紀は、制服から取り出したスマホを手に、画面上をタップする。


 だがしかし、運が悪いことに、誰かの足音が聞こえた。

 嫌な予感がしてならない。

 チラッと背後を振り返る。


「ひろ、今から帰り?」


 そこには制服姿の女友達――夢が愛らしい笑みを浮かべ、上目遣いで見つめてきていた。


「……う、うん」


 浩紀は小さく頷いた。


「ねえ、一緒に帰らない?」


 夢は隣に立つなり、浩紀の右腕に抱き着いてくる。

 え? な、なに?


 急なフレンドリーな言動に、ドキッとする。

 普段なら友達のような関係で、ここまで密着したやり取りなんて、全くなかった。

 どうしたんだろうかと思い、距離をとりたくなったのだ。


「ねえ、ひろ? どうして私から離れようとするの?」

「夢? ここは通学路だぞ?」

「それが?」

「いや、なんというか、人の目が気になるというか」

「じゃあ、見せつけてあげよっか」


 夢はいつにもなく積極的である。

 本当にどうしたと思う。


「俺が困るんだよ……あのさ、夢って他の人からも告白されたりするだろ?」

「そうだよ」

「……密着してたら、俺が他の人から圧力をかけられるんだよ……夢も今日の昼休みの事、知ってるだろうけど。先輩と付き合ってるって噂だけでさ。クラスメイトの連中から、恨まれるんだよ。だから、普通に会話してくれないか?」

「いや」

「なんで?」

「私、こうしていたいから」


 夢は温厚で優しい感じではあるが、ここまで積極的な彼女は見たことがなかった。


 夢はおっぱいの膨らみを、右腕に強く押し付けてくる。

 それにしても、彼女の二つのおっぱいは大きい。

 初めて腕に抱き着かれ、その大きさを実感できたところだ。


 もしかして……デカい方なのか?

 隠れ巨乳とか、そんな類なのだろうか?

 中学時代から一緒のクラスだったが、そこまで夢の胸事情は知らない。


「ひろ? 今からどこかに行く?」

「どこに?」

「どこでもいいよ」

「急にどうした?」

「別にいいじゃん。少しね、遊びたくなったの♡」

「そうか……」


 今までなら、積極的に遊びに誘おうとしても、クラスメイトらに妨害され、彼女とは一緒に遊ぶことなんてできなかった。


 逆に考えれば、ようやく、夢と遊べるようになった感じだ。

 でも、どこから他人に見られているかわからない環境下で街中に行くのは怖い。


「ひろー、行ってみたいところがあるの」


 彼女は甘えた口調で、さらに腕を抱きしめる。そして、おっぱいの感触がじかに伝わってくるのだった。


「え、えっとさ。ずっとここにいるのも色々と問題があるし、一先ず街中に行こうか」

「うん♡」


 夢は承諾するように頷き、浩紀は彼女から抱きつかれたまま、歩くことになった。


 気まずいし、歩きづらい。

 もし、誰かに見られたら……。

 見えない恐怖心に煽られていた。


「ねえ、どうしたの、ひろ?」

「いや、なんというか、色々とな……」


 恥ずかしくなり、答えられなくなる。

 やっぱり、夢のおっぱいって、なんかデカいな……。


「行きたいところって、どこ?」

「それはね。普通に、ハンバーガーでもいいんじゃないかな? ひろも好きでしょ?」

「まあ、うん。そうだな」


 ハンバーガーか……。

 なんか、久しぶりだな、そういうのを食べるのは。


 浩紀はハンバーガーのことを考えていると、新しい誰かの気配を感じる。


 二人が今いる、街中へと通じる道。そこの電柱のところに見覚えのある女の子が隠れていることが分かった。

 その子は隠れるのをやめ、堂々と二人が行く先を阻むように立ち塞がるのだ。


「ねえ、二人はどこに行くの?」


 その立ち塞がる彼女は、実妹の友奈。

 不満げな顔を浮かべ、浩紀の腕におっぱいを押し当てている夢を睨んでいた。


「やはり、そうですか」

「何がですか? 友奈ちゃん?」


 今まさに、二人の謎の争いが始まるのだ。


「私のお兄さんに変態なことをしてほしくないのですが?」

「私は普通に関わっているだけですよ?」

「そうは見えないんですが? 夢さんはどうしたんです? なんか普段と違ってますよね? いつもなら、そこまで積極的ではなかった気がしますが?」


 友奈は現状を受け入れつつ、冷静に年上の夢と対等に渡り合っていた。


「私は元からこんな感じよ?」

「そうですか? もしや、何かあったんですか?」

「ええ。ひろがね。今日、水泳部の先輩と付き合うことになったらしいの」

「え⁉ そ、そうなんですか? お兄さん?」


 友奈は驚き、その表情は青ざめていた。


「友奈? そうじゃないんだ」


 慌てた感じに、誤解を解こうとするが、もう遅い。


「……そういうことですか。わかりました。今は協力します。夢姉さん、詳しい話を別のところでしませんか? お兄さんも含めて」

「友奈ちゃんがそういうなら。いいですよね、ひろ?」

「う、うん」


 今は二人の女の子に力強い視線を向けられ、しぶしぶと頷くことしかできなかった。

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