第3話「帰投」
Side アンドウ ミソノ
キノモト セイを基地に連れて帰ると言う事になり、一先ずミソノは安心しましたが、セイと言う人は「やる事がある」と言うと手慣れた手つきで酷い状態になった人間の死体を片付けていきます。
カレンさんもリオさんも気持ち悪そうにしているのにキノモトさんだけは平然としていました。
そして武器を回収していきます。
「何をしているんですか?」
私は死体から目を反らしながら恐る恐る尋ねました。
「身についたクセですね。戦いが終わった後にこうして使えそうな物を物色するんです。今回は逃しましたが――また敵襲がこないとも限りませんし・・・・・・それを思うと生かして返したのはまずかったですかね」
彼は平然と返しました。
「トラックは使えますか? このパワーローダーは修理すれば使えると思います」
そう言って敵が身に纏っていた機械鎧を解放し、死体を直視しながらもリオに尋ねます。
「でもそれ人が入ってた奴――」
リオは不満を隠さずにそう言いますがセイは「それが何ですか?」と返し、「え、で、でも・・・・・・」とリオは返答に困ります。
ミソノもカレンも困惑しました。
敵の機械鎧の中身は死体が入っていたのを正直また身に纏いたいとは思いませんでした。
他の人もそう言うでしょう。
「まあ最悪自分で使いますから――中身の洗浄は出来る場所でやりましょう」
と、持ち帰る気満々だった。
☆
戦士の墓から町までは緩い下り坂が続く。
道中は緑やひび割れて草木が生い茂る硬い地面に廃車などが転がり、木々が視界や太陽光を遮っている。
トラックの運転席にリオ、そして助手席にミソノが乗り、前方を機械鎧オオタチ二型を身に纏ったカレンが、そして月光と言う名前の赤い機械鎧を身に纏ったキノモト セイが一緒に並んで歩いている。
トラックは二人のスピードに合わせてゆっくりめだがこれは敵の襲撃を警戒してのことらしい――とカレンが言っていた。
「助けられたのは良かったけど変わってるわよね。一体何者なのかしら?」
未だに死体処理や死体漁りのショッキングな光景が頭に離れないのか疑いの目でセイの後ろ姿を見詰めるリオ。
「でもでも凄かったよね。あの戦い振り」
ミソノはと言うと熱心にセイの事を語っていた。
「それは認めるわ――私も機械鎧が欲しいわね」
「私も可愛いのがいいな~」
「アンタには無理よ」
「えー」
リオの言い分にミソノは口を膨らませます。
☆
Side ニイジマ カレン
ニイジマ カレンにとって側を歩く機装兵の少年、キノモト セイは未知の存在だった。
見たこともない機種。
年齢不相応の戦い振りに修羅場に慣れきった立ち振る舞い。
先程から周囲に目を回しながら『思った程、道は荒れ果ててないですね』と呟いたりしていた。
『そんなに外の世界が不思議なのか?』
と、尋ねてみた。
噂に聞くシェルターの人間かと思ったからだ。
『自分の事をどう思っているのか分かりませんが、僕は世界が滅んだ日からずっと冷凍保存されて目覚めたばっかりです』
『冷凍保存? いや、それよりも世界が滅んだ日ってどう言うことだ?』
上司であるアンリも機械鎧の通信機越しに話を聞いているであろう事を計算に入れて尋ねた。
『そのままの意味です。随分と様変わりしてましたが・・・・・・僕達はあの戦士の墓で世界が滅ぶ光景を目の当たりにしました。僕は体を冷凍保存させて、少なくとも百年以上は・・・・・・仲間達は世界が滅んですぐシェルターから出たワケではないと思いますが核兵器による放射能汚染の影響がある程度収まった段階で外に出たと思います』
『信じられない・・・・・・』
話の内容は理解できない部分が多かった。
信じられないところもあったが。
不思議と説得力のような物を感じた。
カレンはさらに情報を引き出すために『どうして世界は滅びたんだ?』と尋ねた。
『もしかして核兵器の事を知らないのですか?』
『歴史の授業で聞いた事がある程度だな・・・・・・』
『そうですか……』
何故だかとても悲しそうな声色だった。
カレンは何と声を掛ければ良いのやら分からなかった。
少し間を置いて、空を見上げてセイはこう言った。
『だけど人はいた。こうして出会いがあった。だから絶望しなくてもすみます』
と言った。
すこし涙声なのはどうしてかは分からなかったが、深くて想像もできない悲しみが感じとれた。
とても早い段階ではあるが、もうカレンはセイのことを信用し始めていた。
しかしそれを打ち明けるのも恥ずかしいので『そうか』とだけ返した。
『ほら見えてきたぞ。アレが私達の住んでる町だ』
話題を変えるようにカレンが言う。
緑豊かで川が流れる田舎町。
とても核兵器が撃ち込まれた後には見えない景色が広がっていた。
『名前は――なんて言うんですか?』
『昔ははじまりの町なんて言われたけど今じゃただの田舎町さ。名前は――サクラギ』
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