第2話「出会い」

 東西陣営に別れた最終戦争の頃。 


 戦場に戦闘用パワードスーツ、パーワーローダーが登場した。


 後に作業用、後方に回されていった第一世代機。


 より戦闘前提として開発された第二世代機。


 そしてパワーローダーと言う兵器が完成した第三世代機。


 第二世代から第三世代機は多くの戦場の英雄を生み出した。


 その中には木之元 セイも名を連ねていた。


 赤い閃光と言う二つ名と一緒に



 Side ニイジマ・カレン 


 彼女が自分の部下を助けに来たのは偶然ではない。

 

 町の住民や自警団からの野盗の目撃報告が上がり、そして急いで機械鎧で出撃したと言うのが実態だった。


 平和ボケしていたのもあるがこんな事になるのならリオの言葉を安請け合いせずについていけばよかった。


 田舎町で車は貴重品と言う程でもないが車両は少ない。


 町の住民から借りる事も考えたがそんな暇すら惜しく、走るよりも早い機械鎧で武装して戦士の墓まで背中の飛翔筒を使って辿り着いた。


 何度も往復した事がある道なので自己ベストを更新するスピードで辿り着けた。


 隊長のアンリは町に残った。自警団がいるとはいえ、敵の規模を考えれ機械鎧を動かせる人間が念のため町に残って警備した方が良いだろう。


 そして辿り着いてみれば最悪の予想が的中し戦闘に突入した。


 どうにかリオとミソノの脱出の時間稼ぎをしたいが敵の攻撃が激しくてそれどころではなかった。


 これまでかと思った。 


 そんな時だった。


 開かずの扉が開かれ、赤い機械鎧が現れたのは。


 

 Side アンドウ ミソノ


「凄い・・・・・・」


 隣にいるリオがそう呟く。

 ミソノも同じ気持ちだった。


 突如として現れた謎の赤い機械鎧。

 丸みを帯びていてホッソリとしている。

 背中に大きな銃と大剣。

 手には自分達が使うぐらいのサイズの突撃銃と左腕を覆うぐらいのサイズの盾を持っていた。


 相手の野盗が銃を発砲した瞬間、その場から一気に生身の兵士に近寄ってシールドで殴り倒した。

 相手もただ無抵抗のまま倒されたワケではなくて銃弾を乱射していた。

 その銃弾を全て躱しながら――とにかくとんでもない早さで接近して倒してみせた。


 そのまま右手に持った銃を発砲。

 銃声が起きるたびに倒されていく。

 距離などほぼ関係なく、目についた奴を撃ち込んでいるように見えた。

 

 驚異的なのはちゃんと銃声を発射する事に必ず相手を仕留めている事だ。


 ミソノもへっぽこながら軍人であるため、銃を撃ったことは当然ある。

 だからこれがどれだけ凄い事が理解できた。

 

 あっと言う間に野盗の半数が死んで、さらに背中の飛翔筒と言うらしい部位から炎を吐き出し、敵の機械鎧に接近する。


『何なんだお前は!?』


『調子に乗りやがって!!』


 敵の機械鎧も二人がかりで挑もうと接近しながら銃を乱射する。

 そこから赤い機械鎧は敵の機械鎧の左側に回り込む。


『弱点は変わってないようだね』


 少年の声だった。

 ミソノはその事に驚く前に機械鎧の一体が倒された――らしい。遠くてよく分からないが敵の機械鎧がその場に崩れ落ちた。

 二体目の機械鎧も相手の左側面に回り込んで銃を発砲して撃ち倒す。


「そうか。あの機械鎧は側面が弱点なんだ」


 どうやらリオは気づいたようだ。


「そうなの?」


「機械鎧も無敵じゃない。種類によって特徴は様々なの。当然弱点もあるわけ。装甲が厚いけど動きが遅いみたいな――そう言う感じなのが。あの赤いのは相手の鎧の弱点を的確に突いてるの」


「それが側面なの?」


「私は上手く解説できないけど――」


 そうこうしているウチに戦闘車両の戦いになった。

 だがこれは一瞬で勝負がついた。

 上空からの奇襲で相手の車両の上に乗り込み、銃座にいた大柄な、まるで髭を生やしたクマのような容姿のリーダー格の男に銃を向ける。

 

「わ、分かった!! こここ、降参する!! 命だけは助けてくれ!!」


 男は相手が銃の引き金を引く前に降参する。


『分かった』


「い、いいのか?」


『状況も分からないまま無闇やたらに殺したくない』


 そして銃を降ろし、火炎筒を吹かして跳躍して離れたところに着地する。

 慌てて野盗達はその場から立ち去った。


 入れ替わりにミソノが立ち寄る。

 リオは止めようと手を突き出すが間に合わなかった。


「あの――アナタは?」


『僕は――木之元 セイ。ずっとこの場所で眠っていました。君は?』


「わ、私はアンドウ ミソノです!」


 慌ててミソノは自己紹介した。


『ミソノ!』 

 

 しかし機械鎧、オオタチ二型を身に纏ったカレン三尉は銃を向ける。

 銃口は赤い機械鎧に向けられていた。


『助けてもらったのには感謝するけど、何者なのか分からない以上基地に同行してもらう』 


「ニイジマ三尉!」


 両腕を広げて盾になるようにミソノは赤い機械鎧に立ち塞がる。

 

「馬鹿! ミソノ何やってるのよ!? そこをどきなさい!」


 リオはどくように言うが。


「どかない! だってこの人私達を助けてくれたんだよ!」


『けど・・・・・・』


 ミソノの言う事も理解出来るが正体不明で目的が分からない人物だ。

 だが同時にアレだけの戦闘力――少しばかりの時間だったが万が一戦闘に突入したら勝てるだろうかとカレンは思う。

 

 仮に勝てたとしても間違いなくミソノとリオは死ぬし自分もただではすまない。


「あんた、あいつらに話し合い持ちかけて死にそうになったのもう忘れたの!? 世の中なんでもかんでも話し合いで解決できないのよ!」


 そこでリオは戦闘に突入する前の事を話す。

 前々からカレンも思っていたが、どうやらミソノは本当に軍人向きではない思考の持ち主らしい。


 リオの意見も分かっているのか「でも――」とミソノはシュンとなって泣きそうな顔になっていた。


『・・・・・・どうすれば信用してくれますか?』


 と、赤い機械鎧がそう問いかけてきた。

 カレンは銃を向けながら困惑しつつ「その機械鎧を解除しろ」と言った。


『分かった』


 即答すると機械鎧の背中が開き、そこから現れたのは黒髪の少年だった。

 黒く肌に吸い付いているような体のラインが浮き彫りになっている衣服を身に纏い、胴体にはベスト。腰には拳銃やポーチが見えた。

 

「ここから先はどうすればいいですか?」


『え、えーと。それはだな・・・・・・』


 両手を上げるポーズを取って質問され、先程までの荒々しい態度はどこへ行ったのか逆に困惑しているようだ。


「だ、大丈夫ですニイジマ三尉! も、もし変な動きを見せたら撃ちますから!」


 アサクラ リオがそう言って拳銃を突きつける。


「手が震えてるけど大丈夫?」


「こ、これでも軍人よ! 舐めないで!」


 少年が言う通りリオの銃を握る手は震えており、顔も若干涙目になっていた。


「そう言えばさっき弾切れになったって言ってた筈じゃ」

 

 などとダメ押しで味方である筈のミソノにそんな事を言われる。

 一気にリオの顔が真っ赤になった。


「馬鹿! なんでそんな事を言うのよ!」


「え? どうして?」


「どうしてってアンタねぇ! あーもうなんでこんな奴の面倒見なきゃなんないのよ」


 そう言ってリオはポニーテールを揺らして頭を掻き毟る。


「何時もこんな感じなの?」


 セイと名乗った少年はミソノに質問する。


「うん。やっぱりあんな事があった後だからちょっと――それにニイジマ三尉に良いところを見せたかったんだと思う」


 などとミソノはセイにリオの内心を憶測混じりに伝える。

 予測は的中しているのかリオは涙目になって 「ちょっとアンタ本当にどっちの味方なの!?」と怒鳴り込んできた。


 カレンはと言うとシリアスな雰囲気など吹き飛んでしまい、どうすれば良いのか分からなかった。


『無線で開きっぱなしよ、カレン三尉』


「隊長!?」

 

 ヘルメットの中でカレンは驚く。

 上官であり、第1201偵察隊の隊長でもあるサオトメ アンリ二尉の声がしたからだ。

 先程からの馬鹿騒ぎの内容を聞いていたらしい。


『状況はなんとなくだけど理解できたわ。その子をここまで連れてこれるかしら? お礼もしなくちゃいけないだろうし』


「し、しかし・・・・・・」


『ミソノちゃんとリオちゃんを守ってくれたから悪い人じゃないと思うの。それからカレン三尉には監督責任で罰則が待ってますからね』


「りょ、了解・・・・・・」


 隊長から――仕方ないとはいえ罰則を聞かされ、気分が沈み込んだが不幸中の幸いで丸く収まったと前向きに考え、ミソノとリオに謝罪して何かプレゼントしようと思いつつ命令通りにキノモト セイを連れて帰ることにした。

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