第1話「戦士再臨」
Side 木之元 セイ
『このメッセージを聞いていると言うことはあなたが目覚めたと言うことね。
私達はシェルターの外へ旅立つことにしたわ。
外の世界がどうなってるのかは分かっているつもりよ。
でも私達は一生をこのシェルターで終えたくない。
セイ。
本当はあなたを目覚めさせようかどうか議論したわ。
でもアナタには確かめて欲しいの。
私達が再建しようとした世界がどうなったのかを。
だからアナタの装備は置いていくわ。
ごめんなさい。
今までありがとう。
セイ』
木之元 セイはパワーローダーの中で自分の部隊の隊長だった同い年の女性のメッセージを聞き終えて涙した。
エースカラーの赤いパワーローダー。
ご丁寧に白く縁取られた赤い稲妻のエンブレムも張ってある。
日本製の四型強化外骨格「月光」。
最新鋭のパワーローダーで突起物はないが丸みを帯びた曲線が多いヒロイックな外観だ。
整備された状態で装備一式と一緒に放置されていた。
手にはパワーローダー用のアサルトライフルと腕を覆うぐらいのサイズのシールド。
背中のマウント部にはパワーローダー専用の大型ライフルや対装甲目標用のブレードを搭載。
体のあちこちに予備弾薬や武器を搭載している。
装備を確認し、最後のメッセージを聞いている間にも地上へと続く四角い、斜め上に進むエレベーターは動いている。
資材搬入なども視野に入れていたのだろう。
エレベーターのスペースはとても広い。
重量制限さえ無視すれば戦車すらも載せられそうだ。
そのスペースにただ一人だけと言うのは寂しかった。
『地上へのゲートを開きます』
エレベーターが間近に迫ろうとした時、館内アナウンスが流れた。
あの日――世界の終わりを垣間見てシェルターに飛び込んだ。
徐々に開かれるゲートから差し込む光はとても眩しかった。
☆
Side アンドウ ミソノ
ミソノはリオと一緒に銃撃戦から逃れていた。
まさかの野盗の襲撃。
敵は十人以上。
機械鎧二台に武装した戦闘車両が一両。
機械鎧も戦闘車両も禍々しい外観です。
それ以外の人間も武装している。
とにかく車両から離れてゴミ漁りをしていた格納庫へと逃げ込んだ。
応戦するかどうかで悩んでいた時、ミソノは「話し合えば分かってくれる」などと寝ぼけたことを言って、「馬鹿、あなた何を言ってるのよ!?」とリオはそれを引き留め、そんなコントをしていると気づかれてしまい、リオは反射的に発砲してさあ大変。
なし崩し的に銃撃戦に突入しました。
と言っても戦力差や武装の差も一方的であり、軍人とは言えゴミ漁り専門の田舎部署に所属する、戦闘とは程遠い任務やっていた少女達です。
アンドウ ミソノは実質戦力外。
アサクラ リオも必死に拳銃で応戦していますが早々に弾切れになりました。
通信機は車の中ですので助けにも呼べません。
万事休すかと思われたその時――
『様子見に来て正解だった!!』
「カレン三尉!!」
赤い髪の毛に整った顔立ちがとても綺麗でカッコいい長身のお姉さん、第1201小隊の副隊長、ニイジマ カレン三尉がやって来た。
ヒノモト製の緑の機械鎧、無骨で威圧感のある外観のオオタチ二型。
一世代前だが十分実戦でも戦える性能です。
手に持った大きな銃、機械鎧用の銃で応戦しますが敵の矛先がカレン三尉に向きます。
必死に背中から炎を出し、その勢いで避けようとしますが多勢に無勢。
敵も機械鎧だけでなく武装した戦闘車両含めて十人以上の火力が集中されるのです。
いくら機械鎧が頑丈とは言え、中の人間が銃弾の衝撃などで昏倒して最悪衝撃でショック死。
戦闘車両の攻撃を受ければ一溜まりもありません。
彼が現れたのはそんな時でした。
☆
Side 木之元 セイ
(こんな時代になっても戦っているのか・・・・・・)
変わり果てた軍事基地。
その施設内でなにやら銃撃戦が起きていた。
『パワーローダー三機を確認。戦闘車両も確認しました。一体は未確認、他の二機はアメリカ製のガードナーのカスタム機だと思われます。戦闘車両は民間の車の改造でしょうか』
月光のAIが喋りかけてくる。
(なんか世紀末の世界に出てきそうなデザインだね・・・・・・)
緑色の無骨な外観のパワーローダーはともかく、問題は他の二機のパワーローダーに戦闘車両だ。
まんま世紀末の世界の悪党を全力で主張しているようなパワーローダーだ。
元はAIが言うとおり拠点防衛型のアメリカ製の第二世代機ガードナーだろう。元は四角く角張ったデザインで防御力重視の拠点防衛型だが用途不明のトゲやら鉄板の追加装甲がついて原型がなくなっている。
車両もAIの推測どおり民間の車両にてきとうに鉄板貼り付けてそのまま重火器を乗っけて移動砲台として運用している感じだ。
周りを固めている生身の人間も世紀末の悪党の教科書みたいなファッションでモヒカンや威圧的なフェイスペイントに廃材で作ったと思われるアーマーやらを着込んでいた。
ついでに言うと東洋系の顔立ちである。
此方を見て両陣営ともに戦闘の手が止まっている。
余程自分の存在がイレギュラーなのだろうとセイは思った。
『どうしますか?』
AIが語りかけてくる。
それにしてもこのAIどうも人間くさい。
生存者の誰かが搭載したのだろうか。
「状況が分からない。攻撃をするワケにもいかない」
『妥当な判断ですね。集音マイクをONにします』
するとこんな会話が耳に入ってきた。
『ボス!? あの赤い機械鎧どうしますか!?』
『構わん!! 殺して身包み剥いでしまえ!!』
と言う感じだった。
ボスはあの髭を生やした大男――クマが世紀末ファッションしているような奴だろう。戦闘車両の銃座であれこれ大声で指示を出している。
セイは「ハァ」と溜息をついた。
どうやら戦闘は避けられないらしい。
そして背中のジェットパックを作動させて空中に飛び上がり、敵に銃を向けた。
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