プロローグ2:アンドウ ミソノ

Side アンドウ ミソノ


 まだ十代半ばでオカッパ頭のヘアースタイルの少女、アンドウ ミソノはヒノモトと言う国の軍人である。


 ミソノは昔から好奇心旺盛で外の世界を見てみたいと思っていた。

 だが同時に家の家系を手助けをしなければならない。

 そう考える同年代の子供達は多かった。


 だから軍人になる事を申し出た時は両親から「立派に務めを果たすんだよ」と快く送り出してくれた。


 そこから村の寺子屋通いから軍隊学校の寮で生活し、そして二等兵となって第1201ヒノモト偵察小隊の隊員となった。


 偵察隊の役割は様々だが第1201小隊の役割は厄災の時代以前の遺の回収任務である。


 厄災の時代とはもう今から遠い昔に起きた滅びの光により世界が荒廃した時代の事である。


 その厄災の時代は今では想像も付かない程の地獄のような時代であったと言われているがミソノは上手く想像出来なかった。

 

 滅びの光が起きた原因も定かではない。

 言い伝えはあるにはあるがバラバラだ。

 曰く、「神が人に与えた裁きである」と、簡単に言ってのける一方で「科学でなんでも出来ると思い上がった人類が科学の力で破滅した」と難しい言い回しの伝え方もある。


 だが様々な伝承に共通するのは「昔の人間はとても悪い事をした」と言う事だそうだ。


「ちょっとミソノ? 聞いてる?」


 自分の上官である黒髪のポニーテールの少女、アサクラ リオ一等兵の言葉を聞いてミソノはハッとなった。

 歳は同じぐらいだがミソノより少し背が高く、しっかりしていて階級も上である。

 正直自分よりも緑の軍服が似合ってるな~とかミソノは感心していた。

 

「は、はい――なんでしょうか?」


「また考え事をしてたでしょう?」


「す、すいません――」


「まあいいわ。しかし機械鎧で作業できたら楽なんだけどね」


 今自分達は偵察隊の任務――厄災の時代以前の過去の遺失物で使えそうな物の回収任務を行っている。


「あの――アサクラさんは恐くないんですか?」


「なにが?」


「ここ、戦士の墓なんでしょう?」


 場所は大昔の軍事基地。

 ヒノモト各地に存在し、またの名を戦士の墓と呼ばれる場所の一つに訪れていた。

 そこの兵器の格納庫で二人ガラクタ漁りをしていた。


「そうね」


「アサクラさんは恐くないんですか?」


 戦士の墓と言うのはそれを訪れた人々が付けた名前であり、そこに訪れた人間は呪われると言う。

 

 だが呪いの正体とは厄災の時代を生き延びるために人間達が戦士の墓にある物を巡って幾度も抗争する様の例えであるそうだ。


 ミソノが訪れた場所は何度も調査の手が入っているのでめぼしい物はもう余りないため、その心配は無いが今でもそう言う抗争が起きているそうだ。


 ミソノは恐怖を感じる同時に、どうして人間同士仲良く出来ないのか不思議に思った。


「この基地はめぼしい物は殆ど残ってないし、ここはヒノモトの中でも平和な地域だから野盗の心配とかしなくてもいいわよ」

 

 リオは現在いるスクラップだらけの兵器格納庫を見渡しながら言う。


「いや、そうじゃなくて――」


 どうやらミソノの言いたい事は上手くリオに伝わっていなかったらしい。

 だけどどう指摘したもんかとミソノは上手く言葉が出なかった。 


「ともかく手を動かす。今はガラクタでも貴重な資源なんだがら。夕飯までには帰るわよ」


「うん――」


「うんじゃなくてはいでしょ! 気合い入れなさい!」


「は、はい!」

 

 このやり取りも、もう何度目かになるか分からない。

 軍隊は厳しいと聞いていたがミソノの想像以上の場所だった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る