第4話「おじさん」

『まだ人がいるところまで距離あるけど、ここで寝泊まりするぞ』


「ここは?」


『変なおじさんの住処』


「口悪いなお前・・・・・・」


 ゲートが開かれており、おそるおそる中に進む。

 ガンテツ曰く「通信で話し通しておいた」らしい。


 ユウヒの眼前には小屋があった。

 だが周囲には廃材で作られたバリケードがあり、タレットが置かれている。

 武装した様々な型のロボットまで徘徊していた。

 型はとても古いがパワーローダーや武装した民間車両まで配備されている。

 他にも畑やら浄水器やらちょっとした前線基地だ。 

 

「おお、来たか。ガンテツ。今日は客人が多いの」


 すると白髪に白髭に眼鏡をつけたおじさんが現れた。

 衣装は白衣の下にカッターシャツにネクタイでズボンにブーツ。全体的に服装はヨレヨレで継ぎ接ぎだらけだ。


 背後には自分の身内である太平洋連合の兵士がいた。

 俺と同じ境遇だろう。

 数は五人で泣いたり、放心状態になったりしている。


『うん? そっちも誰か来たの?』


「まあな。自衛隊の連中にも声を掛けている」


「じえいたい?」


 聞き慣れない単語にユウヒは首を捻った。


『軍隊並の装備を持つ日本の専守防衛の防衛組織。この土地の兵士といったらこの人達を指すんだ。まあ色々あって弱体化してるんだけどな』


「頼れるのか?」


『弱体化した原因はユーラシア連合や太平洋連邦が関わってるから、殺されたくなかったら絶対言うなよ』

 

「わ、わかった」


 メチャクチャ耳が痛い話だ。

 これまでのガンテツとの会話やユウヒの任務の内容などの情報を統合して推理すれば子供でも分かる。

 態々こんな化け物だらけの土地まで来てドンパチするとはよっぱどのバカか精神がイカれて―― 

 

(考えるのはやめよう・・・・・・)


 ユウヒもそのバカなのだ。

 あまり悪口どうこう言うと自分に突き刺さってくる。

 ユウヒは考えるのをやめた。


「私もある程度事情は知っている。人間とは良くも悪くも変わらないもんだ。こんな場所に基地など建設しようとして何を考えてるんだか」


(全く持ってその通りです・・・・・・)


 くたびれた白衣のオジさんは苦笑して正論を言った。

 ユウヒはとても申し訳ない気持ちになる。


「君も太平洋連邦の人間かね?」


「は、はい。ユウヒ・ステイン。軍曹です・・・・・・」


「そうか。私はスティーブ・マケイン。人里離れたこんな場所で暢気に人助けばかりしている変わりもんさ」


 と、おじさんことスティーブは独特な自己紹介をしてガンテツに『自分で変わりもんとか言ってりゃせわねえぜ』と突っ込まれる。

 そう言われてスティーブは「それもそうだな」と笑い飛ばす。


「しかしこれから大変になるぞ。話を聞く限り君達が漂着した場所の物資は大方野盗どもの手に渡ったことになる。どうにかせんと調子づいて手当たり次第に襲いまくるぞ」  

  

『殺しても殺してもあの手の連中はうじゃうじゃ湧くからな』


 それを聞いてここに来た時の状況や逃げた時の体験を思い出す。

 確かにあのビーチには様々なボートがあった。

 当然武器弾薬や食料まで何でもござれだ。

 中にはパワーローダーを搭載していた小型船などもあった気がする。


 そしてあの化け物達から逃げるさいに謎の武装勢力の襲撃を受けた。


 状況を考えるにつまりあの武装勢力に物資が全部奪われていると考えているのが正しいだろう。

 

 そこまで考えて頭が干上がった。


 どうしてこうも次から次へと最悪の事態が起きるのだろう。


 この土地に来てから一日も経ってないのにこれである。


『まあともかく今日は休んだ方がいい。俺もお前も全知全能じゃねえんだ。なるようになるさ』


「ど、どうも・・・・・・」


 ガンテツのどう評して良いのか分からない物言いに多少なりともユウヒは救われたような気がした。


 それに彼の言うとおり今の自分にどうこう出来る力はない。

 大人しく休むことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る