第3話「道中」

 Side ユウヒ・ステイン


 ユウヒ・ステインは謎のロボット、ガンテツに色々と質問される。


『しかし海の方が騒がしいと思って来てみればまさか、外の世界の軍隊が来ていたとはな』


「ネットワークは繋がっていないのか?」


『核兵器のせいでどれだけの電子機器がやられたと思ってるんだ。それに未だに放射能汚染が続いている地域もあって変な化け物が産まれる始末だ。ネット繋がらねえよ』


「あのサメとかタコとかカニとかは?」


『あの化け物だらけの砂浜にいたのか。よく生きてられたな』


 そう言われて他の仲間達はどうなったのだろうかとユウヒは思った。

 だがそれを思い出すとサメに食われて死んでいった仲間の最後を思い出してしまう。


『その様子だと船食いとかにも襲われただろう。メチャクチャでかい化け物サメ』


「空母を食い千切ってレールガンやビーム兵器の直撃浴びてても死ななかったり、口から光線を吐いたりしてた奴がそうだって言うんならな」


 ユウヒはその時の事を思い出しながら言った。あの時は生きた心地がしなかった。


『お前ら軍人なのに下調べとかしなかったのか? 昔からそうだけど本当に人間は変わらないな。おおかた、都合の悪い情報を上がもみ消して強行したんじゃねえのか?』


「それは――そうかもな・・・・・・」


 そう言われて確かにとユウヒは思った。

 自分達が所属する太平洋連邦の人間は入念に下調べをしていた筈だ。

 にも関わらずこんな災難続きである。

 

 つまり太平洋連邦の上層部は余程の間抜けか、このロボットが言うように何か裏があると思った方が自然だろう。


『ユーラシア連合の軍人さんとかも何度かこの島に来たけど全員死んだか、帰還を諦めてこの島に定住しているよ』


「ユーラシア連合もいるのか!?」


『大きな声出すな。サメの餌になりたいか』


「ああ――てかここまで来てサメは出ないだろ流石に」


『いや出る。クソ映画のサメみたいにサメは何処からでも現れる』


「・・・・・・冗談だよな?」


『だと良かったんだがな。あとタコとかカニとか巨大なトカゲとか』


 どうやらまだまだ認識不足だったらしいとユウヒは頭を抱える。


「話戻すけどユーラシア連合も来たのか?」


『ああ、民間人やら犯罪者やらが迷い込んだりしたりもした。太平洋連邦の連中も何度か来てるんだわ』


「そ、そうなのか!?」


 自分達が初めてではなかった事に驚く。

 

『やっぱり都合の悪い情報はシャットアウトされてるのか』


「だけどどうして――」


『こんな化け物だらけの島の存在が世の中に明るみになってみろ。核廃絶団体や平和市民団体だけじゃない――市民達が戦争反対を叫び出す。軍事国家にとっては存在そのものが厄介だろうさ』


「た、確かに――」


 ただでさえこのニホンは平和市民団体や核廃絶団体からは核で滅んだ悲劇の国として認知され、「貴方達はこの国か、敵対国を日本のような国にしたいのか」と批判するのがお約束である。

 

 そう言う団体は世界中におり、ユーラシア連合でも悩みの種になっていると聞く。

 

 この島の存在を知ればその手の団体達は勢いづき、大幅な軍備縮小は逃れられないだろう。


『それに今回のお前達の作戦だってもう任務どころじゃないだろ。恐らくユーラシア連合の仕業にされて、本国に帰還しても口封じされるか精神病院送りにされるのがオチだ』


 確かにこのロボットの言う通りだと思った。

 もっともそこまで生き延びられるかどうかが問題であるが。

 

「じゃあどうしろって言うんだ・・・・・・」


『さっきは言ったろ。そこは自分でこれから考えろ。このやり取りも何度目だろうな・・・・・・』


「はあ・・・・・・ありがたい助言どうも」


 ユウヒは涙が出てしまう。

 なんで自分はこんな目に遭ってるんだ。

 この作戦にGOサイン出した連中が眼前にいるならば迷うことなく全力でぶん殴っているだろう。

 それ程までに理不尽さを感じた。


『しかし、人間は変わらないな――良い意味でも悪い意味でも』


「え?」


『ちゃんと前を向いて正しい方向に歩む人間もいれば悪さをする人間もいる。例えどんな世の中になってもな――』


「あ、ああ」

 

 ユウヒは何故だか上手く言葉を返せなかった。

 

 ただとても強い言葉の重みを感じた。

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