第1話「上陸」

 Side ユウヒ・ステイン


 俺たち太平洋連邦のニホン派遣艦隊がニホンに上陸した時は夕日になっていた。  

 当初の上陸地点である浜辺の砂浜に辿り着く。森を挟んで離れた場所に緑に浸食された廃墟の町がある。

 生存者は意外と多く、ざっと数千人以上いたが艦隊の規模を考えれば少ない。


 皆、砂浜に転がり込んでいた。

 他にも同じようにして生き延びた人間達がいる。

 ただ全員無傷ではない。

 泣きじゃくる者。

 放心して何か独り言をブツブツ言うもの。

 錯乱するもの。

 死屍累々と言う言葉があれば今のような状況を差すだろう。


 俺も泣いていた。 

 

 周囲を見返すために軍隊に入った自分が馬鹿みたいだ。


 こんな事なら軍隊に入るんじゃなかったと。


 レオス大尉は他の指揮官やまだ元気でガッツがある人間と何やら話している。


「ほらこのタマ無し野郎ども!! なにウジウジしてるんだ!! そんな暇があるんなら動け!!」


「お前達は負け犬か!? 泣きたいのはこっちも同じなんだ!!」


 そうこうしているウチに上官達から熱い檄が飛び始める。


「いいか!? 確かに想定外のトラブルはあった!! だが――」


「ギャアアアアアアアアアアア!?」


 断末魔が上がった。

 再びサメが現れた。軍艦を食べる程の巨大なサメでは無いがそれでも大きい。トラックぐらいのサイズだ。

 一匹や二匹ではない。

 目に見える範囲で十匹以上はいる。

 それが手当たり次第に海の近くにいた人間を食べ始めた。


「逃げろ逃げろ!? とにかく逃げろ!!」


 そう言われるまでもなく皆逃げる。

 中には海中から大砲から放たれた砲弾のごとく飛び出して砂浜にいる人間を食べるサメもいた。

 

 そうこうしていくウチに家ぐらいのサイズの大きなイカや乗用車ぐらいのサイズのカニまで参戦して人間に襲い掛かる。

 

 悲鳴や断末魔を振り払い、俺は全力で逃げた。

 

 眼前の森へと入り込み、そこを潜り抜けて廃墟へと辿り着いた。


(ここがニホンの町なのか?)


 道路はひび割れ、一部が陥没し、雑草が人の背丈よりも成長している。建物も緑がびっしりと浸食していて、パーツが欠けていたり倒壊して道を塞いでいたりする。


「銃撃!?」


「敵襲!! 敵襲!!」


 ここに来て敵襲。

 ユーラシア連合だろうか?

 最悪のタイミングだ。


 音からして重火器を使用しているらしい。

 俺のすぐ隣にいた人間はミンチになった。

 肉片や血や臓器だった何かが体に付着したがそんな事よりも俺は死の恐怖でどうにかなりそうだった。


 森から現れたのはパワーローダーだった。

 核融合炉。

 ダイアモンドより硬い改良されたカーボン製の装甲で構成された最強の鎧。

 

だが眼前に出現した連中は紛争地帯のゲリラが使用してそうな、まるで装甲版を継ぎ接ぎにして作ったような外観だった。


 周りも奇妙な格好をしている。

 蛮族と言う言葉が似合いそうな背格好だ。

 そいつらが笑い声をあげて様々な銃火器で殺しまくる。


 俺はここでも逃げた。


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