危険地帯ニホン

MrR

プロローグ

Side ユウヒ・ステイン


 放射能の危険はあるだろうが楽な任務になる筈だった。


 かつてニホンと言う国が存在した土地に基地を建造すると言う計画だ。


 この作戦はとても重要であり、成功すれば敵対するユーラシア連合に対する驚異となり得るからだ。


 成功すれば俺達、太平洋連邦は政治的、軍事的に優位に立てる。


 そう言う筋書きの任務だった。


 当然、敵対するユーラシア連合の妨害も予想されるので派遣された艦隊の数もそれ相応だ。

 

 上は実戦になる確率はまず確実だと考えている。


 まあニホンの位置関係を考えれば当然だろう。


 なにしろこの計画はユーラシア連合の喉元に短剣を突きつけるような物だからだ。


 普通に考えればまず妨害される。


 現にユーラシア連合の連中、此方の先遣隊に手を出したのか消息不明になっているようだ。


 出航当初は皆で馬鹿話していたが、ニホンが近づくにつれて段々と緊張感が漂い始める。


 俺もそうだ。


 とても恐かった。


 だが現在、俺達は自分達の運命を、そしてこの任務に志願したことや軍隊に入った事を呪った。

 

 それは真っ昼間に起きた。


 気晴らしに揚陸艦の外に出て日光を浴びていた。


 心地よい潮風に独特な海の香りを楽しんでいた。


 そんな時だった。


 最初は警報が発令された。

  

 次に起きたのは――サメだった。


 巨大なサメ。空母のサイズは300mだからサメのサイズは少なくとも50mぐらいはありそうだ。

 それが空母の船底から船体の胴体を丸かじりして海から出現した。

 

 現実感と言う物がなかった。

 まるで出来の悪いクソ映画を見ている気分だった。

 真っ二つに割れた空母はボトボトと人間や戦闘機を落としながら海底に沈んでいく。


 当然他の艦艇も戦闘態勢に入った。

 だが次々と軍艦が巨大サメに食い千切られて海の底に沈んでいく。

 生存は絶望的だろう。

 動力の核融合炉が爆発したのか目も眩むような大爆発を起こす艦艇もあった。


 それでもサメは死ななかった。

 光線を吐いて纏めて艦艇を沈めたりしていた。


 ワケが分からなかった。


 周りがとても騒がしいが上手く耳に入らない。


 するといきなり顔に痛みが響く。


 なんだと思い、顔を向けるとそこに鬼軍曹がいた。

 逆立った金髪の髪の毛にサングラス。

 レオス大尉。

 俺達の所属する部隊の指揮官だ。


「なにボサッとしている!! 早く上陸用のボートに乗り込め!!」


「い、いえっさ!!」


 俺は復唱した。

 恐怖に駆られて様々な仮定をすっ飛ばして揚陸艦内にある武装した上陸用のボートに飛び込んだ。

 そのボートには屈強な外観の大の男達や少ない女性兵士達が涙を流して神に祈ったり親や恋人の名前を呟いたりしていた。

 確かこの中には実戦経験も豊富な人間もいた筈だが例外なく泣いていた。

 俺も泣いていた。


「これよりこの海域を全速力で離脱する! サメの餌になるよりかはマシだ! いいな!?」


 汗だくのレオス大尉の意見に誰も反論しなかった。

 そうしてハッチが開けられ、上陸艇が海水に着水。

 緊急発進する。


 外に出て最初に見た光景は空に逃げようとしたヘリが巨大サメに食われる光景だった。

  

 ヘリの乗員の安否よりも俺は「あそこにいなくてよかった」と思った。


 早くこの悪夢から逃れたかった。


 こうして離れていく今もあの巨大サメに対して激しい攻撃が続いてる。


「まだ生きてるのか!?」


「どう言う体の構造してやがんだ!?」


 レールガン。

 ミサイル。

 レーザー。

 ビーム。

 ありとあらゆる火器が巨大サメに集中。

 攻撃は効いており、体が抉れて大量出血した。

 それでも生きているらしいことに驚異を感じる。

 

「一体だけじゃなかったのか!?」


 だがさらにもう一匹、二匹、巨大サメが現れる。

 この瞬間、俺は絶望と言う言葉を体で思い知ることになった。

 ああ、今俺が感じている物がそれなんだなと。


「今度はなんだ!?」


「いったいなんなんだこの海域は!?」


 次々と巨大生物が出現する。

 カニやタコだ。

 サイズも軍艦に匹敵するサイズ。

 次々と海に引きずり込んでいき、巨大生物同士の大乱闘になっていく。


 それを眺めつつ、俺達を乗せたボートは進んでいく。


「とにかく陸地を目指して一刻も早くニホンに上陸するぞ!! このまま海にいてもあの化け物どもの餌になるだけだ!!」

 

 レオス大尉の意見に俺達は賛同した。


 とにかく一刻も早く陸地に上がりたい。


 そんな気持ちで一杯だった。


 その時までは―

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