第16話 #ハル
学校に登校して教室に入り、既に登校していた片岡の所へ向かった。
「おはよ。 昨日言ってた話って何だった?」
「あ、松山っちおはよ。 ちょっとココじゃ話せないからお昼でもいい?」
「おっけ。じゃあどっか別の場所でメシ食べながら話す?」
「うん、そうしよ」
片岡はいつもの元気さが無く、落ち着いた口調だった。
お昼休憩になると、弁当を持って片岡に声を掛けた。
二人で屋上に繋がる階段を上がり、屋上入口手前のスペースで食べることにした。
「あんまし時間無いから、ハッキリ言うね」
「うん」
「松山っちのカノジョ、多分二股してるよ」
「はぁ?」
「昨日学校帰りに見たの。 相手の男、私と同中で知ってるヤツで、そいつ南高でね、松山っちのカノジョも南高でしょ?」
「そうだけど・・・」
「そいつ須藤って言うんだけど私んちと結構家近くてさ、帰りに見かけた時、同じ南高の女の子連れてて、その場で会話とかはしなかったけど、可愛い子だったから、なんか見たことある子だなぁって思ってて、でもその時は思い出せんくて」
「・・・・」
「家に帰ってから、松山っちのカノジョだったかも?って思いだして、それで松山っちに確認したの」
「でも・・・それだけだと二股とは言い切れないんじゃない?」
「その時の雰囲気っていうかその須藤の表情がなんかキモイくらいニヤニヤしててね、それで普通じゃないなって引っかかったから、同中の他の友達にお願いして須藤に直接確認して貰ったの」
「それで?」
「須藤は、カノジョ出来たって言ってたらしくて名前確認して貰ったら、佐原マキだって。 松山っちのカノジョじゃない?」
「ウソ、でしょ・・・・」
「やっぱカノジョだったか。 この際だからハッキリ言うね。 須藤はその佐原って子と夏休みの間エッチしまくってたって自慢してたって。 松山っち、心当たりない? カノジョが夏休み中に怪しい態度とか行動とかしてたとか」
怪しい態度とか行動・・・
思い当たるコトが多すぎて、その場で頭を抱え込んだ。
「だいじょーぶ!?」
「無理」
「気分悪いの?」
もう声出したくなくて、頭抱えたまま無言で首を横に振った。
「ごめん!松山っち、しっかりしてて強そうだから、だいじょーぶだと思って私が全部話しちゃったから」
返事の代わりに、また頭抱えたまま無言で首を横に振った。
「ごめんごめん!ホントごめん!」
片岡は必死に謝りながら俺の背中を擦り続けてくれた。
休憩時間中に立ち直ることが出来ず、弁当もまともに食べていないまま5限目の予冷が鳴った。
「私一回教室に戻ってクラスの子に5限休むこと伝えて貰うようにお願いしてくる! 後で保健室連れてくからこのままココで待ってて!」
そう言って片岡は階段を駆け下りて行った。
5分もしない内に片岡は息を切らしながら戻って来ると、俺を肩に担ぐように立ち上がらせて、二人の弁当箱をそのままにして保健室まで連れて行ってくれた。
保健室へ行くと、養護教諭の先生は俺の顔を見て直ぐに「ベッドに寝かせて!」と片岡に指示した。
「先生、松山っち休憩中に気分悪くなったみたいで、ここまで連れて来たの」
「顔色、真っ白で血の気無いわね。 何か悪い物食べたとか、頭ぶつけたとかは?」
「えっと・・・かなりショックな話聞かせちゃって・・・」
「そっか・・・とりあえず今は休ませるしか無いわね。 担任の先生には報告してある?」
「ココ来る前にクラスの子に5限休むこと伝えるようにお願いはしてきた」
「じゃあ、担任の先生には私が後で報告しておくわね」
「心配だから、私もココで付き添っててもいい?」
「うん、わかったわ。あなたもココまで担いで来るの大変だったでしょ? ゆっくり休むといいよ」
「あ! その前に二人の弁当置いたままだから、それだけ取ってくる」
そう言って片岡は保健室を出て行った。
その間、体温を測られたり、色々質問されたけど、まともに答えることが出来なかった。
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シリアスな連載物です。
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