第13話 #マキ
「エッチしたら本当に許してくれるんだよね?」
私の言葉を聞いた須藤君は、「お、おおう!」と急に機嫌が良くなった。
「でも、家族の人居たら・・・」
「あーそれはだいじょーぶ。お盆休みに合わせてお袋もオヤジのトコ(単身赴任先)行ってるから」
益々逃げ道が無くなったと思った。
「・・・ちゃんとコンドームしてくれるなら」
「だいじょーぶ!コンドームなら買ってあるし!」
須藤君はそう言って立ち上がり、机の引き出しから未開封のコンドームの箱を取り出した。
須藤君のベッドの上で、何も身に着けていない裸の私は、ただ早く終わって欲しくて泣きながらじっと耐えていた。
カーテンを閉め切って薄暗くなった部屋で、始まってからもうどれくらい時間が経ったのか分からなくなっていた。
経験の無い須藤君は上手く出来ずに一人でイライラし始めていたけど、(このまま出来ずに終わってくれればいいのに)と私からは何もしなかった。
結局、出来ないままコンドームを使い切ってしまった様で、ようやくこれで解放されると思ったら「コンドームまた買っとくから、明日も来いよ」と言われ、私はまだ許してもらえないのだと絶望した。
体中が気持ち悪くて早くシャワーを浴びたかったけど、こんな所から早く逃げ出したくて、汚れた体のまま下着と服を身に着け、何も言わずに須藤君の家を出た。
出てからスマホを確認すると、午後の3時過ぎだった。
この日はお盆休みの初日で、ナツミさんに頼まれてお盆休み中は毎日シフトを入れていた。
急いで帰ってシャワーを浴びたりしてバイトに行く準備をする必要があったけど、ハル君やお店のみんなに顔を会わせるのが怖くて、現実逃避する様にわざとゆっくり帰ろうと自転車を押しながら歩いて帰った。
お店の前を通る頃にはバイトの時間になっていたけど、混雑し始めているお店を横目に憂鬱な気分のまま部屋に帰り、直ぐにシャワーを浴びた。
何度も何度も赤くなっても体をスポンジで擦った。
気付いたら1時間以上シャワーを浴び続けていて、急いで髪を乾かして着替えて、お店に行った。
お店では、遅刻したせいでみんなの機嫌が悪そうだったけど、客入りが多くて忙しくて誰も私に話しかける余裕が無くて、それに私自身も忙しく仕事をしていると、嫌なことを考えなくて済むから、助かったと思った。
沢山泣いたせいで腫れていた目元も、誰にも気づかれなかった。
閉店する頃には、お店は大分落ち着いていたけど、みんな疲れてて誰も私の遅刻の事を言ってこなかった。 ハル君もかなり疲れてる様子で、「お疲れさま」と一言だけ言うと、自宅の方へ引き上げてしまった。
部屋に戻ってシャワーを浴びてから、直ぐに寝ようとしたけど、体は凄く疲れているのに明日の事を考えると全然寝付けなかった。
誰かに相談したかったけど、誰にも相談出来る内容じゃなくて、どうすることも出来ず、須藤君の命令に従うしか無いと諦めるしかなかった。
翌日も同じ時間に須藤君の家に向かった。
この日の朝はハル君と会わなかった。
昨日とは逆に、ハル君に見つかって怒られてでも無理矢理引き留めて欲しかったと自分勝手なことを考えてしまった。
この日も須藤君はなかなか上手く出来なかったけど、何度目かにようやく出来た。
全然気持ちよくなくて、ただ痛いだけだったけど、「これが済めば終わる」と我慢した。
直ぐに終わった須藤君は「ふぅ、気持ち良かったぁ。マキちゃんも気持ちよかった?」と機嫌よさそうに聞いてきたけど、無視して下着や服を着始めた。
「なんだよ、無視かよ。 まぁいいや、明日もよろしく~」
信じられないことを言い出したので、必死に言い返した。
「約束が違う!エッチしたら許してくれるって言ったじゃん!」
「一回とは言ってないし?俺まだ満足出来てないし。 嫌ならお金返してくれる?」
「酷い! そんなの・・・」
結局、私一人じゃどうすることも出来ず、須藤君の言いなりになり続けるしか無かった。
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