第12話 #マキ
『須藤君と
私が泣き着く様に相談すると、友達の一人が間に入ってくれることになった。
お風呂上りで濡れたままの髪を乾かすのも忘れて、不安を抱えたまま待っていると30分程で返信が来た。
『明日10時に須藤君の家に行けば話聞いてくれるって。あとは自分で何とか頑張って』
『うん、わかった。ありがとうね』
『ウチらこそキツイ言い方してごめん』
『ううん、そんなこと無いから。私こそ心配かけてごめんね』
この日の夜は、ハル君に隠れて男の子と二人で遊びに行ったことの罪悪感と、明日の事の不安で、ハル君には何もメッセージが送れなかった。
翌日、朝起きて出かける準備をして、約束の時間に合わせて家を出て自転車に乗って近所のコンビニの前を通ると、丁度コンビニから出て来たハル君と鉢合わせた。
「お?マキ、おはよう。 こんな朝から遊びに行くの?」
「う、うん」
ハル君に一番会いたくないタイミングだったけど、呼び止められて無視する訳にも行かず自転車に乗ったまま立ち止まり、返事をした。
「夏休みだから遊ぶのもいいけど、宿題とか少しは手を付けとかんと後が辛いぞ?」
「うん、わかってる・・・」
「おばちゃんも心配してたぞ?」
「・・・ごめんね、急ぐから私行くね」
ハル君に向かって笑顔が出来なくて自分が自分じゃないみたいで、ハル君の視線にも耐えられなくて逃げ出した。
「車に気を付けて行ってこいよ」
ハル君は最後まで私のことを心配してくれていた。
そんなハル君に対して、昨日の夜以上に罪悪感できつかった。
約束の10時前に須藤君の家に着くことが出来て、緊張しながらインターホンを押した。
須藤君が応答してくれて、玄関が開くと「入って」と一言だけ言われた。
毎週の飲み会で何度も来ていたけど、いつもはグループのみんなが居たから、一人で来たのは初めてだった。
家に上がり須藤君の後ろに続いて須藤君の部屋に入ると、須藤君は足を伸ばして床に座り「それで?」と一言聞いて来た。
私は座らずに、立ったまま話した。
「昨日の事、謝ろうと思って。 ごめんなさい。出して貰ったお金は必ず返すから、今手持ちが無いからバイト代入るまで少し待って欲しいの」
「金返すから許せって?」
「・・・・」
「はぁ、全然納得出来ないんだけど?」
「でも、私、それくらいしか出来ないから・・・」
しばらくお互い沈黙が続いた。
吐きそうなくらい不安で、この場から逃げ出したかった。
5分か10分か分らないけど沈黙が続いた後、須藤君が喋り始めた。
「じゃあさ、エッチさせてよ。それでチャラにする。お金も返さなくていいよ」
「え・・・そんなの無理」
「いいじゃん。マキちゃん経験済なんでしょ? 俺、ドーテーだから卒業するの手伝ってよ」
「カレシ裏切れないから絶対無理だよ・・・」
私が拒否すると、須藤君は怒鳴り出した。
「じゃあ今直ぐ金返せよ!早く!」
須藤君は怒鳴りながら、床を叩いたりテーブルを蹴ったりして、私は恐怖で足が震えて涙がボロボロ零れだした。
「泣いても許す気ねーから!ほら、早く決めろよ!」
恐怖とか後悔とか罪悪感で頭の中がぐちゃぐちゃで、更に急かされる様に迫られ、私は考えることから逃げたくて
「エッチしたら本当に許してくれるんだよね?」と言ってしまった。
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