第14話 #ハル



 マキに会うのを断られた1週間後の定休日、マキは今度は約束通り会ってくれた。

 ただ、生理だというのでエッチはしなかった。


 生理と聞いて体調の方も心配だったから、この日は俺の部屋でゆっくり過ごすことにした。



 でも、マキはなんだかイライラとして機嫌が悪そうだったから、腫物を触るように気を使っていたが、結局お昼過ぎには「体調悪いから今日は帰るね」と一方的に言われ、本当に帰ってしまった。



 なんか怒らせるようなことしたっけ?

 生理だから機嫌が悪いのかな

 でも、今までも生理だったことあったけど、今日みたいに機嫌悪くはなかったよな


 マキが機嫌が悪くなること自体今迄見たことが無かったから、色々考えてみたけど全然理由が思いつかなかった。




 翌日以降、マキはバイトを遅刻どころかサボるようになった。



 今迄遅刻しても19時頃には来ていたのに、19時になっても来ないから、母がマキのスマホへ電話すると「急用が出来ちゃって今日は休みます」と一方的に言われて電話を切られたそうだ。


 俺にも「ハル、なんか聞いてる?」と聞かれたが「何にも。俺にもさっぱり分らん」としか答えようが無かった。


 母から「ハル、夜にでも様子見ておいで」と言われ、閉店した後アパートに様子を見に行ったがまだ帰っておらず、サキさんには「あの子、バイト来てないの!? てっきりバイトに行ってると思ってたのよ」と言われた。


 翌日、サキさんから母へ「遊んでて帰れなくなってバイトも休んだって。ごめんなさい」と報告と謝罪があったそうだ。


 しかし、その後も同じことが続いて、母はマキが来なくても連絡をするのを止めた。


 俺も何度も様子を見に行ったが、朝は寝ているのか応答してくれなくて、夜はいつも留守でいつ帰って来てるのか解らず、メッセージを送っても直ぐには反応が無く、返信が来るのも深夜の寝てる間だったりして、通話しても「ごめん、今忙しいから」とすぐ切られてしまい、結局お店の定休日すら会えないまま夏休みが終わった。








 2学期初日。


 一緒に登校しようとアパートの前で待っていたが、マキが全然出てこないので部屋まで呼びに行くと、玄関のチェーンを掛けたまま少しだけ開けて「ごめん、寝坊しちゃってまだ時間かかりそう」と言われた。


 俺の学校はマキの学校より遠くて、もう出ないと遅刻しそうなので「遅刻しそうだから先に行くな」と断って、一人で登校した。



 明らかにマキの様子がおかしい。

 いつからだろう。


 お盆休みの頃にバイトに遅刻するようになっていたな。

 そういえば、お盆に入ってすぐの頃、朝コンビニで偶然会った時も挙動不審だった。


 もっと細かいことを言えば、夏休み入った頃から遊び回ってたのも違和感があった。

 口に出して言わなかったけど、派手に遊びすぎじゃないか?と何度も注意しそうになったくらいだし。




 しかし、マキは翌日以降は朝は時間通りに家から出て来て、一緒に登校出来る様になった。


 マキの顔をまともに見るのは久しぶりだったが、目に見えてやつれてて凄く心配になったけど、言葉が出てこなかった。 他にも、バイトに来なくなったこととか色々聞かないといけないことはあったけど、また前みたいに機嫌が悪くなるのも怖いし、何よりも常に声を掛けて来るなという雰囲気で俺と目を合わせようともしないから、結局俺からは何も聞けずに、「おはよ」の挨拶だけしか言葉が交わせないままの登校が続いた。




 2学期始まって最初の定休日の朝、二人で登校していつもの別れるところに来てから、「今日どうする?」と聞いてみた。


「ごめん、今日用事あるから遊べない」と断られた。


 なんとなくそんな予感がしてたから「わかった」とだけ答えて、そのまま自分の学校に向かった。



「なんか、マキと一緒に居ても、疲れるな」とため息吐きながら自転車を漕いだ。




 放課後、マキと会う約束も無くなったから、真っすぐ家に帰って勉強していると、片岡からメッセージが来た。



『松山っちのお店って今日定休日だよね?』


『そうだよ』


『定休日って毎回カノジョとデートしてるって言ってなかった?』


『うん。それがどうした?』


『今日はデートじゃないの?』


 なんで片岡がそんなこと気にしてるのか、しかもなんで今日の事も知ってるのか全く分からず混乱した。


『急にどうした?確かに今日は会ってないよ』




 俺が返信した後、しばらく間が空いてから『明日、学校で話したいことがある』と返信が来たので『わかった』と返事をした。





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