第63話 【閑話】 魔族の事情

「デスラ―ドよ、お前急に魔王城に帰ってきてどうしたんだ?」


「なんだバモンか? それが…面白い奴にあったから、我の討伐証明に必要な部位をくれてやった、あと加護もな」


「随分珍しい事もある物だな、気難しいお前が体の一部だけでなく加護までやるとは…俺の知っている限りお主が加護を与えた人間は過去に二人しか居なかった筈だ」


「まぁな、だが…あの人間を見た瞬間、大昔戦ったリヒトという勇者を思い出してしまった、つい懐かしくなって、何かしてやりたい…そう思ってしまった」


「あの、泣き虫勇者か…腕を斬り落とされ、片足になっても俺に向かってきた…あのガキか」


「だが、お主も認めてしまっただろう? あの諦めない目…本物の勇者じゃ」


「まぁな、俺よりもフェザーが気に入ってしまったじゃないか?「この子を殺すなら私が相手だー-っ」とかいきなり裏切って攻撃しやがって…殺されるかと思ったわ…しかもご丁寧にパーフェクトヒールで完全治療した挙句、記憶迄消して人間界に手を繋いで出て行きやがった、帰ってきたのは70年後、ババアに擬態迄していていて最初フェザーだと解らなかったわ」


「あれは堕天使、元天使だからその部分に触れたのだろう、だがガキ呼ばわりするお主もしっかりと加護は与えたじゃないか?」


「ああっ…あの諦めない目、俺は凄く気に入ったからな、フェザーが連れて行かなければ、俺が部下にしたい位だった」


「何の話?」


「いや、デスラ―ドが、リヒトそっくりな奴を見かけてな…加護を与えたそうだ」


「嘘…ねぇ、その子本当にリヒトに似ていたの? そんなに似ていた? 加護を与えたって事は、性格も近いのかしら? 今から」


「待て、フェザー、せめて300年は手出し無用じゃ、手を出すならその後じゃバモンもじゃ…我が加護を与えたのじゃもう理人は不老不死じゃ、もしお前達が関わるなら300年は手出し無用で願いたい…我は300年眠る約束をした、お前達も関わらないで貰いたい」


「そうか、それなら俺は人間に擬態して、どういう奴か見てこよう」


「私もそうしようかな? リヒトにそっくりなんだぁ、しかも今度は不老不死…うんうん、楽しそう」


「いい加減にしろ…バモン、お前が強さを求める余り、四天王筆頭に魔王を殺してしまうから…儂が困っているんじゃないか…」


「だが、デスラ―ドお前が、二人の能力をその後取り込んだんじゃないか」


「したくてしたんじゃないわい…そうしないと世界の秩序が壊れるからしただけじゃ…魔王は城から出ないから幾らでもごまかせるが…おかげで2役儂がやる羽目になったわい」


「瞬間移動が出来るから良いじゃねーか?」


「なんだと!」


「ああっ解った300年待てば良いんだな? 解ったから睨むなよ」


「ふん」


「それじゃ、私は関係ないわね…行ってきまー-す」


「待つのじゃ…お前だって同じじゃ、天使の癖に女神がムカつくとか言って手傷負わせて堕天した身じゃないか?」


「だから、こうして四天王になっているんじゃない」


「あのな…魔王様も居ない、四天王筆頭も居ない、儂がどれだけ困っているか解るか? 理人は将来、四天王に加えたくて加護をやったのじゃ、暫く放って置いてくれ」


「そうなんだ…解った、私見ているだけにするよ…じゃあー-っ」


「待つのじゃ」


「なぁデスラ―ド、俺も行った方が良いんじゃないか? 理人って奴がリヒトに似ているなら…暴走するぞ」


「頼むのじゃ」


何でじゃ…なんで我ばかりが苦労せねばならぬのだ。


不老不死とはいえ…疲れたわ。


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