第61話 【閑話】ガイアと
俺は冒険者ギルドにガイアの捜索を頼んだ。
すると直ぐに連絡が入ってヨヨグの街に居る事が解った。
助けに向かいたい…そう相談した。
「理人くん、まだガイアの面倒みるんだ…もう絶縁で良いんじゃない?」
「理人…もう見捨てるべきだぞ」
「理人お兄ちゃんが優しいのは解るよ…だけどもう良いんじゃないかな?」
「私は話でしか聞いておりませんが、本当にゴミみたいな男になりましたわ…昔は可愛らしかったですのに」
「確かにそうだけど…親友だと思ってはいるんだ、最後にもう一度だけ助けてやろうと思っている」
「理人くんならそう言うよね」
「まぁ、お人よしな理人ならそう言うか」
「理人お兄ちゃんはやっぱり、見捨てられないよね」
「友情に熱いのも理人様の素晴らしい所ですわ」
妻たちに許可を得て俺はガイアに会いにヨヨグに向かった。
ヨヨグの街を探す事半日、ガイアは直ぐに見つかった。
こんな短時間で変わり果てていた。
あのお洒落で自信で溢れていた面影は何処にも無い。
只の物乞いにしか見えない。
幾ら勇者の地位をはく奪されてもジョブが無くなったわけじゃ無いし、能力が無くなったわけじゃ無い。
「ガイア、どうした?」
俺は声を掛けた。
「理人…俺を見るな、見ないでくれー――っ」
泣き喚くガイアを押さえつけ話を聞いた。
「俺が金が無くなった途端にこれだよ…あははは、飯すら此処暫く食ってない」
「あのよ…幾ら勇者待遇が無いとはいえ、Sランク冒険者が生活に困るわけないだろうが」
「Fランクに落とされた」
「何故落とされたか解らないが…剣も無いようだが、お前なら、オーガ位なら拳で倒せるだろうが」
「それがよ…常時依頼も含んで、仕事が受けさせて貰えないんだ」
何処かから圧力が掛かっているな。
恐らくは聖教国、もしくは教皇か…
「ガイア、ギルドに行くぞ!」
「おい、理人、何でだよおい…」
「良いから来い、お前は騙されている」
「だから、なんだ」
俺は聞いてないぞ…ガイアのランクが下がっているなんてな。
確かに勇者パーティではあるが、此奴はワイバーン迄なら恐らく俺と同じで狩れる。
オーガの群れ位なら狩った事があり、そういう実績でランクは上がった。
そこに国の関与はない。
しいて言うならSランクは実力者の承認が必要だが…それを考えてもAランクまでしか引き下げは出来ない筈だ。
俺はヨヨグの冒険者ギルドに行き受付にいった。
「おい、話がある…今すぐギルマスを呼べ!」
「理人様、はい只今…」
こういう時SSランクは便利だ。
「理人様、これはどういう事ですか? 大声でまるで喧嘩腰じゃないですか?」
「おい、何でガイアがFランクに落とされているんだ! しかも常時依頼も受けられないとは可笑しいだろうが!」
「そ、それは聖剣を魔族に差し出す様な奴を信頼できないし、教皇様からも…」
馬鹿な語っちまったな。
「あのよ…ギルドは国をまたがる特別機関で王にも従わない、そう言う話だろう? あんた何言った? 教皇様も…教皇様に忖度したならギルドの規約違反じゃないのか?」
「だが…教皇様から言われたら」
「そうか…それなら教皇様に連絡してみるわ…」
「なっ」
俺は通信水晶で教皇様に連絡をした。
わざと周りに見えるように…
「どうかされましたか理人殿!」
「ローアン大司教…実は今ヨヨグの冒険者ギルドに居るのですが、此処のギルマスが教皇様が冒険者ギルドに圧力を掛け、ガイアのランクを下げたと言うんですが…本当ですか?」
教会はクリーンなイメージが汚れるのを嫌う。
だから、返事も想像はつく。
「何をおっしゃっているのですか? そんな事教皇様はしませんよ、私が保証します」
「ありがとうございます…お手数を掛けました」
「だ…そうですよ、ギルマス、今教皇様の名前を使って語りしちゃいましたよね? 流石に教皇様の名前を語ったら『死罪』ですよ! 私は英雄ですから斬る権利があります…殺すよ」
「待て、待て…待ってくれ」
「なぁ、一体誰がガイアをFランクに落とせと言ったんだ?」
「だから、それは教皇様が..あああっ」
「今連絡しただろう? ローアン大司教様が、それは無いと言っていただろう? 仕方ないヨヨグのギルマスがローアン大司教様に嘘をついていると言った…教皇様にも嘘ついているそう言ったと今すぐ連絡してやる」
「待って下さい…待って」
「待ってやるから、今直ぐガイアをSランクに戻せ、戻せなければ報復&デストロイだ」
「理人…」
今回の件は恐らく悪いのは教皇たちだ、間違いなく怒りからFランクに落す指示を出した。
だが、これを俺には言いたくないから『言って無い』そう言った。
これで、誰からの指示も無いのにガイアをFランクに落とした事になる。
魔王討伐は『依頼じゃない』ならば、『依頼の失敗』が無いのに降格させた事になる。
さぁどうする…
「報復…デストロイ?」
「『冒険者の命は自己責任』これは冒険者同士の争いにギルドは介入しないんだろう…それに多少やりすぎても犯罪者にならない…腹いせにヨヨグの冒険者を皆殺しにしても文句無いよな…ルールだ」
「私一人では決められないんです…すぐに連絡をしますから待っていて下さい」
「そうか…ガイア待とうか?」
「ああっ」
俺達二人は、サロンに通され待つことになった。
お腹がすいているのかガツガツとガイアはお菓子を食っていた。
待つこと20分…ギルマスが此処に来た。
「お待たせしてすみません…これを」
ギルマスが冒険者証を差し出してきた。
ちゃんとSランクって書いてある。
「それじゃ非を認めるって事で良いんだな?」
「はいギルド側のミスです、申し訳ございませんでした」
「今、このギルドの直轄の武器屋で最高の武器は何?」
「それならミスリルの剣が一振りあります…金貨200枚ですね、買われますか?」
「だったら、それを賠償金として貰えますか?」
「そんな、何故ですか?」
「ハァ~、良いですか? ガイアがランクを落とされたのは『冒険者ギルド』のミスだったんでしょう?」
「はい、だから今、戻しました」
「だったら『その罪を教皇様に着せた貴方は死罪』ですよね? 更に不当にガイアに常時依頼すら受けさせなかったのはヨヨグのギルドのミス…貴方の命とこのギルドの不正の賠償金がミスリルの剣で済むなら安いでしょう?」
「はぁ~解りました…ミスリルの剣を渡します」
「ガイア良かったな、これでSランクに戻るしミスリルの剣も手に入った」
「理人、済まない」
「それじゃ、武器屋に取りに行くから、話通して置いてくれ」
「はい」
俺達は冒険者ギルドを後にした。
◆◆◆
ミスリルの剣を無事貰い…俺はガイアに革袋を放り投げた。
「これはなんだ?」
「金貨10枚入っている…それで再起頑張れよ」
「くれるのか?」
「まぁ…親友だからな、だが今のお前は最低だぞ…女にあそこ迄したんだ、俺の嫁は全員お前を嫌っている」
「そうだな…」
「お前は無意識だろうが、『俺には仲間なんていらねーんだ、ただ抱ける女が居れば十分だ』と言ったんだぜ」
「記憶にある」
「なぁガイア、俺はお前の仲間だし親友だ、要らないのか?」
「要らない訳ないだろうが」
「そうか、暫く俺はお前と距離を置く、嫁が嫌っているからな」
「解ったよ…女なら誰でも俺を嫌うだろうな…最低な事をしていたと今なら解る」
「それなら、此処からやり直せ…良い剣に少しのお金、それがあればお前は大丈夫だ『超人ガイア』なんだからな」
「ああっ、そうだ昔はそんな字で呼ばれていたな…そうだな慣らしでオーガでも狩って、その次はワイバーンでも狩る」
「そうそう、そうすればすぐに奴隷も買えるな」
「それは、暫くは良い…ソロで頑張ってみるさ」
「そうか…今迄何回もお前を助けた、今回もな…俺が困ったら今度はお前が助けてくれ」
「ああっ約束する、今度は俺がお前を助けてやる」
「それとな…」
「まだ、あるのか?」
「次会った時はエールを奢れよ、酒飲もうぜ」
「ああっ、そうしよう」
俺はガイアと別れた。
これ以上は『暫くは手を貸さない』
彼奴には勇者のジョブがある…冒険者なら一流で活躍できるはずだ。
頑張れよ。
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