第53話 謎の令嬢+1
俺とデスラ…いやデスラ―ド、どちらが正しいか。
もう解ってしまっている。
デスラ―ドだ。
何が四天王最弱だ…あれは神じゃないか…
指先一つで5万もの体を再生して死から復活させた。
前世で聞いた、オリンポスの神々…そのハーデス、いや下手したらゼウス+ハーデス合わせた力を持っている…
自分が助けて貰ったからと言う訳ではない。
だが、見たことが無い女神より、デスラの方が神々しく思えてしまった。
頭の中で嫌な答えが出てしまった。
『今まで魔王軍に本当に勝った人間は居ない』
恐らくは、今回の俺の様に何か思う所があって『わざと勝利を譲って貰った』のではないだろうか?
デスラは、俺が憧れた、同名の勇者 リヒトを知っていた。
あの時のデスラや前に会った竜種の目は敵を見る目じゃなくて『優しい目』だった。
勝ったのではなく、魔族に愛されたのではないか?
その結果偽の『魔王討伐』という栄誉を貰ったのではないか?
そうとしか思えない。
自分が何を貰ったのか解らない、だがくれたのは『呪い』じゃなくて『加護』だ…
どう考えても『神』に近い存在じゃないか…
デスラ―ドが神に近い存在なら、そんな存在を四人も統べる魔王ってどの位凄いんだよ。
いや…もしデスラみたいな人格者だとしたら…まさか。
これは流石に考えてはいけないな…
敗北以上に打ちのめされて俺はエビルの街に帰ってきた。
◆◆◆
「朝帰りですか? リヒトくん、何やっていたのかなぁ~」
「態々、夜中に出て行くなんて、娼館か? 娼館に行っていたんだな、あん!」
「酷いよ…理人お兄ちゃん、こんな恥ずかしい物我慢して着たのに…」
流石にあれ程した後に…あはははっそれは無いな。
それに俺が浮気などする筈ないじゃないか…5万人の命と引き換えにしても守りたい…そう思える程好きなんだからな…
悪魔に魂を売り飛ばしても守りたい…そう思っていたんだからな。
「ちょっと…ねぇ理人くん、何があったの…ゴメン私が言いすぎちゃったの」
「信頼している、信頼しているからなぁ…泣かないでくれ、頼むから…ああっもう、ほら」
「理人お兄ちゃん、本当に何があったの? そんな顔してたら、理人お兄ちゃんが泣くから、ひくっすんすん、私だって凄く悲しくなるよ」
「ゴメン、今は少しこうして居て欲しい…」
そう言うと俺は三人を抱きしめた。
自分でもどうして良いか解らない。
そんな俺を三人は抱きしめ返してくれて、優しく髪を撫でてくれた。
◆◆◆
気が付くともう朝になっていた。
あのまま俺は眠ってしまったようだ。
朝早くから通信水晶が輝いていた。
不味い…ガイアの方でなく教皇の方のだ。
「すみません、出るのが遅れて」
嘘だろう、教皇であるロマーニと大司教のローアン、いわば聖教国のトップ二人が水晶に映し出されている。
「よいよい、気にするでない…獅子奮迅の活躍をしたのだ疲れているだろう…四天王の一人デスラの討伐を祝いたく、こうして連絡した迄だ…しかもあの、デスラの正体がドラゴンゾンビとは思わなかった…そこでだ、理人殿には『ドラゴンズレイヤー』の称号と教会にある、もう一つの『聖剣デュラン』を褒美として渡す事が決まった、今日はその報告までじゃ」
「見ていた者から話は聞きました、何でも、あの古の勇者リヒト殿が使ったという『光の翼』を使われたとか…神々しかった、そういう報告が沢山来ています…領主からも『救って貰いありがとう』という感謝の手紙がきておりますぞ…そこで私の方からは教皇様と話し合い、かねてから理人殿が呼ばれている『英雄』それを正式に名乗る事の許可…あと、綺麗な令嬢を一人婚姻相手として派遣する事を決めましたぞ」
不味い、不味い、不味い…デスラより怖い…
「待って下さい! 私にはもう分不相応な妻が3人もおります、ですから謹んで」
そんなの受け入れたら、三人から何を言われるか解らない。
「理人殿…幾ら妻を娶ったとはいえ『男としてお辛い』でしょう? 神職者の私でも、貴方の今の状況はお辛いのが解ります、ガイア殿は妻こそおりませんがもう8人の子持ち、解りますぞ」
あれ…子供の人数が合わない…それに『妻こそおりません』そこが解らない。
「あの、ガイアはその…娼婦3人は側室にした筈ですが…」
「ああっ、その事でしたら…3人とも側室は辞退すると申し出がありましてな、今現在も仕えている方…えーとダークエルフの方は『愛人で良いわ』との事です、こちらに来られた方二人は『人間として尊敬出来ないから…側室は辞退します』と言われました、ああっしっかりと今後のフォローは国がしますからご安心下さい」
いや、他にも居たよな。
「国から派遣した令嬢の方々はどうしたんですか? まさか…」
「ハァ~、最初に派遣した令嬢たちは上位貴族の令嬢が多く、彼女達と親交を重ねております…追い返された者、妊娠した者両社とも『ガイア殿を毛嫌い』しております、「側室になるなら死んだ方がまし」とまで言う始末で、教皇様の遠縁でもある帝国の公爵令嬢は…『魔王を倒しても社交の場で地獄を見せてあげます』と高笑いして日々派閥を超えて話しまわってます…このままでは社交界にガイア殿が出てもダンスのパートナーにも困るかと思いますよ」
彼奴…なにやってんの!…チョチョリーナにリザベルにイザベルにまで嫌われたのか…
娼婦から身請けして嫌われるなんて普通は無いぞ。
「話は戻しますが…私には分不相応な妻が3人おりますから満足です」
娼館や風俗を除き、子供を作る=性処理のこの世界じゃ、あそこ迄過激が前技はないだろうから理解できないかも知れないが…充分満足だ。
「確かに、私も教皇様も神職者ですが、気を使わないで良いのです。あのガイア殿の色ボケ…こほんっ、見れば、理人殿がさぞ辛いのは解りますぞ…理人殿はガイア殿と違う、誠実な方です、故に私も本腰を入れ探しました、綺麗なだけじゃない『絶対に理人殿が好きになる方で…3人とも揉めない方』を用意しました」
そんなの心辺りは無いぞ…3人以外に…どう考えても居ないよな。
「そんな人ならガイアに…」
「この話は理人様だけの話です…ですが揉めると困るのでガイア殿にも年齢だけ伝えましたよ、そしたら『ババア』は要らないからと言ってましたからご安心を…このローアンが理人殿に喜ばれるように動いたのです…絶対に後悔させませんから、ぜひお娶り下さい」
「これはサプライズだから…詳しくは話せんが、このロマーニもこの女性を気に入る事は保証する受けて貰えぬか?」
これほぼパワハラだな、だけど断れないな…
「この理人、謹んでお受けいたします」
結局、正体不明の令嬢を1人受け入れる事になった。
◆◆◆
「理人くん、反省していますか?」
「教皇様に逆らえ…」
「愛があれば大丈夫だ、理人なら断れたはずだ」
さっきの話を途中から聞かれたみたいだ。
無理だよ…相手は教皇とローアン大司教なんだからな…
君たちと違って四職じゃないんだから、本来は口すらきけない程偉い人なんだぞ…
「来るなら仕方ないけど…理人お兄ちゃん、私きっと優しく出来ないよ! ある日突然泡とかふいて死んじゃうかもよ」
「その冗談はやめてくれ、賢者のリタなら本当にできるんだから…」
「出来るんじゃないよ? やるんだよお兄ちゃん」
怖い、怖すぎる…
「その前に…なんで、理人くんにそんな話が来たの?」
「そう言えば、他にも褒賞みたいな話も聞いたが」
「私達…何も功績あげていないよね」
言いたくないな…これは嘘の話だ…
だがデスラ―ドは記憶の操作まで出来るのか?
なんだか話が違いすぎるな…
「デスラを討伐したから…」
「「「えっ」」」
驚くのは当たり前だ…これ自体、本当は嘘だ。
話していて…辛いな。
「デスラを単独討伐したから…褒賞を貰ったんだ…これからギルドに言ってくる」
「ちょっと待って 理人くん」
「おい、冗談だよな」
「理人お兄ちゃん」
俺は三人と一緒にギルドへ向かった。
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