第34話 旅立ち(第一部 完)

何事もやりすぎは良くない。


この程度の仕返しで充分だ。


良く恋人が奪われたからって凄まじい『ざまぁ』という仕返しをする話を小説で目にするが…あれ本当に意味があるのか?


そう思うんだ、復讐って思ったより労力を使うんだぜ。


しかも、人を追いやればそいつは一生恨み続ける。


今度は自分が『仕返しされる側』になりかねない。


危なくて仕方ないだろう。



ガイアは気が付いていないけど、ガイアはもう沢山の物を失った。


あのままのガイアが頑張っていれば、恐らくガイアは魔王討伐後、どこかの国のお姫様を妻に貰い、王族になった可能性もあった。


王配にすらなり得る可能性もあった。


王族を妻に持ち側室を迎えて素晴らしい生活が待っていた筈だ。


それがもう…恐らくは魔王を倒しても貴族、それも中級以下の可能性が高い。


良い縁談が無くなるという事はそう言うことだ。


最初に来た、ガイアハーレムの6人は教皇様や王様帝王様が厳選した女性だ…恐らくは貴族、それも話した感じでは、かなり上の位の令嬢の可能性が高い…その令嬢に『恥をかかせて恨まれた』以上はこれから社交界にはさぞかし、悪い噂が飛び交うだろう。


それにその親族も勇者のガイアには流石に何かしはしないだろうが、悪い印象しかなくなるだろう。


勇者大好き教皇様は兎も角、帝王様や王様も今回の事で幻滅したに違いない…本当の令嬢より『娼婦』の様な女性を選んだんだ仕方ないだろうし、国のお金で娼婦や宝石を買い漁っているんだ…うん仕方ないな。


そして…ガイアは男の喜びを本当の意味で知る事はない。


肉体関係はキャッチボールだと俺は思っている。


一方的に求めるだけで、自分から何もしなければ『本当の快感も愛も得られない』


少なくとも俺は、そう思うんだ、もうあいつは『女を喜ばせる喜び』をきっと生涯知らずに終わる気がする。



◆◆◆


此処迄しておいてなんだが…俺は誰からも責められないだろう?


だって、ガイアが『女が欲しい』と言えば『女を世話した』


欲しいであろう『お金』も『宝石』何でも手に入れる方法を与えた。


前世でいうなら『無限に使えるブラックカード』『美女がよりどりみどり』そんなリア充にしてあげたんだぜ。


しかも俺の苦労は誰もが知っているし、何よりガイア自身が知っているから、文句は恐らく誰からも出ない筈だ。



ガイア…楽しいか?


凄く楽しいよな…


だがな…その虚しさにいつか気が付く。


全て手に入れた様な高揚感が嘘だったってな。


今のお前はまるで前世の俺だ。


それが5年後なのか10年後なのか、はたまた30年後なのか解らない。


その時が来たら、手を貸してやるぜ。


俺はこれでも『お前を親友』そう思っているからな。



◆◆◆


「なにか考え事?」


「どうしたんだ、深刻な顔をして」


「私で良ければ、相談に乗るよ」


あの後、イザベルとジザベルに子供が出来たら、教皇様に引き渡せるという話をしたら、凄く喜ばれた。


その報酬としてお金をくれると言ったが辞退。


そうしたら、別荘をくれる事になった。


貸すでなく『くれる』のだ。


場所はガルイサム…高級別荘地で温泉があり景色も良く、海が近くて、食べ物も美味い。


「いや、これからバカンスだろう? 凄く楽しみなんだ」


「私だって初めてだからうん、楽しみだよ」


「まさか、まだ魔王討伐中なのにバカンスなんて出来るとは思わなかったな」


「海の水ってしょっぱいんだよね」


「ああっ、俺も楽しみだ」


今度こそ、俺は約束のバカンスに出掛けた。


エルフだってダークエルフだって買う事はお金さえあれば買える。


だが、幼馴染は絶対に買えない。


例えどんなであろうと傍にいるだけで幸せだ。


今の俺は…うん凄く幸せなんだ。


(第一部 完)


※次の話で閑話を書きます。

 何故理人がこんな行動をしてこんな感じになったのか、ある意味回答が次の閑話です。

その次は、第二部のスタートです。

此処迄応援、本当にありがとうございました。



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