第32話 ホワイトウイング
「皆には迷惑かけたな」
彼女達が帰っていった翌日、俺は仲間に謝った。
一晩中あの日寄り添って話をしてくれていた。
今回の件が大して問題にならなかったのは彼女達の功績だ。
「あれは理人が悪いんじゃないよ、ガイアが悪いんだから気にしないでよいわ」
「そうだよあの鬼畜、勇者じゃ無かったら斬り殺してやる」
「ガイアは勇者かも知れないけど、女の敵、今思えばなんで私あんなの好きだったんだろう…意味わかんない」
まぁ、『処女を捧げよう』とした令嬢を保護した時に、傷ついて泣いて話す令嬢の様子を見ればこうなるな。
「それでな、この間話したバカンスはゴメン暫く延期だ、それと一点ガイアに許可を貰ったから、これから俺たちは別動隊になった、だから新しくマリアを中心にパーティを組もうと思うんだがどうかな?」
「バカンスは仕方ないわよ…まぁ元から難しいと思っていたから大丈夫よ…だけどパーティを組みなおすならリーダーは理人が良いわ」
「そうだな、理人中心にこのパーティは纏まっているからそれが良いだろう」
「そうだよ…それでパーティの名前は決まっているの?」
「うん、皆が嫌じゃ無かったら『ホワイトウイング』にしようと思っているんだ」
「ホワイトウイングですか?」
「名前に意味があるのか? なんかこうイメージが掴めないな」
「何か由来があるの?」
「皆のイメージが『天使』だから天使と言えば白い羽、元のブラックウイングから考えたんだ…駄目かな?」
「うふふっ全く理人はそんな事真顔でいうんだからもう…うん良い名前ね」
「確かにうちは理人以外は女だから、うんそれでいいと思う、少し照れるけどなぁ」
「理人のイメージがそれなら、私も賛成」
女ばかり三人で聖女もいるから白のイメージは合うと思う。
「それじゃ後で冒険者ギルドで登録しなおしてガイアに報告してくるな」
「手数ばかりかけて申し訳ないわ」
「私もすまないな」
「ゴメン」
「まぁ、あんな事があって更にこれだ、顔を見たくない気持ちも解るから気にしないで良いよ、あと少しでガイア問題も解決するから、そうしたらバカンスに出掛けよう…そのまま我々は別動隊だから、そうだな南の方に討伐に行くか?」
「良いんですか?」
「それで大丈夫なのか?」
「平気なの?」
「ちゃんと別動隊になるんだから問題は無いよ、ガイアも俺たちも普通の魔族なら自分達で狩れるから普段はそれで十分だ、幹部クラスの上位…しいて言うなら四天王クラスの討伐や最終局面の魔王討伐の時共闘すれば良いだけだ」
「それ凄く良いわ…もうガイアと関わらずに済むなんて、うん最高」
「まさか、あそこ迄クズだったとは…あの泣いている令嬢は下手したら私達の姿だった、あんな奴とはもう一緒に居たくないから助かった」
「ハァ~百年の恋ももう冷めたわ、泣いている令嬢を見たら、本当に付き合わなくて良かったよ…なんだか全部任せてごめんね」
「それじゃ行ってくる」
俺はそのまま冒険者ギルドへと出かけて行った。
◆◆◆
「別動隊の登録ですか? 勿論可能です」
前世とは何もかもが違う。
恐らく前の世界なら色々と手続きが大変なのだろうが…
結構すんなりした物だった。
もしかしたら、手続きが難しいかと思っていたが、俺たちが勇者パーティで信頼があるから全て省略可能だという事だった。
「それじゃ…パーティ名はホワイトウイング、リーダーは理人様と、これで終わりました…しかし理人様は凄く面倒見が良いですね…抜ければ直ぐに幸せに成れるのに…」
「そんな訳ありませんよ」
「そんな事ありません、天下のS級ランクで紐無し…家庭的な子が良いならメイドさん、共に戦いたいなら冒険者幾らでもよりどりみどりですよ」
「そうですかね…」
「そうですよ、出来る女が良いなら『私』なんてどうですか? 貴方好みに染まりますよ!」
確かに俺が人気があるのは解っている。
だが、もう俺は二度と同じ過ちを起こさない。
そう決めた。
「嬉しいですが、そんな冗談に引っかかりませんよ…それじゃ」
「そんな」
彼女は受付嬢、悪評がたっちゃ可哀そうだ…冗談にしてあげるのが一番だ。
◆◆◆
「ハァハァ、理人待たせたな」
童貞卒業したばかりでやりたい盛り。
とはいえ、もう昼だ…よく飽きないな。
まぁ、あれだけの美女に求められていたらそうなるか?
「それでどうした?」
「ああっ、女達6人は無事返した…次の美女は直ぐに選定して送ってくれるそうだ」
「そうか、それは任せるから報告は無用だ」
「そうか…俺とお前の付き合いもかなり長くな」
「どうしたんだ一体」
「今度来る6人をお前が気に入った時点で…少し距離をとろうと思う…前から少し話していた別動隊を正式にする事にしたんだがどうだろうか?」
「ああっ、俺とお前達が別行動するって奴だろう? 大物をやる時以外は確かにそれで良いぜ…まぁその時はかなり先だな」
俺たちはまだ勇者パーティーとしては未熟な状態だ。
RPGで言うなら魔王の討伐がレベル30以上で出来るゲームでレベル10位、まだまだ序盤だ。
そう考えたら1年位は別行動になりそうだ。
「俺は言い方が悪いがガイアの事を弟みたいに思っていた」
「まぁお前が言うならそうなのだろうな? 小さい頃は助けて貰ったから否定はしないぞ」
「ああっ、今回、ガイアは莫大なお金に自由に沢山の女を得る権利を俺が提案して通した…それに権力もある程度行使できるようになったと思う」
「確かにそうだな…そうだ褒美として欲しい物があるか? 何でも買ってやるぞ」
「いやそう言うのじゃない、もうガイアは自分で欲しい物を何でも手に入れられる…だからもう俺は弟とは思わない、1人の男、まぁ本当の意味で親友に戻ろうと思うんだ」
「確かに、もう俺はお前に頼る事は少ないだろう…そうだな、だが親友だとは思っている、何か困った事があれば今度はお前が言ってこい、力になるからな」
なんだ…いまガイアが随分真面に思えたぞ。
「ありがとうな…それでガイアに聞きたいが子供は好きか?」
「なんだ、お前知っているだろう」
「ああっ確かに嫌いなのは知っている…聞きたいのは自分の子供の事だ」
「ああっ多分、同じだと思う」
「そうか、それじゃ少しイザベルとジザベル、チョチョリーナともう一人はえーと」
「リナだ」
「その4人と子供について取り決めをしたいんだが良いか?」
「どうしたんだ?」
「子供が出来たら、流石に旅は難しいだろう? 妊娠したら教皇様の方で一旦引き取って出産後ガイアに戻す…そういう事を考えているんだ、教皇様の好意で子供も引き取っても良いらしい…どうだ?」
「ああっそう言うことか? なら構わねーよ…ただ短めにな」
「ああっ解っているさ」
ぶれないなガイアは
◆◆◆
「えーと子供ですか?」
「そう子供」
俺は子供をどうしたいか聞いてみた。
産んで育てたいならそれも良し…母子の情を引き裂く必要は無い。
だが、昔からガイアは子供が嫌いだ。
恐らく、子育てには参加しない。
赤ん坊が泣いていたら舌打ちする位だからな。
「私たちは娼婦ですから子供は欲しくありません、そうよねジザベル」
「そうね、私も欲しくはないですね」
「ならば…」
俺は子供が出来たら聖教国に譲ってはどうかと提案した。
莫大な一時金にその後の保証を教皇自らがしてくれる事を条件にした。
「妊娠期間中の保証もしてくれるのですかね」
「勿論、聖教国で出産までの期間もしっかり面倒を見てくれる」
「それなら私達二人はその話に乗るわ」
「私も」
「それでチョチョリーナさんは」
「私は解りません、赤ちゃんを育てたい気持ちもあれば、手放したい気持ちもあります」
「今決まらないなら、その時が来たら考えれば良いよ」
「そうですか? それならそれでお願い致します」
「二人はそれで良いのか?」
「「はい」」
「それじゃ手続きはこちらでするから」
教皇様にこの事を話して、後は…6人が来たら、ようやく1段落つくな。
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