第29話 応援している
俺はお金を貰ってチョチョリーナを身請けしに行ってきた。
一応、イザベルとリザベルの娼館の主に話をし、手紙を書いて貰い持参した。
その際に謝礼として金貨1枚払った。
これは自腹だ。
そして今…王国ホテルのイザベル達の部屋に来た。
「「理人様」」
なんだ、この部屋…特殊な香りが漂っているな。
五感を刺激し高揚感を煽るこれは…
「理人様、出た方が良いですよ…これは媚薬を香に混ぜた物です」
「その方が良さそうだな…ガイアがぼうっとしているのはこのせいか」
「此処じゃ不味いから、ロビーに行こうか?」
「そうですね」
「あははっそうしましょう?」
◆◆◆
二人は俺に咎められるのか気にしているのか、少ししょげている。
「イザベルにジザベル…何を勘違いしているのか解らないが、俺はお前達の味方だ、それを行う事でガイアが楽しめるならジャンジャンやって良いぞ」
「あの宜しんですか?」
「てっきり怒られると思っていたのですが」
「そんな事して大丈夫なのですか?」
まぁ普通は怒るな。
「だって三人は側室だし、勇者を楽しませるのは当たり前だろう? 君たちはその道のプロなんだから、ありとあらゆるテクニックを使って勇者を楽しませる…悪い事があるか大いにやりたまえ」
「本当に良いの?」
「流石に、媚薬や麻薬の類はまずいと思ったんだけど…助かります」
「私は使った事ないのですが…」
「愛とは手に入れるのはそう難しい事じゃない…だが維持する事は困難だ…いつまでも飽きられず、愛される、その為にそれが必要ならやるべきだ」
恋愛はスポーツでないし、騎士道なんて関係ない。
卑怯な事をしようが手に入れた人間が勝ちだ。
前の世界とは違いこの世界は麻薬は嗜好品。
別に犯罪じゃない。
こう言った努力を俺は否定したくない。
「あの…まさかご理解頂けるとは思いませんでした」
「本当に…」
「それが悪い事でないなら、私もしてみます」
「ああっ、これから先、ガイアはハーレムを持つ…恐らくはその中で三人が残れるならやがては古参になるんだ、正室を除けばハーレムのリーダーになる存在だ、スタートこそ同じだがそれは権力を握る事につながる」
「そんな大きな話なんですか?」
「凄い話ですね」
「娼婦の私にそれができるのでしょうか?」
自分が既に『凄い』という事に気が付いてないのか?
「既に君たちは選ばれた女性だ…何しろ、貴族の令嬢を差し置いて勇者の側室なんだからな…俺は恋愛とは違う意味で君たちが好きだ、ある意味、似ているからな」
「「「似ている」」」
「そうだろう? やり方は違うが一生懸命尽くす、同じだよそこに貴賎は無いと俺は思っている…これから加わる令嬢は身分も容姿も良い女ばかりだ、そんな中で君たちが勝つ姿、それがみたいんだ、応援しているよ」
「「「理人様」」」
「あと、今のガイアは湯水のようにお金が使える…美味くねだれば何でも買って貰えるはずだ…モチベーションが上がるだろう? これは此処だけの話だが、もし辛い娼婦の時代を過ごした仲間がいるなら買って貰って側室に加える事も可能だ…頑張れよ」
「あの…本当に良いんですか?」
「凄い話ですね」
「そう言えば、私『側室』なんですね…」
「ああっ、そうだ、ただ勿論これは此処だけの話だからな…心から応援しているぞ」
「「「ありがとうございます」」」
本気になった一流の娼婦…凄く面白いな。
◆◆◆
「ただいま~」
「「「おかえりなさい」」」
風呂も沸いて無いし食事も無い…それでも誰かが家で待っていてくれる…それは案外嬉しい。
「皆、ご飯はもう食べたよな」
「いえ、食べてません…買ってきたものですが一緒に食べましょう」
「そうだな、まぁ待っていたんだ」
「一緒に食べた方が美味しいもん」
食事は無い…そう思っていたんだけど、あるんだ。
「それじゃ、お茶を入れるから一緒に食べよう」
「「「はい」」」
あ~癒されるな…これで充分だ。
食事を食べながら話をした。
「実はな、その件なんだが…恐らく早いうちに傷ついた女の子を保護しなくちゃなくなるから…フォローして欲しい」
「あのガイアが何かするのですか?」
「あいつが一体何をすると言うんだ」
「それは良いけど…どういう事なの」
「いや、まだ確定して無いけど、何かありそうな予感があるんだ」
「理人の予感は結構当たるのよね」
「そうだな、留めておくようにするよ」
「慰めれば良いんだよね」
「ああっ、本当に済まないが何かあったら宜しく頼むな」
そんな俺の予想通り…ガイアとの通信水晶が光輝いた。
まさか、今日の今日でもう起きるとは思わなかった。
早いな。
直ぐに俺は自分のホテルの3人部屋を2つ予約して王国ホテルへ向かった。
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