第27話 ガイアにサプライズ②
疲れた、本当に疲れた…だけど…これで眠れる。
2時30分にモーニングコールをお願いしたから大丈夫だ。
「ふぁ~あ、良く寝た」
まずはフロントに行きあらかじめ、ガルガリ(宝石商の名前)に用意して貰った馬車がついているか確認した。
流石、王室ご用達だけの事はある、貴族が乗るような立派な馬車だ。
「ガイア、起きているか?」
「ああっ、流石にちゃんと準備しているぞ」
聖剣を腰に差し、軽装鎧を身に着けていた。
この恰好のガイアは確かにカッコ良い。
中身を知らなければだが…
「それじゃ行くか?」
「ああっ…」
◆◆◆
「理人、何だこの馬車は? すげーな」
これは貴族が乗るような高級な馬車だ。
マリア達も驚いたんだから、ガイアも驚くだろう。
ガイアが驚いている間に御者が目の前に絨毯を敷いた。
「ガイアは勇者何だぜ、これ位で驚く事ないだろう? さぁ行くぞ」
「ああっ…なぁ、こういうのにも、これから乗れるのか? 」
俺は前世で友人のソアラに乗った時に感動した。
それに近い物があるのかも知れない。
「その気になれば乗れる…それはガイア次第だ」
「本当にすげーな」
まるで子供の様にはしゃぐガイアを連れて俺は宝石商に向かった。
◆◆◆
「いらっしゃいませ理人様、準備は整っております」
「女性たちは?」
「先にお通しして、ブッフェを楽しんで頂いております」
「それじゃ、そのまま今しばらく料理を楽しんで貰っていて欲しい…所で送ってきて下さった方は?」
「私どもが受け取り先と解り、安心されて帰られました、流石に空竜艇を長時間止め置く事は無理がございます」
確かに世界に一台…大型の空竜に部屋を搭載した乗り物。
それが長い間此処にあったら目立つだろうな。
「そうですか、何か書類を受け取りませんでしたか?」
「はい、此処に」
俺は貰った書類の封筒の封を開けた。
ちゃんと約束の物が入っている…これがガイアへのサプライズ第一段だ。
「ガイア、まずは買い物からだ『勇者の買い物』の仕方をこれから教えるから、ちょっと時間をくれ」
「解ったが、俺の買い物の仕方?」
「そう、ガイアの買い物の仕方だ…あのリヒャールさん、私が妻に送ったペンダントクラスのペンダントを…9つ用意して下さい! 勿論、買うのは勇者ガイアだ前に話したVIP待遇を頼む」
そう言えば、名前も聞いていなかったな、失礼な事をした。
名札をつけていてくれて助かった。
よく見たら役職も書いてある。
しかも彼…支店長、此処のトップなのか…
「はい、心得ております」
「おい、俺は金を持っていないぞ…大丈夫なのか?」
ああっ大丈夫だよ、たった今からな。
「ああっ、もうお前は無限にお金が使える魔法の道具…は冗談だが、何でも買える道具が手に入るんだ気にするな」
「それになんで9つなんだ…2つでいいんだ」
「馬鹿だな…二人にプラスしてチョチョリーナの分で3つは必要だろう? 後の6つは…この後のサプライズ絡みだ」
「まぁ良い、理人の事だから任せた」
その後、ガイアと共に、あらかじめ話していたVIPルームに案内された。
すぐに高級なシャンパンが用意された、ソファーも豪華だ。
「ああっ任された…それじゃ行くぞ…ブラックカードじゃなくてブラック小切手ぇぇぇぇぇぇー――っ」
「はぁ~お前頭可笑しくなったか? そんなメモ帳なんて出して」
「これはメモ帳なんかじゃ無い…うちでの小槌だ」
「なんだ、小槌?」
「あぁ、この世界にこの話は無かったな…これはな俺が考えた小切手だ、このメモ帳には聖教国の透かしが入っていて…簡単に言えばお金の代わりになる」
本当は『ブラックカード』みたいな物を作りたかったが技術的に難しかった。
そこで出来たのがこの『ブラック小切手』だ。
小切手も一部の商人が使っているだけでこの世界ではメジャーで無かった。
だから、教皇様に相談して作った。
この小切手と勇者の証しの冒険者証明で何でも買い物が出来るようにした。
しかも、そのお金の請求は聖教国に行き…一旦は聖教国で支払い、その後で三国(王国 聖教国 帝国)で割って負担する。
「まさか冗談だろう?」
ガイアがそう言うのも当たり前だ。
前の世界では当たり前だけど…この世界では余り知られてない方法だ。
これはもう一つのサプライズと抱き合わせで話を続けてきた結果、実現した事だ。
ただこのブラック小切手…請求書が聖教国の中央教会に一旦届く。
つまり『何に使ったか 教皇様にはまるわかり』そしてお金を負担するのだから、帝王様に王様にも全部知られてしまう。
「本当だよ! ガイアは勇者なんだ! 世界の希望なんだから、国がガイアの為にお金を使うのが普通だろう? これからは何でも欲しい物は手に入るぞ…ただ気を付けて使えよ、何でも買えるからって城とか買うなよ」
「ああっ、解っている…凄いな!」
「それじゃ、これから練習してみようか?」
「練習?」
「ああっ早速、プレゼントの宝石を買ってみようぜ」
「そうだな」
◆◆◆
「ガイア様、理人様ご用意が出来ました…デザインや石はまちまちですが、理人様が奥様にご用意したのと同ランクのペンダントをお持ちしました」
「さぁ…ガイア好きな奴を選べ」
「あのさ…俺こう言うの解らないんだ、理人に任せてよいか?」
好きな女へのプレゼント…人に任せるかね。
「そう言うことはリヒャールさんに相談すると良いよ、なんてったって此処ガルガリの一店舗を任せられた責任者なんだから」
「そうか」
「だが今日は俺が手伝ってやるよ…贈る相手はダークエルフ2人にエルフ1人、あとの6人は、もうリヒャールさんは会っていますよね? それぞれに似合いそうなのを…そうだガイアにも一つ選んでくれませんか?」
「俺も必要だと思うか?」
「ガイアは二枚目だから似合いそうだぞ」
「そうか…そう言うなら貰おうか?」
「畏まりました」
流石は支配人を任されるだけの事はある。
それぞれのイメージにあったペンダント10個を選んでくれた。
「それじゃリヒャールさん、早速これで払わせて貰って構いませんか?」
「ハイ構いません」
「それで幾らですか?」
「どのペンダントも理人様が奥様に送られたペンダントと同じ金額で金貨30枚(約300万円)ですそれが10ですので金貨300枚になります」
「それじゃ…練習してみようか? まずこの欄に金額を書いて…サインを書く」
俺はブラック小切手の使い方をガイアに教えた。
「これで良いのか?」
「ああっ大丈夫だ…それをお金を払う相手に見せて渡す」
「こうか?」
「はい確かに受け取りました」
「これで終わりだ…簡単だろう?」
「確かに簡単だな」
「本当は冒険者証みたいなカードにしたかったが出来なかったんだ…まぁ、何回か使っていけば慣れるさ」
「そうだな」
「多分3か月もすればどこでも使えるようになると思うが…今の所は此処ガルガリと王国ホテル位しか使えない、だから大きな買い物は、このシステムが浸透するまで此処、ガルガリを通してくれ…暫くはガイアのコンセルジュをリヒャールさんに頼んで良いでしょうか?」
「コンセルジュ?とは何でしょうか?」
あれ、もしかしてこの世界には無いのか?
「ガイアの欲しい物を探したり、相談にのる仕事です…折角ブラック小切手があっても今の所浸透してないから使えないお店ばかりです。これが浸透するまでの間、ガイアの買い物のお金のたてかえをお願いしたいのですが大丈夫ですか? 勿論手数料を貰って頂いて構いません」
「それならお受けいたします」
「早速で申し訳ないですが…対面式後…たてかえをお願い致します」
「良いですよ…何を買われるのですか」
「チョチョリーナという娼婦です」
「畏まりました」
「どうだ、今回の顔合わせが終わったら、これで買いに行けるよ」
「ああっありがとう」
「ガイア、感謝はまだ早い…次が本命だ」
「まだ何かあるのか…理人 ありがとうな」
「良いって親友だろう?」
次が…俺の本命だ。
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