第18話 理人のいない1週間 その①
夢のような1日が終わり…宿に帰った時、待っていたのはガイアでした。
「お前ら、遅せーんだよ、いつまで俺を待たせる気なんだ!」
私達はガイアと何か約束していたんでしょうか?
私の記憶にはありません。
「ガイア、何か約束していましたか? 私の記憶には無いのですが」
「私も無いぞ!」
「私も無いよ」
『チェッ』
今、ガイア、舌打ちをしましたわね、そうとう機嫌が悪そうですね。
「別に約束なんてしてねーよ! 俺はこれから大切な用事があるのに時間取らされて頭に来ているだけだ…連絡は『理人は指名依頼を受けて1週間位帰らない』以上だ」
「理人が1週間居ないのですか?」
「その依頼手伝った方が良いんじゃないのか?」
「危ない話じゃ無いの」
理人だってS級冒険者、指名依頼という事はかなり難しいに決まっています。
私達はお金は手に入らないですが、危ないなら手伝った方が良いに決まっています。
「はぁ? めんどくせーわ、いちいち説明なんてする必要はねーだろう! 『冒険者だから守秘義務があるんだろうよ』俺も知らねーよ、それじゃあな」
「待って下さい、ガイアは何処に行くんですか、理人が1週間も居ないなら、少し話しませんか? お昼も近いし、そうですね何処かお店にでも…」
《ハァ~此奴本当にクズだな》
「お前らやっぱり使えねーよ、理人が居ないなら普通の女なら『私が何か作ろうか?』そう言うよな? それがお店で食べる? なぁ女が3人も居て誰も飯もつくれないんだよな? 本当に最低だな」
「この宿屋はキッチンが付いてないぞ、だからそれは出来ないだろう?」
「そうよ」
「あのよ、だったらキッチンがあれば、お前たちは料理が出来るって言うのかよ? 理人みたいによ」
「「「それは」」」
《出来ねーの言うんじゃねーよ》
「出来ねーよな…本当にお前達は女子力無さすぎだわ、終わっているよ、それじゃーな」
「ちょっと待て、理人が居ないなら当分の生活をどうするか? 考えなきゃ駄目だろうが、何が気に食わないのか解らないが、少しは冷静に…なっ」
「嘘でしょう?」
「嘘だよね」
エルザがガイアの手を掴んだ瞬間気が付いてしまいました。
『ガイアの薬指に指輪が無い』その事に…
「ガイア、何で指輪がないの」
「よく考えてみたら、親友の恋人をとっちまうのは目覚めが悪い、だからリタ、お前との話は白紙だ、そこから考えたんだが、なぁマリアにエルザ…お前達との関係も男女の関係じゃない事に気が付いた、だから二人との仲も白紙だ」
「どういう事なのよ…私は長い付き合いの中でこういう関係になったんでしょう! リタは兎も角、私は納得いかないわ」
「冗談なんだろう? 可笑しいだろうがー――っ、私から告白したんじゃ無い、お前から告白してきたんだろうが」
「私だって…そうじゃない」
「ああっ、そうだ…俺も悪いのかも知れないが、本当に悪いのはお前達だ、確かにパーティメンバーとしては優秀だが、女としてはどうだ!家事も真面に出来ない、クズ女じゃないか? お前達程何も出来ない女なんて他に居ないだろう?」
「仕方ないじゃないか! 私は剣聖、マリアは聖女だ、その為の修行をして、そして旅に出た…他の女が親から家事を学ぶ時間に修行していたんだぞ、出来なくて当たり前だ」
「そうよ…私は近くの教会で朝から晩まで回復魔法を学んでいたわ」
「私だって似たようなもんだよ...」
私達三人は家事なんて学ぶ時間が無かったわ。
仕方ないじゃない…
「だから、お前達はクズなんだよ! 理人を見ろよ! 俺たちと旅をしながら、自分の食い扶持は自分で稼いでいるぜ、その上で家事は完璧にこなし、俺たちの雑用も一手に引き受けているじゃないか? なぁ、すぐ傍にちゃんとやれている奴がいる以上、そんなのは只の言い訳じゃないか? 俺はあいつの事は親友だと思うぜ! 此処迄してくれたんだ『友情』を感じるな! だが、お前達はどうだ? 『愛している』っていうなら、それ以上の事が出来たはずだ…だからクズなんだよ! 恋人なら理人以上の事してみろ!出来ないだろうがクズ!」
「出来ないわ、出来るわけないじゃない」
理人だっていきなり全部で来たわけじゃ無いわ。
努力して出来るように…ああっそうか…
理人は私達の為に頑張っていたんだ。
「そんな事言うならガイアはなんだ! こんな露店の安物の指輪で口説いてきただろうが、しかもこれは国のお金だろうがっ、理人がくれたネックレスやドレスは自分が稼いだ金で用意してくれた高級品だ、全然違うだろう…ようく解った『もうこんな物いらない』 ほら返すよ」
「駄目、エルザー-っ」
「そうかよ、それじゃエルザはそれで良いんだな、解った…それでお前達は」
「そうね、私は要らないわ、返すわ」
エルザが返すなら、私も返すべきだわ。
だけど、リタはもう後戻りが出来ない。
「後はリタだけだな…返せよ」
「いや…ガイアが口説いてきたんじゃない! 私は、もう引き戻せないもん」
「チビ野郎! もう良いわ、そんな安物くれてやるよ、ただ、それは別になんの価値も無い、ただの記念品だ…それじゃあな!」
「うっうっうわぁぁぁぁぁぁー―――ん」
「ガイア、お前何処に行くんだ!」
「いう必要ねーだろう! 恋人でも婚約者でもねーんだからな…もうお前達とは魔王討伐以外で関わらねーからな…とりあえず理人が戻る7日後迄会う気がねーから、それじゃ行くからな」
「勝手にすれば良いわ」
ガイアの様子が余りに可笑しい。
まさか、魔族に何かされたのかもしれないわ…調べないと不味いわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます