第17話 痴女じゃない
「あのモーニングブッフェ、凄美味しかったわね」
「私は体を動かすから凄くお腹が減るんだ、好きな物を自由に選べて食べ放題って言うのも凄く良い」
「うん、スイーツまであって最高だね」
「そうね…」
夢の様な時間はもう終わり。
まるで魔法に掛けられた様な1日だったわ。
それは私だけでなく二人も同じように感じていたみたいです。
帰りの馬車も理人は用意してくれたみたいで、高級な馬車を用意してくれていました。
ですが、そこに理人は居ませんでした。
「あの理人は居ないんですか?」
「はい、御者と馬車を頼まれまして、丁重に頼むとの依頼でした」
「そうですか?」
此処迄して貰ったのだからお礼位は言いたかったのですが…
それ以上に『理人』が居ない事が凄く寂しく感じてしまいました。
「おい、とりあえず馬車に乗ろうぜ、御者さんが困っているぜ」
「そうね」
「うん」
◆◆◆
「マリアにリタ、寝ている時に考えていたんだが『何で理人』を泊まらせなかったんだ? 別に一緒で良かったんじゃねーの」
「普通男女で一緒に泊まっちゃ不味いわ、常識でしょう?」
「そうだよ、これだから野蛮人って呼ばれるんだよエルザは」
確かに普通ならそうだけどよ…うちは違うだろう。
「あのよ…私ら元から常識なんて無いんじゃねーの? だってよ、若い男によ、下着まで洗わせているんだぜ、理人を男だって認識しちまったから思うんだが、狩りや戦闘のあとなんて汗でべっちゃりしているよな? どうだ?」
「あの…そうね、確かにそうだわ」
「うん」
「それによ…マリアやリタは長く歩いた後は理人に足のマッサージをさせていたよな? 結構太腿近く、際どい所迄触らせていたよな?」
「ええっ、そうね」
「ちょっと恥ずかしいけど、そうだけど?」
「他にも髪を洗ってとかして貰ったり、なんなら野営の時にトイレの際に見張って貰った事もある?」
「さっきから何が言いたいの?恥ずかしい事ばかり思い出させて」
「そうだよ、本当に恥ずかしいよ」
「私が言いたいのは3つある!1つ目は 『理人は良い奴だから絶対に私達を襲わない』そうだろう? もしその気ならもうとっくに何かされている筈だ」
「確かに」
「そうだよね」
「2つ目は、私たちと理人の関係は同棲に近いと思うんだがどうだろうか? 宿は別だが、テントは別だが野営の時は一緒だ、飯も一緒だしトイレの番までさせているんだぞ、私はこの環境は同棲だと思うが違うのか?」
「そう言われてしまえば身も蓋もないわね」
「一緒に暮らしているよね…それがどうしたの?」
無自覚は怖いな。
昨日マリアが寝ても寝付けず思ったんだ。
絶対にそうだ…
「これは私もショックだったが…私たちは痴女なのではないか?」
「ハァ~何言っているのかしら? 先の2つは納得いくけど、そんな訳ないわ、私は聖女なのよそんな訳ないわ」
「私だって違うわ、大体ビッチなんていうけど経験がない私が痴女だビッチだ言われるのがおかしいのよ」
「あのよ、言わせて貰うけど! 生なましいから余り口に出したくないけどよ、つき合っても無い男に汚れた下着を洗わせてだ、同性の仲間が居るのに『眠いのを理由に断られる』からと若い男にトイレにつき合わせる…挙句の果てに『歩いて疲れた、討伐で疲れた』と言ってマッサージさせているよな? 『結婚まで指1本触れさせない』なんて乙女の言葉にあるが…自分の体を見ながら思ったんだが、胸と穴その物以外、全部自分から触らせてるぞ? これって痴女みたいじゃないか? それにつきあいが長いから結構裸も見せている気がするんだが、どう思う」
「ああっ、そう言われてしまえばかなり破廉恥に思えてきましたわ」
「ううっそうだよ、だけど、それを何で今更いうの」
ハァ~気が付いてないんだな。
「『絶対に襲わない男』『此処迄、既に許してしまっている男』だったら、一緒に泊まっても良かったんじゃないかな? そう思っただけだよ」
「ええっそうでっしたわね」
「言われてみれば、一緒に泊まっても良かったのかも」
朝起きた時に私は思ってしまった。
『理人が一緒ならもっと楽しかった』のかも知れないと。
「そうだろう?これも理人の思いで作りの一つなら乳位揉ませてやっても良かったんじゃねーのかな」
「はっ馬鹿じゃないの? 折角しみじみ話を聞いていたのに、馬鹿ですか?台無しだわ」
「エルザは本物の痴女だよ」
「違う…此処迄して貰った、お礼にその位までなら…」
「「もう、その話は終わり」」
「解ったよ」
私は『好き嫌い』の前に理人には借りがありすぎる気がするんだ。
借りを返す為に胸位なら揉ませてやっても良いんじゃないか?
そう思ったんだが…可笑しいのか?
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