第16話 竜
幾らなんでもこれは無いだろう?
大型だなんて情報違いも良い所だ…こんな奴だれが倒すんだよ。
貴族が住む館並みの大きさがある。
此奴が魔王の正体だと言っても信じられる位だ。
此奴、上位種の火竜より強そうだ。
『やるしかない』
「ライトニングソードっ」
剣に雷を纏わせて斬りに掛かる。
「うがぁぁぁぁー―――っ」
駄目だ致命傷にならない、全然効かない…地竜にこちらの場所を教えた様な物だ。
「うぐっ、ぐわぁぁぁぁー―――っ」
ドガドガドガッ…
「ぷはぁ…ハァハァ払われただけでこれかよ」
尻尾で払われただけで、俺は数十メートル飛ばされ当たった木が全部折れていた。
ミスリルの鎧で良かった。
普通の鎧ならこれで死んでいただろう。
だが、鎧はもっても俺の体はもたなかったようだ、肋骨は折れて駄目だ。
立つのも精一杯だ。
「ぐあるぅぅぅぅぅぅぅぅー-っ」
地竜の牙が俺に迫ってきた。
そのまま俺を咥えると放り投げた。
大きな地竜が放りなげるんだ…その高さは小さなビルより高く感じた。
このままじゃ死ぬ。
「空歩―――っ」
俺は勿論、空何て飛べない。
だが、空を僅かな時間歩くことが出来る。
そのスキルが「空歩」だ。
悔しいな…本当に悔しい此処で此奴を倒せれば…美味く行くはずだった。
だが、俺にはもう死しかない。
だが、それも良いかも知れない。
娼婦を買う為にメンバーを死なせた…ガイアは醜聞まみれになるだろう。
三人も流石に死んだら、悲しむだろう。
それで良いんじゃないか?
只の魔法戦士が「本物の竜種」それもこんな強大な奴に挑むなんて間違いだったんだ。
だが、このまま死ぬのは悔しいな…最後まで抵抗させて貰う。
せめて一撃…
ならばこれだ。
「光よ我に集え」
大昔に俺と同じ名前の勇者が居た。
『勇者リヒト』
そんなに強い勇者じゃ無かった。
魔王と戦う事すら無かったらしい。
だが、その勇者リヒトは『ブラックウイング』偶然だが、今の俺の所属パーティと同じ名前のパーティを率いていた。
大昔に居たという、同じ名前のパーティの勇者。
親近感を覚えた俺は…彼を調べた。
そして彼の技を身に着けたくて修行した…
それがこれだ…
「これが勇者のみが使える必殺技 光の翼だー――っ」
本物には及ばない。
勇者リヒトが放った時は14枚の翼の大きな光の鳥が襲い掛かるという。
俺のは精々がが人間と同じ大きさの普通の2枚羽の光の鳥が向かっていくだけだ。
こんな物で勝てるわけは無いな…
「痛ぇな…お前リヒトなのか?」
巨大な地竜が話した気がした。
◆◆◆
此処は何処だ…洞窟か?
「おい、お前、リヒトなのか?」
地竜が話しかけてきた。
高位の竜は知能が高く人語を話すと聞く。
そんな存在に挑んだ俺は馬鹿だ。
「確かに理人ですが…貴方が知っているリヒトじゃありません」
何だか寂しそうな顔をした気がする。
「そうか、人間は竜と違い短命だからリヒトが生きている訳はないな…だがあの構えはリヒトに似ていたんだが、もしかしてリヒトの子孫か?」
「残念ながら血の繋がりもありません、ただ勇者リヒトに憧れていただけです」
「なんだ弱虫勇者のリヒトに憧れているのか、お前随分変わっているな…まぁ良いよ、それで此処には何で来たんだ」
嘘を言っても仕方ない、自分の事情を話した。
「そうか…俺は地竜じゃない竜の王族の一族だ…まぁ王位継承権は無いけどね、だが地竜の死体なら奥に二つ転がっているから持って行っても良いよ、ムカつくから俺が殺したんだ、八つ裂きにしたからバラバラだけど、確か全部じゃなくて討伐証明だけで良いんだよな」
「確かにそうです」
「此処には俺と君しか居ない、自分が倒した事にして持っていきなよ…俺は要らないからね」
「良いのですか?」
「ああっ、昔の友人を思い出させてくれたお礼だ、俺の血もお前が寝ている間に飲ませて置いたから多分すぐに体の傷も治る…それじゃ俺は行くから、君は少し休んでから持っていくと良い…それじゃな、懐かしい思い出をありがとう」
そういうと強大な竜は去っていった。
勇者リヒトとあの竜にどんな思いでがあるのか解らない。
だが偽りとはいえ言い訳に『思い出が欲しい』そう言った俺にはなんとなく、あの竜の気持ちが解った気がした。
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