第15話 私たちの『嫁』理人

本当に凄い経験だったわ。


あの後、理人がまさかのエステまで予約していたのは本当に驚きよ。


寝ていたらノックで起こされて驚いたけど…本当に気持ち良かったわ。


「本当に楽しかったな…あの朝食の食べ放題も美味い物ばかりだ」


「ブッフェでしょう? しかもマナーが不自由分な私達を考えて、小さな個室まで用意…ああっ愛されるってこういう事を言うのね」


「マリア、足がふらついているぞ」


「ああっだって本当に楽しかったんだから仕方ないじゃない」


「そうだな…しかし、あんな尽くしてくれる理人を良くリタは捨てたもんだな」


「また悪口…確かに理人は昔から優しかったけど、こんなのは初めてだよ! あれは本当に理人なの? まるで別人にしか思えない」


「確かに、此処の所のは凄すぎるけど、理人なら恋人相手に此処迄尽くすのは想像がつくわ、リタ、貴方はおこちゃま過ぎたのよ」


「どういう事よ!」


「だってそうじゃない? 理人って凄く人に尽くすタイプだわ、今までだってお金を掛けてこそいないけど、ご飯を作るのは理人だし、洗濯も全部理人…女なのに恥ずかしいけど下着まで洗ってくれているわ、宿の手配もそうだし…朝の洗面の水も理人だもん」


「そうだな、私の場合はそれに剣の手入れが入るな、聖剣と違って私の剣は魔剣だから手入れが必要だ、今思えば彼奴には小さい頃から随分世話になったよ」


「へぇ~なんだか随分理人に優しいのね」


「そうね、正直にいうわ、もう私の中の天秤は二人とも同じになっちゃったわ…自分でも最低なのは解るけど、どうしようもないの、正直にいうとね『理人を嫁にするか、ガイアの嫁になるか』の葛藤なのよ」


「そうだな、うんその通りだ…上手く言うな確かに『理人は嫁』だ、畜生、男羨ましい、男なら両方娶るのに勇者パーティーなんだから女にも複数婚認めて欲しいよ」


「そうね、それが一番だけど、現実は厳しいわ」


「あのさぁ理人は男の子だよ…それが嫁」


「よく考えて見ろよ、私たちはプロなんだよ剣聖より強い剣士なんて居ないし、マリアにしてもリタにしてもそうならないか?」


「そうなるわね」


「言われてみれば…」


「よく考えなさいよ、リタは魔王を倒した後はアカデミーで教授とかになるんでしょう? 調べものをしたり論文を作成したりして疲れているリタ、そこに笑顔で「リタお疲れ」とコーヒーとサンドウィッチを夜食で差し入れる理人…これって『嫁』じゃないの?」


「確かに…嫁だよ! 理人恐るべし」


「あら、リタは考える必要は無いのよ、ガイアの嫁決定だから」


「そうそう、流石に理人からガイアに乗り換えたのに元鞘に戻るなんて無理だよ、リタビッチ」


「リタビッチ言わないでよ、私だって、私だって…心動いているんだから」


「そう、それじゃ理人に戻るの?」


「それは流石に難しいだろう」


「ううっ」


リタは兎も角、私やエルザはもう半分解ってしまいました。


私達の生活の殆どは理人が補っている事に


これは


『理想の男性』と『理想の嫁』どちらかを取るかと言う究極の選択です


私達が『女』であれば普通にガイアなのでしょうが…


私達は多分、女じゃない気がします。


家事が全くできない。


男に多分尽くすことを知らない私たちにはもうどちらを選ぶか決まってしまっているのかも知れません。


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