第10話 ホテルにて
「さぁ着いたぞ、行こう」
「此処なのか?」
「本当にこんな所を…」
「あの理人…嘘、本当に?」
驚いてくれたみたいだ。
俺が予約したのは『王国ホテル』貴族や王族階級が好んで使うホテルだ。
最も大本のホテルは王都にあるから此処は支店とか別院扱い。
それでも1泊辺りスィートルームは1泊あたり金貨17枚(170万円)は下らない。
「此処だよ、俺がしたかった事、それは着飾った皆と一緒にこう言う豪華なディナーを食べる事なんだ…これも俺の我儘だから気にする必要は無いよ、俺が皆と一緒にしたい事なんだから…まぁ昔から思い描いていた夢の一つだよ」
「理人、お前の夢は随分と私達を幸せにするような夢なんだな」
「これが理人、貴方が私としたかった事なの?」
「これが本当に、私としたい事だったの? 信じられない」
まぁ驚くよな。
やるなら徹底してやる…中途半端はしたく無いからな。
「そうだよ? 初恋の相手と幸せに過ごしたい。大好きな相手と楽しい時間を過ごしたい、男なら当たり前の事だと思うよ…まして相手が、大好きな凄く綺麗な幼馴染だったら、少し位見栄位張るよ」
「あの理人、私は、そのな」
「その、そんな風に思われていたの?」
「こんな風に私と過ごすのが理人の夢だったの?」
「まぁな…恥ずかしいから何度も言わないよ…まぁ良いじゃないか? さぁ行こう」
「「「うん」」」
◆◆◆
勿論三人はテーブルマナーが出来ないから、ちゃんと個室を取っている。
「これはこれは理人様、お待ちしていました」
「今日連れてきたのは見ての通りだ、最高のもてなしを頼む」
「畏まりました、肉と魚メインは選べますがどちらが良いですか?」
「どっちが良い」
「え~と解らないから理人にお任せる」
「そうね、任せるわ」
「私も」
「そう、それなら肉料理で、あるなら柔らかい子牛の物が良いな」
「畏まりました、それでワインは」
「お任せで構わないけど、渋みが少ない赤があったら、それにして欲しい」
「畏まりました」
俺は席までエスコートして席を引こうとしたが…流石は高級店、給仕の人がしてくれた。
「それじゃ乾杯」
此処は個室だし給仕も最低限でお願いしていたからゆっくり談話も出来る。
「嬉しいな…」
「どうかしたのか?」
「いや、やっぱり皆、凄く綺麗だ、昔から思っていたけど、やっぱり貴族なんて比べ物にならない位美人だ」
「ななな何を言い出すんだ」
「言いすぎだわ」
「そんな事ないわ」
「王城に行った時から思っていたんだ、ちゃんとお化粧してしっかりした服装をすれば、絶対に皆の方が綺麗なのにってな…個人的には呼び出したくせに、そういう物を用意しなかった国に腹がたっていたんだ…やっぱりそうだよ…うん、凄く綺麗だ、美姫と呼ばれるティーナ姫よりうん、やっぱり綺麗だ」
「剣ばっかり振るっている女だ、言いすぎだぞ」
「そうよ、流石に姫様とは比べられないわ」
「流石にそれはお世辞だよね」
まぁな。
「ハァ~リタ、俺は世界で一番可愛い、そう思ったからプロポーズしたんだ…あはははっ、そう考えたら俺の方が先に浮気したのかも知れないけど、俺は三人はタイプが違うけど同じ位綺麗だと思ってた、いや、今でも思っている」
「そうなのか?あ~あ、私が姫より綺麗だなんて、趣味が悪いな」
「うふふっ、まさか、ティーナ姫より綺麗だなんて、最高の誉め言葉だわ、ありがとう理人」
「そこ迄、私好かれていたんだ」
「もうこの話は無しだ、無し恥ずかしいから、食事に専念しよう」
「「「そうね…うん」」」
案外、楽しく話せたせいか時間はすぐに過ぎ去っていった。
「そろそろお開きだね」
「それでこの後は流石に何も無いよな」
「いや、あるよ、ちゃんとこのホテルロイヤルスィートをとってある」
「あっ、いや…それじゃ不味い…」
「うん、それは…聖女だから答えられない」
「うん…ごめんね」
顔が少し赤いな…困っている証拠だ。
この表情は、満更でもない気がする。
「誤解させて悪かった!勘違いしないでくれ、三人が俺じゃなくてガイアを好きな事を嫌に成程知っているから…だから俺は此処迄、今日は本当にありがとうな、ただ、俺は此処でリタイヤするが、皆にはちゃんと、ロイヤルスイートをとってあるから、今日はそのまま堪能して行ってくれ…俺はこのまま馬車を返しに行くから、明日は悪いが何時もの宿まで自分たちで帰ってきて欲しい…それじゃこれカギだ…じゃあな! 」
「「「理人…」」」
俺はわざと肩をすぼめて足早にその場から立ち去った。
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