第7話  偽りの失意と次の予約




◆時は少し遡る◆


「最近はリタさんと一緒じゃないんですね」


受付嬢のハルサさんに聞かれた。


今までよく一緒に居たんだ、そりゃ聞かれるよな。


「あっさりと振られて、他の男性に取られちゃいました」


「えっ、理人様が振られたんですか? 凄い優良株なのに?信じられません、理人様以上の男性なんてそうは居ませんよ…相手は誰なんですか?」


「そう言われると凄く嬉しいですが、お恥ずかしい話、相手はガイアです。 あはははっ流石に勇者には勝てませんね」


「あの、失礼ですが勇者ガイアと理人様は仲の良いご友人同士に見えたのですが…」


「そうですよ、今も親友ですよ…ただガイアもリタも『恋愛と友情は別』そういうタイプなだけです」


「そうですか…お気の毒に」


「俺の事は気にしないで下さい…それよりこのワイバーン討伐俺が受けて大丈夫ですか?」


「それは塩漬け依頼ですから構いませんが、顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」


「今は仕事を頑張りたいんです」


「そうですか…頑張って下さいね」


俺はわざと、今にも泣きそうな悲しい顔を作ってギルドを後にした。


俺は別に悪く無いよな。


本当の事をただ言っただけだ。

人間…悲しければ愚痴の一つ位言いたくなるし、悲しければ泣きそうになる…当たり前の事だよな。


◆現在◆


「それでなぁ理人、次はいつ行くんだ」


「ああっそれじゃ、今夜早速いくか?ただどうする?」


「どうするって…どういう事だ?」


「いや、同じ子を指名するのか? それとも新たな可愛い子を探すのか? どっちが良い?」


「なぁ、理人、チョチョリーナさんより綺麗な子は居ると思うか?」


ロザリーじゃなく、チョチョリーナ…ね。


勇者ガイアは、そちらをお望みという事だ。


「だったら、今度はダークエルフかそのハーフのお店でも探してみようか? だが、今回は下準備がまだだから、今から街に行って探そうと思うんだが、3人には上手く言っておいて貰えるか?」


「ああっ、俺が用事を頼んだ事にする」


「それじゃ夜にまた部屋に迎えに行くからな」


この分なら飲みは要らないか…


童貞を卒業したばかりのせいかやりたい盛りなんだろうな。


なら『飲み』よりあっちだな。


俺は冒険者ギルドに向かった。


夢も希望もないが…冒険者の多くはかなり風俗を利用している。


下級の冒険者は安い場所をつかい…D級前後が高級風俗を知っている者が多い。


それ以上になれば、普通に恋をしたり場合によっては奴隷を購入する。


そして、そんな冒険者に風俗の情報を与えてお金を得る者もいる。


まぁ、前の世界で言うなら『風俗紹介所』みたいな物だな。


最も前の世界みたいにお店として構えるのではなく、冒険者が金稼ぎでやっているだけだ。


「はぁ~最高のお店を教えて欲しいだと! それはお客の好みだからな? どんなのが良いんだ?」


「ダークエルフ系の綺麗な女性が居て、それで可能なら長いコース設定が可能なお店が理想だ」


「あのよ…あるにはあるが…かなり前から予約を入れないと無理だぞ」


「それは問題ないから情報を教えて欲しい」


「ダークエルフ系でお勧めなのは…」


俺は情報を聞いて…その店に向かった。


◆◆◆


此処か?


『ブラッククリスタル』


「すみません、此処にジザベルとイザベルって娘いますか?」


「はい、居ますよ。ちょっと予約表みますね、ジザベルなら明後日の18時~ イザベルは明後日の19時~なら予約可能ですよ」


「いや、今日の18時から明日の朝まで借り切りでお願い致します」


「あのお客さん、話し聞いていましたか? 明後日まで無理なんです」


「そこを何とか入れて下さい」


「無理ですね、それにうちはオールナイトコースなんてやってないんだ、冷やかしなら止めてくれませんか?」


まぁ良いさ。


俺にはどんな無理な願いでも叶える魔法のアイテムがある。


勇者パーティの冒険者証だ。


俺は冒険者証をとりだして見せた。


「俺の名は理人、勇者パーティ、ブラックウイングのメンバーだ。そして俺は今夜、勇者ガイア様の相手を務める相手を探している…つまり、ジザベル、イザベルの相手をするのは勇者ガイア様だ、それでも断るのか?」


「ですが、もう予約が入っていまして…それに当店は0時で閉まるんです」


「あのさぁ、勇者様と言えば貴族や王族はおろか教皇様を超える貴人。その方への奉仕を断ると言うのか?」


「ですが…今日の予約を楽しみにしているんですよ…皆が」


「ほう…本当に断るのか? それなら『勇者の名前を出して断られた』と中央教会に伝える事になるな、風俗店の管轄は教会だ、この店の営業許可は無くなるな」


「そんな、貴方は勇者パーティですよね、それがこんな脅しみたいな事するんですか」


「脅し…脅しじゃ無いですよ! 勇者に奉仕するのはこの世界の人間の義務、そう勇者保護法にもある、勇者様は女神様が選んだ救世主。 人類の為に命かけて戦う勇者様は誰より優先される…そう思いませんか?」


「そんな詭弁だ」


「さっきから煩いな…本当の脅しって言うのはこういうのを言うんだ」


俺は剣の柄に手を掛けた。


「なっ何を…」


「勇者パーティは貴族階級以下は斬り捨てごめんだ、俺はまだ一言も斬ると言ってない…何処が脅しなのか言って欲しい…ちゃんと法律にも『勇者の徴収を邪魔する事は出来ない』とある」


「解りました、今日の予約を受けました…オールナイトコースで良いです」


「ああっ、受けてくれて感謝する…そうだせめてものお詫びに代金は2倍払うよ、それと迷惑賃として貴方に金貨3枚(約30万円)女の子にもそれぞれ金貨3枚払うよ…先払いでね、それじゃ二人で精いっぱいの奉仕を頼んだぞ」


「畏まりました」


◆◆◆


ハァハァ…こういうのはやっぱり俺は苦手だ。


人を脅したりする事は苦手だな…


まぁ良いや、これで今夜もガイアは楽しめるだろう。


ただ、こんな事を続けていたら…金が無くなる。


教会に提案したあれが通ると良いんだが…まぁ期待しないで待つか。



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