第6話 ガールズトーク 嫌われ者


「理人はどういう気持ちでこれを買ったのだろうか?」


このペンダントがどれ程の価値があるのか、剣ばかりに生きてきた私だって解かる。


王室御用達の印が箱に押されている。


これは庶民ではなく、貴族や王族が買うようなお店で購入した物だ。


しかも、獅子だ。


どう考えても私の事をイメージしたオーダー品としか思えない。


「知らないし解らないわ、ハァ~本当にどうして良いか解らないわよ、嫌いな男なら突っ返すけど、相手が理人だもん、本当にどうして良いのか解らない」


マリアが困る位だから、私やリタは更に困るな。


多分、私達3人は多かれ少なかれ理人には好意を持っている。


私の中の理人は弟のようであり兄のようであり…私が男なら理人は親友というポジションだ。


一緒に居て楽しい存在でもあるんだ。


それに、もしガイアが勇者でなければ1/2の確率で理人の嫁さんになっていた。


一般人は複数婚は出来ない。


ガイアは3人の中ならマリアが一番のタイプだから恐らくマリアを選ぶ。


すると、当然リタと私があぶれるから、普通ならどちらかが理人と結婚する可能性が高い。


もし、四職にならなかったら、私とリタは理人争奪戦をしていたはずだ。


理人は気が利くし良い奴だからな…案外友達みたいな夫婦になっていた可能性はあるかも知れないな


私は気の置けない親友を恋愛を求める事により失うかも知れない…だから理人から逃げてガイアにいった。


それが、今更、初恋の相手だと言われても困ってしまう。


「なぁ、リタ、リタはなんでガイアに乗り換えたんだよ…理人から指輪を貰っていたよな? あれは婚約みたいな物じゃないのか?」


「私を悪者みたいに言わないでよ! ガイアを除くなら、理人が一番なのは確かよ、今だってこんな事されたら気持ちが揺らぐわよ、だけどそれを言うなら皆だって同じじゃないの? この中に理人が嫌いなんて言いきれる人いるの? 皆、2番目は理人じゃないの? 私はガイアは私に興味なんて無いと思っていたから理人の思いに答えたの…だけどガイアから告白されたんだから仕方ないじゃない…タイミングが悪すぎるのよ…ああっもう、本当に困るわ。理人がもっと嫌な奴なら良かったのに、ガイアとは比べられないけど、両親と比べたら理人を取りかねない位の…変な愛情があるのよ」


「エルザ、今更リタを責めても仕方ないわよ? あのままリタが理人と付き合って結婚、その結末は私も良かったと思ったのは確かだけどね」


「だろう? そうすれば…」


「今は、たらればの話をしても仕方ないわ…幸い理人はもう自分で決着つけたみたいだし『思い出作り』これに協力してあげれば良いんじゃない」


「だが、それで本当に良いのか? 理人は、そこそこイケメンで、私達につぐジョブ『魔法戦士』だ、他を探せば幾らでも相手がいるだろうに…」


「エルザ、そんなだから、男女なんて言われるのよ」


「そうだよ…理人は多分女に外見なんか求めてない気がするよ、小さい頃から一緒に過ごした思い出があるから、私達なんじゃないかな? そういう人だよ理人は」


「あのよ…そこ迄解っていて、何で理人からガイアに乗り換えたんだよ」


「また、その話し…仕方ないじゃないガイアの方が理人以上に好きなんだから、好かれていないと思っていたのに告白されたんだよ! そりゃ…」


「まぁリタは、性悪ビッチだから仕方ないわね」


「まぁそうだな、歴代嫌われ賢者ナンバー1、現勇者パーティ嫌われ四職ナンバー1だもんな」


「何、それ、酷くない? いい加減に私を悪者にするの止めて欲しいんだけど」


「いや、これは事実だから」


「冒険者、特に女冒険者には好感度ゼロどころかマイナスよ…私『リタなんか死ねばいいのに』そう酔っぱらって泣いている女冒険者も見たし、『ああいう女は碌な死に方しない』そういうギルドの職員の話も聞いたわ」


これは事実だ。


「なんで…ねぇ何で私、そんな人気ないの?」


「自覚無しか? 良いかお前、ギルドや街で散々理人と付き合った事自慢していただろう? しかも腕を組んで歩いたりしていたし、お揃いの指輪までしていたよな」


「そりゃ付き合っていたんだから、その位するよ」


「理人はあれでも面倒見がよいから結構な人気者なのよ…それを手ひどく振って、勇者に走った『ビッチ女』やっかみも入って本当に嫌われているのよ!女冒険者にね」


「嘘だよね…只の冗談だよね?」


「決して冗談じゃない…賢者じゃ無かったら路地裏でブスッとか有っても可笑しく無いな」


「そう…私、そんなに嫌われているんだ、賢者なのに…」



「まぁどんまい」


「人気何てこれから回復していけば良いんだ」


「そうだね」


そこまでの覚悟は無かったのか。


『優しいと評判の理人を捨てて勇者に走った』


誰が見てもそう取れるし、本当の事だ、仕方ないだろうに


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