第3話 男の遊び


次の日から俺は今まで以上に4人を大切にする事にした。


「おい、理人! めし…えっ」


「「「凄い(な)」」」


「まずは、食事の前に、顔を洗って、口を注ごうか? ハーブ水を用意したからさっぱりするよ」


「ああっ」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


「ありがとうな」


4人とも変な顔をしているな…


俺の前に居た世界では『男は女に尽くして当たり前』だったんだ。


それでも、貢だけ貢がされて終わる事が多かった。


『尽くす』事には慣れている。


「あっ、洗面器もコップもそのままで良いから…さぁ食べてくれ」


今日のメニューは 鶏肉のムニエルにスープに白パン。


前の世界じゃ大したこと無いが、この世界じゃ朝食は凄く質素だ。


だから、これですらかなり豪華な食事になる。


俺は今まで、前世の記憶の料理を作ったことは無い。


さぁ…どうだ。


「これ、お前が作ったのか?」


「まぁな」


「まるで貴族の朝食みたい」


「ああっリタ…恐らくはそれより美味い」


「美味そうね」


「ああっ凄く美味そうだ」


此処で少し罪悪感を煽っておこう。


「今まで悪かったな…幼馴染という事に甘えていた、確かに俺はそのうちついて行けなくなる、それを解っているから苦言してくれたのも解るんだ…だが、もう暫くしたら永遠のお別れだよな、だから残りの期間、大好きだった幼馴染とやりたかった事を沢山して思い出に残したいんだ…俺の我儘だ、気にしないでくれ」


「理人、お前」


「「「理人」」」


「冷めないうちに食ってくれ」


「ああっ」


「これ美味しい」


「美味いわね」


「確かに、これはいける」


「そうか良かったよ」


ハーレム状態にしたいから俺を追放したい…それなのに『感謝』されたら…心が痛いだろうな…まぁこれで 改心 する位の奴らじゃねーよな。


◆◆◆


「ガイア、眠ったか」


あの後、簡単な討伐を終えた俺たちはガブギの街についた。


この街は大きな街で沢山の酒場がある。


「なんだ理人か…俺は眠いんだよ!」


「しっ…静かに、大きな声を出したら皆に気が付かれるだろう? これから一緒に飲みにいかないか?」


「ハァ~、マリア達となら兎も角、お前と飲んで楽しい事ねえよ」


「そんな事言うなよ…親友だろう? ガイアが勇者になったから誘えなかったが、俺の夢は親友と酒を飲むことだったんだ、なぁ頼むよ」


「仕方ねーな…良いぜ」


どうにか誘えたな…


◆◆◆


「ここは…なんだか凄そうだな」


「気にするな、ガイアは勇者なんだから、偶にこういう場所で飲むべきだ」


「良いのかよ…これ」


「ああっ、実は俺、偶に狩りで金を稼いでいたから少しは金があるんだ…ほら」


そう言いながら明らかに汚い袋を取り出した。


「それ…」


「これは俺の夢の為のお金だ」


「夢?」


「ああっ、お前が勇者だから誘いにくかったが、幼馴染の俺の夢はこういう女が居る店でお前と遊ぶ事だ…本当なら成人してすぐに来たかったが他の幼馴染は女だし、お前は勇者になったから誘えなかったんだよ…一緒にこう言う場所に、親友のお前と行きたかったんだ」


「ああっ、確かにマリアやエルザの手前これないな」


「親友だろう? 男同士羽目を外して遊ぼうぜ」


「ああっ、そうだな…」


◆◆◆


「予約していた、理人だ…今日は皆の憧れの勇者ガイアを連れてきた、お金は気にしないで良い、最高の子を頼むよ」


「解ってます」


「おい」

「大丈夫、大丈夫、さぁ行こうぜ」


俺はちゃんとリサーチ済みだ。


この店は美人が多い、その中でも桁違いに美人なのが…


「ロザリーです」


「ミザリーです」


この二人だ。


特にロザリーは没落した貴族の令嬢で村娘なんかにはない上品さがある。

俺の感ではガイアのドストライクの筈だ。


「二人とも、今日のメインはガイアだからガイアを挟む様に座ってくれ、しかもガイアは知っての通り『勇者』なんだ、最高のもてなしを頼む」


「勇者様なのですか? 流石ですね風格がちがいますね」


「嘘っ、凄くカッコ良い…しかも凄いイケメンじゃない?」


「当たり前だろう? 勇者ガイアなんだからな、俺の自慢の幼馴染だし、昔からモテモテだぞ」


「おい理人…言いすぎだぞ」


「ガイアは気にしないで会話とお酒を楽しめば良いんだよ…あのよガイアは自分に自信なさすぎ『お前は勇者…お前を嫌いな女なんか世の中にいねーよ』そうだろう?」


「そんな訳ないだろう…」


しかし初心だね。


顔を真っ赤にしてさぁ…


「そうですね、凄くカッコ良いと思いますよ? お連れ様の言うように凄いイケメンです」


「本当に私の好み…凄~くかっこ良いです」


「そうかな…本当に」


「それじゃヘーテルのルビーボトル入れちゃうぞ! ガイアはお酒も好きだから、ジャンジャンついでくれ」


「太っ腹ですね」


「流石は勇者様ですね」


ガイアはご機嫌だ。


そりゃそうだ…この二人はこの店のナンバー1.2だ。


この街は前世で言う歌舞伎町に近い歓楽街。


ここのお店はキャバクラやクラブに近い。


しかも高級店…そりゃ綺麗に決まっている。


「それでさぁ、オークの大群が村を襲っていたわけよ…普通なら終わりだが…そこに俺が聖剣を持ってだな…」


「嘘、聖剣…もしかして、あの剣が」


「ああっそうだ…見たいか?」


「見たい」


「私も見たい」


「すみません…ただ見せるだけなので預けていた聖剣抜いても良いですか」


普通は剣なんて持ち込めないから預けてある。


「そうですね、お連れ様は勇者様なので『特別』ですよ」


「ありがとう…ガイアは勇者だから『特別に剣を抜いて良い』ってさぁ..ほら」


「ああっ…特別に見せてあげるぜ…これが聖剣エグゾダスだ」


「綺麗…」


「こんな綺麗な剣初めてみました」


当たり前だよな聖剣なんだから。


「良いか、ガイアが聖剣を抜いて見せてくれるなんて滅多にないんだ特別なんだぞ」


「ああっ素晴らしい物を見せて貰いありがとうございます」


「本当に目の保養になりました」


「良いんだ、良いんだ…今度はオーガと戦った時の話をしよう…」


上機嫌だなガイア…


◆◆◆


「いやぁ~偶には男同士も良いもんだな…なんだか俺ばかりモテて悪いな」


金さえ払えば、誰でもモテるさぁ…水商売だもんな。


「勇者がモテるのは当たり前だ、それにお前はイケメンなんだから、当たり前だ」


「そうか、そうだな」


「俺にとって自慢の幼馴染なんだモテて当たり前だ…お前といられるこの瞬間が俺の楽しみなのさ」


「ホモか?」


「違うわい、親友…親友だ」


「あはははっ冗談だ、冗談、ほらよ」


ガイアが肩を組んできた…久々だなこれは。


「さぁ充分楽しんだし帰るか?」


「ガイア…俺が連れて行きたい本命は次だ…」


「まだ、あるのか? 良いぜ、親友つきあうぜ」


「サンキューな」


俺はガイアを次の店に連れて行った。



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