君が作る料理が、1番の幸せ

 -マンションに着き

 僕と凌空は一緒にお風呂に入った。

 疲れがドバーッと流れていくこの瞬間が、僕は堪らなく大好きなんだ。


 少ししてから…

「…続きはまた後でな…?」


 り、凌空…?!み、みんなの前で何言ってるのさっ!///

 僕のおでこに軽くキスを残した凌空は、僕よりも先にお風呂から上がってしまったんだ…


「もう少し入ってよ…なんか恥ずかしい…///」


 いつもなら凌空も、もう少し長く入ってるのに、早く上がったのには訳があるのは見え見えだ…


 …凌空、頑張って…!


 ◇ ◇


 -少しして

 僕もお風呂から上がり、居間に向かうとキッチンには凌空の姿があって、一生懸命に夜ご飯の準備をしてくていたんだ。


「紡?今日はお前が座って待ってるんだよ?」


 と僕の姿を見つけるや否や、すぐに微笑みかけてくれて…僕はすっかり頬が紅潮してしまう…。


 お昼の凌空を見てるから少し心配だったけれど…僕はカウンターから見守ることにしたんだ。


 ジュー!♪

 コトコトコトっ!♪


 あれ…?思ってたよりスムーズ…?

 何かあったら声かけてねって言おうと思ったけれど、その心配は無さそうだ…


 凌空ってほんっと物覚えがいい…そんな事を思いながらテーブルで寛いでいると


 ピコンっ!


 僕の携帯が鳴り響き、通知を見るとそこには、航平くんからだったんだ。


 ---------------


「じゃ〜ん!!!!☆」


「すげぇ〜っ!!!えっ!これ、航平が作ってくれたのか?!」


「じゃなきゃ誰が作るっていうんだよぉ!バカ紡っ!!!」


「ば、バカはいらないだろ!」


「…紡の口に合うといいんだけど…///」


「…なっ!…不味いわけ…ないだろ…!…いただきますっ!!!」


 パクっ…

 ズズズっ…


「…ど、どう…?お、美味しいっ…?」


「ほわぁ…う、うまい…!!航平っ!この卵焼き美味しいよっ!!この豚汁も出汁が効いてるし温まるっ!」


「ほんとっ?!…やったぁ!☆」


「なにより…航平が作ってくれたご飯ってのが…俺はとにかく嬉しいよ…///」


「…っ!!?つ、紡の…バカっ…///」


「んなっ!またバカって言いやがったなぁ?!」


「うるさいうるさいっ!もう、冷める前に食べよっ!!」


 --------------


 航平くん、紡くんが喜んでくれて良かったね?美味しいって言ってくれて嬉しかった!って喜ぶ連絡を貰えて、僕もとても心が温まったんだ…!


「航平くん、紡くんの喜ぶ顔が見れて嬉しかったって!」


「そうかそうか!上手く出来たみたいだな!…俺もお前の喜ぶ顔が見れるように頑張るから、もう少し待っててくれな?」


 …もうっ!何分でも待ちます!

 凌空…?むしろ、頑張って作ってくれてるだけで、僕は嬉しいよ?


 ピコンっ!


 次は竜二くんからだ!


 --------------


「ただいまぁ〜」


「大地ぃ〜おっかえりぃ!」


「疲れてるからベタベタすんな」


「もぅっ!釣れねぇなぁ!さてさて、お風呂にしますかぁ?ご飯にしますかぁ?…それともぉ?!」


「うっざ……んっ?ご飯にしますか?」


「おうよっ!ご飯出来てんぞっ!」


「はっ?!竜二、ご飯作れたっけ?」


「へへ〜ん!俺様、やろうと思えば何でも出来んだぜっ?☆」


「はいはい…ならご飯か……えっ…これ全部、竜二が作ったのか…?」


「…く、口に合うかは知らねぇけど…まぁ…食ってくれよ…!」


「…はぁ、いただきます…」


(ゴクッ…!!)


 パクっ…

 …ズズズっ…


「…ど、どうだ…う、美味いか?」


「…べ、別に…///」


「なんだよぉ〜っ!美味いなら美味いって言えよなぁ〜このォ!」


「っ痛っ!…馬鹿力でデコピンすんなっ!」


「素直じゃねぇ、大地が良くねぇんだよっ☆」


(…めちゃくちゃ美味いよ…ばぁかっ…///)


 ---------------


 竜二くんからも大地くんが、素直じゃなくても美味しい顔を見せてくれた事の報告が元気いっぱいに届いたんだ。


「竜二くん、今度は大地くんもお店に連れてきてくれるみたい!美味しいご飯、作ってあげなきゃね?」


「竜二も頑張って作り上げられたんだな!」


「2人とも写真も送ってくれたけど、どっちも美味しそうだよっ!上手上手!♪」


 2人とやり取りをしていると、時間はあっという間にすぎ、気付くと凌空も調理が終わったようだ。


 コトンっ…コトンっ


「紡、お待たせ、出来たよ?」


 出来上がった料理たちをカウンターに並べてくれる凌空…嘘っ…嘘だよねっ…??!


 卵焼きはしっかりと形が出来ていて、豚汁もほうれん草のおひたしも、どれも綺麗に輝いて見えた…


「り、凌空…す、すごくないっ?!」


「誰が教えてくれたと思ってんだよ、紡、お前だろ?教え方が上手だったから、俺たちも料理が楽しい、難しいものも覚えたら楽しいって思えたんじゃないのかな?」


「ぼ、僕…」


「教えてるお前、最高にかっこよかったよ?」


 僕、父さんのように出来てたか不安だったんだ…ちゃんと上手く教えてあげられるか…料理が楽しいって思って貰えるのだろうか…


 でも、2人からの連絡と凌空からの言葉で、僕…上手く出来てたんだね…?父さん、僕…頑張ったよ…?


「おいおい、紡、泣くなよ」


「えへへっ、嬉し泣きっ!せっかく作ってくれたんだ!温かいうちに食べよっか!」


 僕たちは料理をテーブルに運び、いつも通り2人で手を合わせて、いただきますと声を揃えたんだ。


 パクっ…


「…どうだ?」


「…凌空、すっごく美味しい…美味しいよっ…」


 僕は、食事を口へ運ぶ度に、涙が止まらなくなった…愛する人が必死に覚えて作ってくれた料理を僕は今、口に運んでいる…


 口に運ぶ度に、作ってくれた人の想いや温もりが身体に流れ込んでくるんだ…


 そう、それが僕の1番愛する人が作ってくれた料理なら尚更…数倍にも数百倍にも伝わってくるんだ…


「つ、紡、な、泣くなよっ…」


「だって…こんなに美味しいご飯を食べて、凌空の温もりや気持ちが伝わってきて…嬉しくてたまらないんだもん…」


「つ、紡…///」


「凌空…本当にありがとねっ…?すっごく美味しいよ?///」


 きっと他のみんなも同じような気持ちになっているんだと思う…。


 君が愛をこめて作ってくれた料理こそが

 なにより1番の幸せなんだ…。


 そんな幸せを…僕はこれからもみんなに伝えて行けるように、時間が許す限り…料理教室を続けていくことにしようと心に決めた瞬間だったんだ。


 これからも…料理で色んな人に幸せが届きますようにと…


【完】

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カセットテープのような恋をして…〜楽しい料理教室〜 翔(カケル) @kuuramu

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