伊吹 竜二!!!参上っ!!!

 いよいよ今日は、料理教室初日だ!


 昼営業も順調にこなして行ったけれど、どことなく僕の気持ちはソワソワしていたんだ。


 ちゃんと2人に教えてあげられるかな…?

 ちゃんと父さんのように出来るのかな…?


 そんな気持ちを抱きながら、僕は今日もみんなに幸せを届けて行ったんだ。


 -昼営業終了後


 航平くんは、嬉しいことに早めにお店に来てくれていて、僕が作ったランチを食べながら待っていてくれたんだ。


 今日も「やっぱり、むぐが作る料理は天下一品だねっ!食べてて自然と顔が綻んじゃうんだもんっ!☆」

 なんて、嬉しい感想を述べてくれて、ちょっぴり恥ずかしくなっちゃったんだ。


 そんな中、凌空が店外の暖簾を下げに行こうとしてくれたその時、店のドアが勢いよく開き…


「ちわぁっ〜っ!!今日お世話になる、伊吹いぶき 竜二りゅうじどぅえ〜すっ!!☆」


 めちゃくちゃ威勢のいい声で登場したのは、そう、僕の料理教室へ一目散に参加してくれた伊吹いぶき 竜二りゅうじ君という男の子…


 はは…竜二くん、そんなに勢いよくドア開けたら…ドア壊れちゃうよ…汗


 SNSでやり取りしていた時から、きっと腕白な子なのかなぁ?なんて凌空と話していたけれど、その想像を遥かに超えるほど腕白だ…


 でも、笑顔がすっごく爽やかだ。

 そして、なにより一気に場が明るくなった気がしたんだ。


 身長もきっと洸と同じくらいで、ガッツリ日に焼けている。きっとこの子はスポーツ好きな子なんだろうなぁ…モロ洸みたいだなって思えたんだ。


「竜二くん、いらっしゃい」


「ういっす!あっ!凌空さんですかっ?SNSのやり取り、ありがとでしたっ!!」


 凌空と竜二くんがやり取りをしていた時、そっと航平くんが僕のもとに寄り添ってきて


「あ、あの人誰っ…?!ちょっと、勢い良すぎて怖いんだけど…?」


 と少し引きながらも僕に小声で話し掛けてきたんだ。


「今日一緒に料理をする、伊吹 竜二くんだよ?」


「ええええ〜っ!!あ、あの人も一緒に料理するのっ?!」


 ちょ、航平くん!声大きいって!

 竜二くんに聞こえちゃうじゃんかっ!


 でも、あの威勢の良さと身体も結構しっかりしていて、料理と来たらビックリしちゃうってのもあるのかもしれないなぁ?とちょっぴり思ったのは、竜二くんには内緒だ。


 その反面、料理を習いに来たのにも、何かきっと意味があるはずなんだ。


「みんなで仲良く料理をしようね?」


「…むぐが居るなら、大丈夫だよねっ…?」


「だ、大丈夫だって汗」


 そんな話をしていると、僕たちの会話に気付いたのか、竜二くんと凌空がキッチンの方までやって来て


「紡さんっ!こんなんだけれど、良ければ美味い飯の作り方、俺に教えてくださいっ!!」


 なんて、頭を下げながら僕に手を差し伸べて来たんだ。


 僕の中で驚きもあったけれど、正直で真っ直ぐな気持ちを、竜二くんは持っているんだとも感じ取れた瞬間だった。


 なんだ、やっぱり礼儀正しい子なんだな…

 僕は、がっしりとした竜二くんの手を握り


「今日はみんなで楽しく料理をしようねっ?こちらこそよろしくお願いします♪」


 と返してあげると、竜二くんも顔を上げて、目をギュッと閉じながら、ニッと僕に、はにかんでくれたんだ。


 なんだろう…洸のこと可愛いって思ったことがあった時のように、竜二くんが可愛いなって思ってしまった。


 なんだかこれはこれで、懐かしいなぁ…!


「あ、紡さんの隣にいるのは…?」


 竜二くんは航平くんにも気付き声をかける。


「…稲沢 航平です」


「おおっ!航平くんかぁ!今日は、よろしくなっ!!☆」


 満面の笑みで話しかける竜二くんとは裏腹に、ちょっぴり引き気味の航平くん…


 うん、この料理教室…

 なんだろうか、上手くいくのかなっ…??







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