料理教室、紡の思い
-その日の夜
夜営業も終わり、俺と紡はマンションに帰宅し、料理教室の内容を詰めることにした。
まずは、会費だ。
食材を調達するのは、俺にでも出来る。
ただ、紡の口から飛び出た会費は、1人500円ぐらいと安価な値段が飛び出したんだ…そんなに安価で紡の技を周りに振舞ってしまってもいいのだろうか…と俺は戸惑いを隠せなかったんだが、紡の思いはそこじゃないらしい。
「紡、500円って…破格すぎるだろ…」
「凌空〜そこはね?お金じゃないんだよ〜?料理って安くても美味しく作ることも出来るし、工夫1つでどんな形にだって変えることが出来るんだよ?」
「…それとね?」
「…それと?」
「僕さ、父さんと母さんが教えてくれたこの素敵なメニュー達を、皆に食べてもらって幸せを届ける以外に、このメニューが僕の手から色んな人に飛び立って行くことで、もっともっと幸せが拡がって行って欲しいな…父さんならきっとそうしたかったんじゃないかな…?そんな風に思えたんだよね?」
「だから、航平くんが提案してくれた時、僕に出来るのかな?って思った反面、やってみたい、皆にこの味の作り方を知って欲しいって思ったのかも知れないんだっ!」
いつも俺の前では可愛い紡も、ちゃんと自分の思いを形にしては、大人な発言をするようになっていて、それはそれで俺も嬉しく思うし、何よりこいつの本心がヒシヒシとしっかり伝わってくる。
だから俺自身も、こいつの思いを全力で支えてやりたいとも思えるんだ。
「そうか…紡の思い、よく分かったよ?ならコスパの面は俺に任せろ、俺も何とかなるように考えてみるからな?」
「うんっ!凌空、いつもありがとね?」
そんな…つぶらな瞳で、可愛くありがとうなんて言うなよ…!か、顔が赤くなっちまうだろ!
「それとね?」
「…そ、それと?」
「航平くんの話を聞いた時に、好きな人に作ってあげたい!って思いの子がいるんだなって考えた時に、僕も凌空に美味しい料理を作ってあげたい!って今でも思うし、僕たちのような恋をしたり、男性でも彼女とか彼氏に料理を作ってあげたい!って思ってる人もいるのかな?って考えたんだよね?」
「…う、うんうん」
「だからね?この料理教室は、男の子限定の料理教室にしてみたいな〜って思ったんだ!…僕も大学時代に、女性しかいない料理部に最初は、男が居ていいのかな…?って躊躇したし…通い辛いなって考えちゃったのは確かなんだよね…?」
「だから、今回の料理教室は男の子限定にしたいな〜って思ったんだよね?」
ふむふむ…その紡の思いも分からないでもないな…女性が多い料理教室に、男性がポツンと1人っていうのも気持ち的に難しいだろう…
ならば割り切って、男性限定ってのも面白いのかもしれないなっ!
俺は紡の提案に賛同する事にしたんだ。
次は、集客だ。
どの年齢層をターゲットにするのか…
どうやって周知してみるのか…
SNSに疎い紡にとって、集客は難しいだろう…その分、SNS上での店の情報や写真のアップロードなんかは、俺が全て担っていたんだ。
大学時代のサイトが懐かしく思うよ…今になってこんなにSNSの力が役に立つなんて、思ってもいなかったからな…
航平は確定していて、あとは料理教室に何人招くのか…そここそ、紡が決めなければいけないところだ。
「紡?料理教室は、何人ぐらいでやってみようって考えていたんだ?」
「う〜ん、そうだなぁ…お店のキッチンの広さを考えると…2.3人が限界だと思うんだよね…?」
「と、なると…初回はあと1人ぐらいか…」
「出だしは無理せずやってみても…いい?」
「ああ、もちろんだよ?集客は、俺に任せておけ」
ここまで来れば、あとはSNSに料理教室の日時、時間、会費をアップロードするだけだ…!
ササササッ…!
「…紡?こんな感じでSNSに上げてみるよ?」
「…うんっ!いい感じ!…誰か来てくれるといいなぁ!♪」
俺は手馴れた手つきで、店のSNSに料理教室の事をアップロードしてみたんだ。
アップロードして間もなく…
ピコンっ!!!
ものの数分である男の子から連絡が来て…
その子を料理教室に招くことにした俺たちは、料理教室の募集を早々と打ち切ることになったんだ。
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