航平の提案、紡の挑戦

「ごちうさまでしたっ!!!☆」

「とても美味しかったですっ!」


 食事も食べ終わり、満足そうな笑みを浮かべる2人。お皿の上には何も残ってなく、とても綺麗に平らげてくれていたんだ。


「えへへっ、2人とも美味しく食べてくれて、僕も嬉しいよっ!ありがとねっ?」


 紡も可愛くニコって2人に返すから、その素顔を見ると俺まで幸せになるんだ。


 俺が2人のお皿を下げてる時、航平が俺の紡に、ある事を提案し始めた。


「ねぇねぇ?むぐはさ、こんなに美味しい料理を作れるんでしょ?なら、他の人にも料理を広めたり、教えたりしたいなぁって思ったりはしないのぉ??」


「ええ〜っ!僕が人に料理を教えるかぁ…う〜ん、考えたことは無かったかな…?」


 紡の料理は、紡だけが作れればいいと思っていたけれど、よく考えてみたら俺なら、紡に料理を教えてもらいたいかもなぁ…?


「ならさ、ならさ!やってみようよっ!☆むぐの料理教室!絶対に上手くいくよっ!」


 航平はなんでこんなにも、料理教室を推してくるんだろうか…悪い話ではないけれど、なんだか裏もあるように、俺は感じてしまった。


「上手くいくのかなぁ…?でも、どうして航平くんは、そんなに料理教室を僕に推してくれるんだい?」


「ええっ…そ、それは…」


 ん、それは…?ほら、やっぱりなにか裏があったぞ…?だって、航平が少しソワソワしだしたから…でもきっと、悪い事ではない。


「ぼ、僕っ!…つ、紡にこの卵焼き…作ってあげられるようになりたいんだっ!!///」


「お、俺に…っ?!」


「な、なんだよっ!!だめっ?!もう!これ以上、色々言わせないでっ!!」


 そういう事だったのか、料理教室と言いながらも、航平自身も大切な人のために料理作りを覚えたい、それを紡に教えて貰いたいってことだったんだな…ほんっと素直じゃないなぁ…


 紡も航平の提案に満更でも無い様子だったけど、まだどこか踏み出せなさそうな面持ちも見せていたんだ。


「なぁ、紡?やってみたらどうだい?俺もサポートするし、最初は航平も含めて少ない人数から、やってみたらいいんじゃないか?」


 俺は紡の挑戦をただただ応援してあげたかった。決めるのは紡だけれど、紡がやってみたい事はやらせてあげたいし、支えてあげたい。


 溺愛しすぎ?そりゃ、可愛い弟で愛する人が望むなら叶えてやりたいだろ?


「凌空が手伝ってくれるなら…小さい規模からやってみようかな…?航平くんも来てくれるなら尚更…うんっ!頑張ってみようかな??」


 紡の覚悟に、航平はすぐさま反応し「やったぁあぁいっ!☆」と嬉しそうに声をあげた。


「ねぇ、航平?俺は参加しても…」

「ええ〜っ!紡はだめ〜っ!」

「な、なんでたよっ…!!」

「そこは、どうしてもダメなの!察しろってばっ!」


 コラコラ、喧嘩すんなって…!

 2人を宥めた後は、料理教室の日を決める事にしたんだ。


 まずは、土日のどちらかの方がみんな来やすいかもしれないことや時間帯は、昼営業が終わってから…


 色んなことを少し煮詰めて、次の週の土曜日に実際にやってる事で調整することになったんだ。もちろん、航平も来れるみたいだ。


 これから楽しく、料理教室が始まる事になるなんて、まだこの時は、誰も知らない。

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