僕が届けたい『幸せ』
僕たちのキスを見て、目の前でぽかんとする2人…そりゃそうだよ!その反応で間違いないっ!!
「はぁ、うちの紡がごめんねっ?ほんと、こういうところの配慮が足りなくてっ!でも、2人の関係が知れて嬉しかったなぁ!…あれれっ?!でもさ、でもさ?これでもっともっと、りっきゅんとむぐと仲良しになれた気がするね!☆」
航平くんはそのまま、お返しと言わんばかりに僕たちの目の前で、紡くんの頬っぺたに、キスを決め込んで見せてくれたんだ。
不意のキスに、紡くんもあわあわしながら、頬を紅潮させている…悔しいけど、2人ともすっごく可愛い…!
「僕たちも付き合ってるんだ!この残念なイケメン、紡くんとねっ!☆」
「ざ、残念は余計だろっ!航平は、俺の大事な彼氏です、2人ともよろしくお願いします!」
ここまでお互いの話が出来たんだ、もう僕たちは大きな隠し事もない状態になり、なんだか気持ちがすごくスッキリしちゃたんだ。
「こちらこそ、これからもよろしくねっ?」
「何かあったら、いつでもここに来たらいいさっ!」
こんな出会いって…あるもんなんだねっ?よし、美味しいご飯を2人に作り上げてあげないとね!
-よしっ!出来たっ!
「はい、お待たせしました、まずは紡くんの唐揚げ定食です」
いつも通り、凌空が配膳をしてくれる。
こんなイケメンにさ、そりゃ配膳されたら嬉しいよねぇ…いやいや僕、何考えてるんだよっ!!
その後、航平くんの元にも僕のオススメ定食が運ばれて、2人とも目をキラキラさせながら箸を手に取ったんだ。
オススメ定食
そう、僕の十八番、卵焼き定食だ。
メニューに迷ったら、これをみんなにオススメする。僕にしか出せない、僕だけの家庭の味。
昔から、みんなが『美味しい』と声を揃えて言ってくれる、僕の自慢の逸品なんだっ!
「いっただっきまぁ〜すっ!☆」
「いただきますっ!」
2人とも声を合わせて挨拶してくれて、その後の2人の仕草が、どうしても可愛くて仕方なかったんだ。
「はい、航平?唐揚げ、1個でいい?」
「いいの?!やったぁ!なら、僕も卵焼き…はいっ!♪」
お互い食べる前に、おかずを交換しあっている姿を見て、本当に仲がいいな、そして可愛い以外にも、お互い想いあってるんだなって、僕はそう感じたんだ。
いよいよ、卵焼きが航平くんの口へと運ばれる…
僕、卵焼きを初めて食べてもらう時だけ…なぜかすごく緊張するんだ…そう、僕の家庭の味は、父さんと母さんから引き継いだ【大切な味】だから…
パクっ!♪
「…はわぁっ…!え、ええっ…?!お、おいしいっ…!く、口の中でもう…無くなっちゃった…」
嬉しい…この反応が、1番大好きなんだ。
やっぱり、美味しいって言って貰えるのは、何年経とうがいつだってどんな時だって嬉しいものだ。
そして、美味しいと言って貰えることが、食を通してその人に『幸せ』を届けられた瞬間なのかな?僕はそう考えていたんだ。
「つ、紡も、卵焼き食べてみてっ!僕はこんなに美味しい卵焼きを…食べたことがないっ!」
「せ、急かすなよ!た、食べるからっ!」
パクっ!
「…え…?!これ、卵焼き…?!いや、形はすごく綺麗な卵焼きなのに…口に入れたら、と、溶けたっ?!だ、出汁もすっごく美味しい…っ」
ここまで2人に褒められると、何処と無く照れくさいし、嬉しさで身体がむず痒くなった。だって、素直に嬉しかったから…!
「紡?この2人にも、ちゃんとGlücks《グリュック》が届いたみたいだぞ?」
凌空の聞き慣れない単語に、2人も
「ぐりゅっ…くっ?」
「リュックサックじゃないよね?」
と返すしかないようだったけれど、そこは凌空がちゃんと正して、2人に説明してくれたんだ。
「そういう事なんだぁ☆ むぐ?幸せをご馳走様!」
「俺もこんなに美味しい卵焼きを食べれて幸せです!」
ちょっぴり泣きそうだった。
でも、それ以上に目の前で満面の笑みを浮かべながら『幸せ』と言ってくれたことで、僕もありがとうと共にニコッと笑顔で返してあげたんだ。
父さん、母さん?
僕の料理は、色んな人に『幸せ』を届けられているみたいだよ?いつも見守っていてくれて…ありがとう。
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