第4話 3人目

 …筈だった。


 気が付くと俺はどこかで仰向けに寝かされていた。


「痛っ…ここは…」


「気付かれました?」


 体中が悲鳴を上げている。既に夜になっているのか、暗がりで自身の外傷の確認までは出来なかった。


 …あれ?俺、服着てないぞ。


「すまん、え…っと」


「私はルミカです。先程は助けていただいてありがとうございました。勇者様」


「いや、こちらこそ助かった。俺の名前はラヴ・メーカー、それより俺の服は?」


「それなら…すべて丸焦げになりました。勇者様も一時は灰になってましたから」


 ルミカは長いブロンドヘアーを揺らし、笑顔で恐ろしい内容を告げた。


「まてまて!笑ってるけどそれってほぼ死んでたってことじゃないか」


「そうですね。でも大丈夫です。我が信仰心の前では死などほんの些細な出来事です」


 言っていることが無茶苦茶過ぎて頭が理解を拒絶している。


「わかった…もういい。それよりここは、それにミリーは?」


「ここはクリカ平原の端に位置する岩場の陰です。ミリー様は寝ずに周囲を索敵して下さっています」


「そうか…」

 正直、ミリーがそこまでしてくれているのが意外だった。もしかして俺の体を張った戦闘に心を打たれたのか?


「勇者様。少し休まれてはいかがでしょうか?」


 そこで、俺はルミカの体のある部分に目を奪われた。センシティブな内容だから敢えて表現はしないが…。


 身に着けていた修道着を俺に被せていた為、

 ルミカの身を包むのは黒い肌着のみであった。


 昼間は分厚い修道士に隠されて気付かなかったが、着痩せするタイプだったのか。

 眼前に浮かぶ強調された2つの果実に俺の2つの丸芋も反応していた。


「ルミカ、その格好だと寒いだろ!俺の側に来い」

 俺は本能の赴くままにルミカを抱き寄せた。


「きゃっ!勇者様、お戯れを…」

 ミリカは生娘のようなウヴな反応を見せる。

 これこそが俺が望んだシチュエーション!


「おい…芋野郎。このあたしが寝ずの番をしているってのになにやってんだ」


 俺の背後からドスの聞いた声が体の芯を貫く。


「ミリー…これは…誤解なんだ。ルミカが寒そうだったから…」


「ぶっ殺せ!」


 そして俺は再び灰に還るのだった。



 翌日。俺たち3人はアルカ村の西に位置する。

 イシル村の酒場で昼食を取っていた。


 俺は酒を飲みしながら、ルミカに最終確認を行っていた。

「ルミカ本当にいいのか?俺たちに着いて来て」


「是非お願い致します。私はこの村で勇者パーティーに加入申請したのですが、イシル村の勇者様に拒否されてしまいまして」


「そうなのか。これだけ凄い回復士ヒーラーは滅多にいないのに」


 …それとも他にももっと優秀な戦闘職バトルジョブがいたのか?


「正直、あたしは前衛職フロント張れる奴がほしいんだけど。芋太郎じゃ壁にすらならいわ」


「お前、せめて呼び名を統一しろよ!」


「そうですよミリー様。芋は美味しいじゃないですか」


「ルミカ、それフォローになってないぞ。とりあえずこの後、加入ついでにイシル村の村長のとこに行こうぜ。1000万ジュール貰えるだろうから」


「本当ですか勇者様。私ずっと欲しかった物があるんです」


「あんた修道士クレリックのくせにお金に目が無いのね」


「ミリー、お前も人の事言えた立場か?」


「ぶっ殺せ」

 ミリーがそう呟くが火の手は上がらなかった。


「やめろよ、ビビらすなよ」


「ここじゃ他の人も巻き添えになるから殺らないわよ」


「大丈夫ですよ。ミリー様が灰にしても私が蘇生させますわ」


「いやいや、人は戻せても建物は戻せないだろ」


 ルミカが加わった事により俺のツッコミが追い付かなくなってきている。


「ほら、あんたたち食べたんなら馬鹿なこと言ってないで行くわよ」

 

 余談だが俺は正直、ミリーの“ぶっ殺せ”という言葉がトラウマになっていた。




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