第2話 暴言アデクション
アルカ村を離れて既に半日が経過していた。
俺たちは見通しの良いクリカ平原を進んでいた。
こんなにも良い天気だというのに、
俺とミリーの雰囲気は最悪だった。
「おいミリー。せめて互いに自己紹介ぐらいはすべきじゃないか?これから伴侶に…いや長い付き合いになるんだからさあ」
「キモい、臭い、イモい。本音が漏れてんだよクソ野郎。あんたの伴侶なんて芋と結婚した方がまだマシよ」
ご覧の通り、俺からの歩み寄りは、ことごとく切り捨てられる。この暴言にはややMっ気の俺でも心を折られる。
「なんでそんなに口が悪いんだよ。少しは勇者を崇め奉れよ」
「あんたのどこに崇めて奉れる要素があるのよ。自分の顔と品性を少しは自覚したら?」
言葉の暴力に俺のライフは既に限界に近かった。
「とにかく次の村でパーティーの追加募集をしよう」
俺の声掛けに対して背後にいる筈のミリーからの返事はなかった。
「おいミリー、聞いてんのか?」
俺が後ろを振り向くとミリーは俺の遥か後方を歩いていた。たまらず俺は走ってミリーの元へ駆け寄る。
「なによ、
息を切らす俺に向かって、ミリーは訝しげに尋ねる。
「いやいや、なにって…なんでそんな後ろを歩いてんだよ」
「だってあんまり近くにいるとイモ臭いのが伝染るじゃない。それに一緒に歩いてるとこを知り合いに見られたくないし」
「お前、なんだよそれ。俺はそんなに臭いのか。それに勇者のお供なんて名誉なことだろ。喜ばれどすれ嫌がられる覚えはないぞ」
「あなた、なにか勘違いしてるかもしれなけど、
勇者なら実力が伴わないとその身に着けてる神器の腕輪も文字通りただの装飾品よ。少しは勇者たる品格と実績を示して欲しいわね」
くそっ、このアマ。口は悪いが言ってる事は正論だ。
「わかった。なら俺は勇者に相応しい人間になれるよう頑張る。だからお前も協力してくれ」
ミリーは俺が素直に認めたのが以外だったのか、
少し驚いた顔をしている。
「そうね…私も1000万ジュール分の仕事はちゃんとするわ」
「よしっ、俺の名はラヴ・メーカーいろいろと不甲斐ないとこもあるかもしれんが、よろしく頼むわ」
ようやく自己紹介ができたと、俺は勇者スマイル決めながら右手を差し出した。
そんな俺を見て、ミリーは突然、腰に装着していたポーチから分厚い布のような物を取り出した。
それを差し出している俺の右手に巻き、なにやら花の香りがする香料を吹きかける。
そしてようやく俺の手を握り返した。
「私はミリー・カプレーゼよ」
「…おい、これってどういう意味だ?」
「どういうって決まってるじゃない。直接握ると、私の手が3日はイモ臭くなからよ」
「俺ってば、そこまでイモ臭いのか?」
「なによ今更。芋掘りのアンタがイモ臭いのは当たり前じゃない。底辺職なんだから仕方ないわよ」
「お前はそうまでして俺をこき下ろしたいのか」
「こき下ろす?なんのことかしら。私は史実を述べているだけよ」
「おいっ、俺のイモ臭さは歴史的事実なのかよ!」
後に分かるのだが、彼女はこれを冗談やボケではなく、すべからく本心で言っているのだ。
「まあいい、とりあえずもっと戦力を増やさないとな」
「まったく、それなら
「骨折り爺って今年で齢125歳だろ?戦闘になってもどっちが骨が折れるか分かったもんじゃないだろ」
俺の目的はハーレムパーティーを作る事だ。
仮に熟練の戦士が加入を希望しても承諾することはない。正直、戦力よりも女子力のある奴がほしい。俺の言う事を聞く従順な女が…。
ミリーは見てくれはいいが、ちょっと品性に欠ける。現段階では観賞用ってとこか。
そんな折、平原に響き渡る程の叫び声が聴こえてきた。
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