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パーキングエリアの車んなかで夜を明かし、目を覚ますと、いつの間にか昼を過ぎてたらしく、初夏の陽射しに熱された車内は蒸し蒸しして、体中が汗だくだった。酸っぱい匂いだけ溢れてて、ヒトミの姿が見えねえ。そうだよな、俺も恥ずかしくて死にそうだよ。昨夜のことも、これまでの全てのことも。けど、それが「家族」なんじゃねえか。真っ当じゃなくていい、歪んでていいんだ。でっぷり膨らんだ腹を水滴が流れ、汗でも流れてんのかと思ったら、俺の顎から滴り落ちる涙だった。ヒトミもいま泣いてんじゃねえか。探しにいかなきゃ。俺は急いで服装を整えると、慌てて車を飛び出した。助手席に紙が一枚だけ置いてあった。乱雑な丸文字はヒトミが書いたもんだと分かったけど、あとで読めばいいやと思い、全力で走り出した。右足がやっと痛みから解放されたかのように、俺の体をかっ飛ばしてくれた。高校生のときみたいに体が軽かった。高校生みたいにヒトミを迎えにいくんだ。
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