第11話 ※綾瀬愛希目線


(疲れた〜この後どうしよう……)



 私、綾瀬愛希は次の時間、たまたま授業が入っていなかった。



 そのため、その空き時間をどう過ごすかを考えていた。



(とりあえず、今月までに提出しないといけない書類作ろうかな……でも職員室でやりたくないな〜気が休まらないし…………一人で、誰の邪魔もされずにできる場所………あっ!生徒会室があるじゃん!)



 そう思いたった私は生徒会室に向かって歩き出した。




 生徒会室に向かう途中、目の前でイツがフラフラと歩いている。



 もう授業開始のチャイムは鳴り終わっているのに。



(普段イツは、真面目に授業を受けているのになんでこんなところに?)



「何してるんですか?」



 私はイツに声をかけた。



 しかし、イツは反応せずにフラフラと歩き続ける。



 不審に思った私は、イツの目の前に出て声をかける。



「ちょっと!」



 イツの目の前に立った私は、イツの顔を見て驚いた。



「え?どうしたの?大丈夫?」



 素で心配してしまうほど彼の顔色は悪かったのだ。



「一人になれる場所に行きたい。」



 イツはそう私に言ってきた。



 私は、本来私が使う予定だった生徒会室にイツを連れて行った。



「ここなら誰も来ないから……落ち着いたら私を呼んで。私は………廊下にいるから。」



 そう私は言い、ドアを閉める。



 少しすると、イツの泣き声が微かに聞こえてきた。



 彼の泣き声を聞くのは久しぶりだった。



♢♢♢♢♢♢♢



 チャイムが鳴り授業の終わりを告げる。



 すると、ドアが開きイツが出てくる。



「アキ姉」



「少しは落ち着けた?」



「うん。だいぶ落ち着けた。ありがとう。アキ姉。」



 イツはそう言うと教室に向け歩き出した。



(イツに伝えたい。もっと昔みたいに私を頼ってほしいと……全部を一人で抱え込まないでほしいと。)



「イツ。あの………」



 私はイツを呼び止めていた。



「…………」



 呼び止めてから私は本当にこれを伝えて良いのか考え直す。



 昔、イツはよく泣く子だった。



 よく私にイツは相談しに来てくれていたし、今以上に頼られていたとも思う。



 でも、ある日を境にイツは私に相談しに来なくなり、全てを一人で抱えるようになった。



 そうなった理由は、私もよく知っている。



 イツが変わってしまう前日、イツはいつも通りに私を頼って相談して来てくれた。



 でも私はその時、イツにその相談の最適解を出してあげることができなかった。



 次の日、イツは別人のように変わってしまっていた。



 今思えば別に最適解なんて出さなくてよかったのだと思う。



 ただ、イツを側で支えることができていれば……



 でも、その時の私にはそれができなかった。



 そんな私がまた昔みたいに頼ってほしいなんて言っても良いのか……わからない………



「いや………やっぱりなんでもない。」



 結局私はイツに伝えることができなかった。



(ずるいな私って。イツに嫌われるのを恐れていつも自分の気持ちを伝えないで。その癖して一丁前に頼ってほしいなんて思っちゃって………)



 私はこんな自分が大嫌いだ。


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