第5話


昼休み



 朝は散々な目にあったが、あの後すぐ七瀬さんがフォローした事でなんとか男子生徒からの怒りを鎮めることができた。



 七瀬さんはというと、今のところ休み時間のたびにクラスメイトや噂を聞き付けた他クラスの生徒たちに囲まれており、クラスどころか学校中の人気者になっている。



 クラスメイトとはもう既に打ち解けたらしく、お弁当をクラスメイトと一緒に食べる姿を目にした。



 ちなみに俺はというと特に一緒にお弁当を食べるクラスメイトもいないので生徒会室にきていた。



ガラガラ



 生徒会室のドアを開けると既にそこには先客がいた。



 俺の妹の凪とアキ姉、そしてアキ姉の妹のハルちゃんだ。



「おにぃ〜遅いよ〜」



「別に待ち合わせはしてないだろ。」



「まぁ〜確かに」



 そう、別に待ち合わせはしていない。



 元はといえば俺が、一緒にお弁当を食べるクラスメイトがいないのに一人で他の生徒が一緒に食べあっている教室でお弁当を食べたくないという悩みがあり、アキ姉に相談したところ生徒会室で食べて良いことになった。



 その時、アキ姉も職員室で食べていると気が休まらないという悩みを抱えていたらしく、俺以外誰もいない生徒会室で一緒に食べるようになった。



 その後、凪とハルちゃんもそこに加わった。



 凪いわく、教室でお弁当を食べていると男子連中が絡んできて面倒だとのこと。



 凪とハルちゃんは学校の人気女子ランキングでも、アキ姉としのぎを削る争いをしているだけあり男子生徒からの人気が高い。



 そのため男子生徒はキッカケ欲しさにお弁当を食べている時間に話しかけていたのだろう。



 しかしそれは、凪とハルちゃんからしたら迷惑以外のなにものでもなく、逃げるようにして生徒会室にきたという訳だ。



「そういえばイツ」



「どうしたの?」



 アキ姉が俺に話しかけてくる。



「今日転校してきた七瀬さんと顔見知りみたいな感じだったけど何かあったの?」



「あぁ、それは……」



 俺は昨日あったことを包み隠さず三人に話した。



「大丈夫なの?」



 三人は心配そうな顔をこちらに向けてきた。



「大丈夫だって。三人ともそんな顔するなって。」



「なら良いけど……ちなみに七瀬さんはクラスに溶け込めてる?」



「ああ、さっきもクラスメイトと一緒にお弁当食べてるの目にしたし溶け込めてるんじゃない!?」



「実はね、今日の席替えは七瀬さんが早くクラスに馴染るようにするつもりだったの。」



(やっぱり田中が言ってたことは本当だったんだ………)



「でも、もう馴染めてるなら、今日の席替えは……」



「ちょっと待った!!!」



 アキ姉が言いかけたところで俺が止めた。



「どうしたの?」



「いやぁ〜七瀬さんまだ全然クラスに馴染めてなくて……こ、これは席替えするしか………」



 アキ姉が笑い出す。



「私まだ席替えしないなんて一言も言ってないよ。」



(しまった……)



「確かに、今イツは一番前の席だから早く席替えしたがってるのはなんとなくわかってたけど……必死すぎ。あはははは」



 そのことを聞き凪とハルちゃんも笑い出す。



 俺は恥ずかしくなり顔が真っ赤に染まる。



(穴があったら入りたい………)

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