第4話
翌日
今日は俺が待ちに待った席替えの日だ。
俺は名前が「あ」から始まる事もあり、出席番号は1番。
まだ高校三年生に進級したての今、クラスの席の並びは出席号順だ。
よって俺の今の席は一番窓側の一番前の席だ。
一番前ということさえ除けば、日当たりも風通りも良く最高の席なのだ現実はそう甘くない。
クラス全員が意見を言わないといけない時や実践をやる時に大体最初に当てられるのがこの席に座っている人なのである。
まだ二番目に当てられるなら、前の人を参考にしたり心構えができたりするが一番最初に当てられるとそうはいかない。急に当てられ、すぐに回答を導き出さなければならない。
また、やり忘れた宿題をしたり居眠りをしたりしようものならすぐに先生にバレ、回収されたり、反省文を書くはめになったりする。
そのため一番前の席はハズレ席として生徒の中で共通認識となっている。
そんなハズレ席の一つである席に座る俺は、席替えの日を待ちわびていた。
そんな中、昨日のホームルームでアキ姉から今日の放課後に席替えをすることを教えてもらった。
その為今日は俺の勝負の日である。
今日の放課後にどれだけ良い席を当てることができるかによって、今後の学校生活がどれだけ充実するか変わってくると言っても過言ではない。
出来れば一番後ろの一番窓側の席が良いがそんな贅沢は言わない。せめて一番後ろの………いや、一番前の席以外ならもうどこでもいい。
「天沢!おはよう!!」
そう声をかけてきたのは同じクラスの
「おはよう。朝から元気だな。」
「いや〜実は今日、転校生が来るって話だぜ!それも女子らしいぞ!!」
「初耳なんだが……」
「無理もない。俺も昨日の放課後に先生達が話しているのをたまたま聞いて知ったからな!」
「まじか……」
「ちなみに今日の席替えもその子が来ることが関係しているらしい。」
「どういうことだ?」
「今空いてる席は一番ドア側の後ろで隣誰もいない席しか空いてないだろう?」
「うん」
「席替えをすることで隣に誰かいる状態にして、そこから交友関係を築いていって少しでも早くクラスに馴染めるようにするためっていう目的があるらしいぞ!!」
「まじか」
「ああ。昨日先生達が言ってるの聞いた。」
(まじでそれが本当だとしたら、その転校生には感謝しないとな……)
ガラガラ
教室の前のドアが開きアキ姉が入ってくる。アキ姉の影に隠れ1人の女子生徒が入ってくる。
ちょうど顔が隠れて見えないがクラスがざわつきだす。
(田中が言ってたことは本当だったんだなぁ)
「席についてください。七瀬さん、自己紹介をお願いします。」
アキ姉はその七瀬という生徒に自己紹介をするように言う。
(七瀬!?確か昨日のあった子も……いや、まさかな………)
「みなさん、おはようございます!
俺は、その七瀬という生徒の顔を見て驚く。
(間違いない………昨日の……)
「うぉぉぉぉぉ!!!めっちゃ美少女じゃん!!」
男子生徒が騒ぎ出す。
「あっ、あの!!」
そう言い田中が急に席を立った。
「も、もしかして……シンガーソングライターのナナカさんですか?」
「う、うん。そうだけど………」
「まじか〜すげ〜」
「テレビで見るより可愛い。」
男子生徒がさらに騒ぎ出す。
(まじで有名だったんだな……)
「あの、七瀬さん!」
田中が大きな声で名前を呼んだ。
「えっと、何かな?」
「今彼氏とかっていますか?」
「い、いないけど……」
「「うぉぉぉぉぉぉぉっっっ」」
男子生徒がお祭り騒ぎしだす。
(そんなに喜ぶことか………?)
「あぁぁぁぁ!」
七瀬さんが急に大きな声をあげた。
(なっ、なんだ急に……)
七瀬さんの方に目をやると七瀬さんと目が合い、こちらに近づいてくる。
「君!昨日の!同じ学校なのは制服でわかってたけど、まさかクラスまで同じなんて思わなかったよ!よろしくね、天沢君!」
「は、はい………」
俺と七瀬さんとのやり取りを見て田中が声をあげる。
「七瀬さん。天沢とはどういう関係なんですか………?」
七瀬さんは顎に手を当て少し考えた後、ニヤリとしてこちらを見てきた。
「ひ・み・つ」
七瀬さんは悪魔的な笑顔をこちらを向けてくる。
「天沢くーん。ちょっとお話しようか。」
田中を筆頭にした男子生徒から詰め寄られる。
「ご、誤解だ」
「怪しいな……」
「いや、本当になんもなくて………」
「まぁ細かいことはどうでも良いんだよ。一発殴らせろ。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
男子生徒から詰め寄られる俺を見て七瀬さんは大爆笑していた。
(俺が何したっていうんだよぉ〜)
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