第48話 初めての討伐パーティー

 街を出て森に向かった。道沿いの畑や田んぼ周辺は街の警備隊に任せるみたい。ハンターは森の中で魔物退治する。リリスールさんが話してくれた。

「ライマインが魔物を引きつけている間に倒すよ。アイちゃんは自分の身を一番に考えておくれ。無理しなくても平気だよ」


 リリスールさんは私を緊張させないためか、いつもと同じ話し方だった。でも視線は周囲を警戒している。ハンターの顔だった。手には杖を持っていた。

「できる範囲で頑張る」

「アイちゃんは軽装だけれど平気かい」


 リリスールさんの顔が心配そうな表情に変わった。魔法ばかり考えていて、服装までは頭が回らなかった。でも不安にはさせたくない。

「遠くから魔法で倒すから大丈夫。プレシャスもいるから心配ないよ」

「アイ様はわたしが守ります」


「頼もしい使い魔だよ。羨ましいさ。さっそく魔物が来たよ。ライマイン」

「五匹のリーフウルフだ。少し数が多い。アイは近づいた魔物のみに対応してくれ」

「練習の成果を見せる。水剣アクア。矢車サファイア」

 ルースから出現した剣と盾を手に取った。剣は水の渦が先端に向かっていた。針のように先端が尖っている。剣を振ると氷の粒が残像のように残った。


 ライマインさんがリーフウルフの群れに突入した。両手剣を素早く振った。一匹が消滅した。流れるような動きで二匹目に向かった。

 リリスールさんは杖を構えながら周囲を警戒している。二匹のリーフウルフがこちらに向かってきた。


「涼球アクア」

 出現したルースから水の渦が飛び出した。一匹のリーフウルフに命中した。もう一匹は迎え撃って剣で倒した。トリプルボアーを倒せたからか冷静でいられた。

 視線を前方に向けると、ライマインさんも魔物を倒し終わっていた。こちらに向かって歩き出した。


「アイちゃんも下位魔物なら平気そうだね。この調子なら、あたいの出番はないさ。自素石を拾ったら移動するよ」

 自素石を集め終わった。ライマインさんが先頭で歩き出した。先ほどの場所から離れないうちにライマインさんが足を止めた。


 木々の間を見つめていた。魔物を見つけたみたい。

「またリーフウルフだ。数匹いる。先ほどと同じに倒す」

 ライマインさんが歩き出した。距離を取ってから後に続いた。私にもリーフウルフが見えた。今度は七匹だった。


 三匹のリーフウルフがライマインさんに向かった。残りの四匹が、私とリリスールさんに向かってきた。接近戦は避けたい。

 効率よく魔物を倒したい。魔法を唱える前に水の渦を多く想像した。

「涼球アクア」

 三つの渦が飛び出した。独立した曲線を描きながらリーフウルフに命中した。同時に三匹を倒せた。


 もう一匹が近寄ってくる。目の前をリリスールさんが横切った。

 軽い身のこなしで避けながら、杖を使って攻撃していた。何度か杖による攻撃が当たると、リーフウルフが消滅した。


 ライマインさんも近くに寄ってきた。

「魔物の数が思ったよりも多い。上位魔物の影響だろうか」

「可能性はあるさ。でも下位魔物なら何匹いても平気だよ。あたいも一緒に倒すさ」

「リリスールさんの動きが凄かった。接近戦も得意に思えた」


「街周辺の下位魔物くらいだよ。杖だと威力が弱いさ。あたいはアイちゃんの魔法に驚いたさ。同時に三匹倒すとは凄いよ」

「制御が難しいけれど、上手く魔法が発動できてよかった」

 宝石魔法は想像して応用が利く。でも複数魔物を同時攻撃するには、狙いを同時に複数定める必要がある。数匹が限度に思えた。


「俺も魔法を見たかった。複数同時ができるのなら、範囲攻撃の魔法は使えるのか」

「次に魔物を見つけたら試してみる」

「アイちゃんは凄いよ。まだ時間はあるね。森の奥に行くよ」


 森の中を進んだ。しばらく歩くと視界が開けた。

 小さな池の周辺でビッグポイズンフロッグを見つけた。

「三匹いる。アイの範囲攻撃を試すにはよさそうだ」

 水の渦を想像した。三匹が入る範囲に大きな水の塊が降り注ぐ。


「涼球アクア」

 ルースから出現した水の渦がビッグポイズンフロッグに向かった。大きな渦に変化しながら、ビッグポイズンフロッグの上空から地面に衝突した。

 水が周囲に弾けるとビッグポイズンフロッグの姿はなかった。


「アイには驚かされる。初めて唱えて使えた。ギルドマスターが喜びそうだ」

「魔法になれてきたようだね。アイちゃんの成長が楽しみさ」

「上手くできてよかった。でも範囲攻撃は注意が必要みたい。威力が凄すぎる。火属性の紅球ルビーを森で使ったら火事になりそう」


 ダンジョン内での火属性も同じだった。酸欠の可能性がある。火属性と水属性以外も機会があったら覚えたい。

 リリスールさんとライマインさんが褒めてくれた。魔物退治中だけれど笑顔も見せてくれた。純粋に嬉しかった。

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