第10石 アクアマリン

第46話 ハンターギルドに集合

 二刻の鐘が鳴るあたりでリリスールさんが家に来た。ハンター全員がハンターギルドに来てほしいみたい。

 プレシャスを連れて、リリスールさんと一緒に街へ向かった。ハンターギルドに到着して扉を開けた。いつも以上に人で混んでいた。リガーネッタ以外のハンターも全員が呼ばれたみたい。


「アイちゃん、隅のほうで話を聞くかい」

「邪魔にならない位置で聞きたい」

 リリスールさんに誘われて、後ろにある席へ座った。


 しばらくしてコララレさんが受付の横に現れた。ピミテテさんも近くにいる。

「声をかけたハンターは概ね集まったようです。知っている人も多いと思いますが、私がギルドマスターのコララレです。領主様からの緊急依頼で招集しました」

 半数程度がざわついた。残りの半数は次の言葉を待っていた。リリスールさんは驚いていなかった。ただ真剣な顔つきをしている。


 部屋のざわつきが収まった。

「知っているハンターもいると思います。上位魔物がリガーネッタに近づいています。まだ方向は定まっていませんが、最悪の場合は五日後に街近くまで来ます。ですが上位魔物は大聖女様が対応しています」

 パメナナさんも上位魔物の接近を知っていた。驚いた声は聞こえなかった。


「リリスールさんも何か知っていたの?」

 横に顔を向けて小声で話しかけた。

「驚いたかい。リガーネッタの中級ハンター以上は知っていたよ。でも口止めされていたのさ。アイちゃんに話せなくて悪かったよ」

「気にしていないから平気よ。上位魔物の噂は聞いていた。それよりもマユメメイが無事か知りたい。何か聞いていない?」


「上位魔物相手に善戦していると聞いたよ。安心したかい」

「やっぱりマユメメイは凄いのね。無事でよかった」

 上位魔物は消滅していない。戦いはまだ続く。皆が無事でいてほしい。


 コララレさんに視線を戻した。

「緊急依頼は街と森周辺の魔物退治です。普段と異なる魔物や中位魔物の存在も確認されています。報酬はランク相当のポイントと金貨十枚です。買い取り価格も通常の二倍にします。パーティー編成も通常の制約はありません」


 驚いている声が上がった。若い人たちだった。装備は質素で、私と同じような駆け出しに思えた。低いランクほどお得なのかもしれない。

「依頼を受けるかはハンター自身に任せます。参加するハンターで、現在受けている依頼があれば一旦保留となります。参加者はピミテテへ申し出てください」


 コララレさんが奥の部屋に消えていった。すぐに何名かのハンターがピミテテさんに話しかけていた。

「アイちゃんは魔物退治を受けるのかい」

「街の人の役に立ちたいから依頼を受けたい。ただ気になる点があった」

「あたいの分かる範囲で教えるよ」


「パーティー編成の制約が分からなかった。依頼を受けるにしても、私一人では討伐は無理と思っている。誰かと組む場合の制約を知りたかった」

 プレシャスは強いけれど、魔物が多ければ対応しきれない。私自身はまだ魔物退治になれていない。一人では無理と分かっている。


「アイちゃんはまだパーティーを組んでいなかったね。ランクアップと関連するから一緒に説明するよ。依頼達成で点数がもらえる。ランクポイントと言われているさ。ここまでは平気かい」

「ランクを上がるための必要なポイントよね。この前の討伐依頼でもらったよ」


「パーティーでの依頼はポイントを人数で割るのさ。一人だけ強いハンターがいると、実力以上の依頼でもポイントが入ってしまう。そのための制約さ」

 リリスールさんの説明は分かった。極端に言えば、私がコララレさんとパーティーを組んで依頼を受ける。簡単に達成できてポイントが入ってしまう。でも私が魔物退治をしなければ実力は身につかない。


「どの程度のランク差ならパーティーを組めるの?」

「アイちゃんならランク3のハンターとまで組めるさ。でも今回は、あたいと組んでもポイントが入るよ」

「リリスールさんと組めれば安心できる。でもリリスールさんの迷惑になりそう。普段一緒に組んでいるパーティーメンバーもいるよね」


「白魔道士は誘いが多いから、あたいは固定パーティーを作っていないさ。アイちゃんさえよければ、同じパーティーで依頼を受けるかい」

「本当? 一緒のパーティーだと嬉しい」

「決まりだね。あとは接近物理の前衛がいれば安心できるさ。手頃なハンターがちょうどいたね。ライマイン、こっちに来られるかい」


 リリスールさんが手を振った。視線の先にはライマインさんが立っていた。リリスールさんの声に気づいたみたい。こちらに歩いてきた。

「何の用事だ。リリスールも緊急依頼を受けるのか」


「そのつもりさ。アイちゃんと一緒のパーティーだよ。ライマインも一緒に行くかい」

「これからパーティーメンバーを考える予定だった。アイとリリスールのパーティーなら問題ない。俺も一緒に参加する」


「知っている人で嬉しい。ライマインさん、頼りにしているよ。私も頑張るね」

 本来は私とパーティーを組むランクではなかった。二人とも私より年上だった。リリスールさんは私よりも一回りくらい年齢が離れていると思う。実力も判断力も二人に遠く及ばない。足手まといとならないように頑張りたい。


「魔物の足止めは任せてくれ。アイの魔法も期待している」

「これでパーティーが決まったさ。アイちゃんは、他に心配事はあるかい」

 魔物退治はこのパーティーなら安心できる。魔物の数が多くなれば、プレシャスに助けてもらえれば平気。少し異なる観点で情報が欲しかった。


「緊急依頼自体は平気よ。ただ領主様からの依頼よね。どのような人物か知りたい」

「ネンダーツ伯爵かい。比較的良心的な領主様さ。ハンターとの関係も良好だよ。今回の魔物退治には街の警備隊も出してくれたさ」

「俺も悪い噂は聞いていない。大聖女様の生まれた領地だ。他の貴族からも注目されている。模範となる必要もあるのだろう」

 悪い領主でなくてよかった。


 マユメメイの生まれた場所が犯罪の巣窟だったら悲しい。

「教えてくれて助かった。他に聞きたい内容はないよ。私も頑張って魔物を倒す」

 パーティーメンバーが決まった。参加前の報酬の分配を決めた。最終的には自素石と素材は三等分することになった。私の取り分が多いけれど断り切れなかった。

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