第37話 綺麗すぎた宝石魔法

 マユメメイが来る前に魔法を確認したい。七色オパールも同時に使う。プレシャスと一緒に庭へ出た。

「魔法は踊りと一緒に確認する。最後に七色オパールを大空に向かって唱えたい。多くの花火を一度に咲かせたい」


「こちら側から見ています。アイ様なら素晴らしい踊りと魔法になるでしょう」

「最初は新しい魔法よ。花びらはなびらスピネル」

 見た目に変化はなかった。オフの状態で出現させた。周囲には宝石魔図鑑とスピネルのルースが、浮いているだけだった。


「ここからは今までと同じ。音色トルマリン。煌めきトルマリン。音楽と花を一緒に開始してみせる。~花びら踊る街で~。オン」

 音楽と同時に、私の周囲で花や花びらが舞い始めた。心の中で想像を膨らませれば、二つの魔法を同時に開始できた。便利な機能だった。


 いつ通りに踊り始めた。慣れてきたから踊りも上手くなったと思う。プレシャスの表情も楽しそうだった。

「花の数も大きさも、踊りの邪魔になりません。花が踊りを引き立てて素敵です」

 踊りを中心に見せたかった。宝石魔図鑑に書かれた内容で問題なさそう。周囲の花や花びらを目で追いながら踊りに集中した。


 一曲のみだけれど気持ちよく踊れた。

「酒場でも使えそう。花や花びらは消えるから周囲を汚さずに済む」

「冒険者や旅人も喜ぶでしょう」

「マユメメイも気に入ると思う?」


「わたしも心を奪われました。アイ様の気持ちが伝わると思います。アイ様は大聖女のことになると嬉しそうに話します」

「マユメメイは特別な友達だからね。無理だと思うけれど一緒に旅したい。もちろんプレシャスも一緒よ」

「一緒の旅を楽しみにしています」


 イロハ様の世界を楽しむ。一人よりも大勢のほうがもっと楽しめそう。人間だけではなくて、精霊や使い魔とも友達になりたい。

「あと確認する魔法は七色オパールね。空に向かって唱えるから近寄っても平気よ。一緒に花火の魔法を楽しみたい」


 プレシャスが足元に寄ってきた。

「次はオパールを使う魔法ですか?」

「初日に覚えた魔法の一つね。あのときは家の中だったから威力を弱くした。今回は書かれている威力と最大威力で試してみたい」

「七色の光が何処まで広がるか楽しみです」

 どの程度まで大きな花火になるか私も楽しみだった。


「さっそく唱えてみるね。最初は宝石魔図鑑と同じ威力よ。七色オパール」

 ルースが出現した。七色の光がらせんを描きながら、空に向かって飛んだ。屋根の高さを超えたあたりで、花火のように弾けて飛び散った。虹色のオーロラが降り注いだ。

「日中だけれど花火のようにきれい。外のほうが迫力もあった」


「魔法による花は美しいです。夜に使用すれば、もっと色鮮やかになるでしょう」

 プレシャスも喜んでくれた。

 胸元が暖かかった。手で確認するとペンダントが熱を帯びていた。徐々に熱さは収まっていく。イロハ様の加護と関係があるかは不明だった。


 気のせいか体がだるくなった。疲れが溜まってきたのかもしれない。あと一度魔法を使ったら休憩がよさそう。

「最大の威力にして連続で唱えてみるね。確認できたらマユメメイが来るまで休憩よ。五連の花火にすれば迫力がありそう。七色オパール」


 残りの四回は心の中で唱えた。七色の光が連続で空に向かった。先ほどの二倍以上の高さまで飛んでいった。

 急に視界が狭くなった。明かりも夜のように消えていく。体が動かずに視線が空から地面へ移った。睡魔が襲ってくる感覚だった。プレシャスの声が子守歌に聞こえた。

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