第8石 スピネル

第36話 鮮やかなスピネル魔法

 今日の昼食時にマユメメイがこの家へ来る。何処かに出かけるらしくて、しばらく会えなくなる。手料理を振る舞うための下準備が終わった。

 テーブルのある部屋に戻るとプレシャスが待っていた。


「手料理以外にもマユメメイを喜ばせたい。どのようなものを気に入ると思う?」

「アイ様が考えたものであれば平気と思います」

 高価なものかどうかではなくて、気持ちが大事ということね。品物としては渡せないけれど、私にしかできない贈り物があった。


「宝石魔法でマユメメイを喜ばせたい。以前作った七色オパールのように、見た目で楽しませる。マユメメイも気に入ると思うのよ」

「どのような宝石を使うのですか?」

 プレシャスが近寄ってきた。


「これから考える。どのような魔法効果にするかで、宝石の種類を決めるつもり。七色オパールは花火だった。迫力があって夜空に咲く。今回の魔法は手元で楽しみたい」

「アイ様の周囲で花が咲く姿も素敵そうです。色々な種類の花を咲かせる。踊り子と一緒に魔法を使えば大聖女も喜ぶでしょう」


「楽しそうな雰囲気になりそう。プレシャスの考えを元にしたい。花の種類や色、形や大きさまでランダムにすれば見ていて飽きない」

「素敵な考えです。この魔法に適した宝石はありそうでしょうか」

 魔法の方向性が決まった。今回は多数の色を使いたい。今までに使っていない宝石で色の種類が多い宝石を考えた。該当する宝石が思い浮かんだ。


「宝石はスピネルにする。多くの色が揃っている素敵な宝石よ」

 宝石魔図鑑を開いた。レッドスピネルのルースを表示させた。

「この宝石がスピネルですか。綺麗な赤色です」

「レッドスピネルという種類よ。昔はルビーと同じ鉱山からも取れていたから、ルビーと間違われた時期もあったみたい」


 ルビーの頁を開いて交互に見せた。

「たしかにルビーに似ています」

「王族が持っていたルビーのジュエリーが、スピネルだったという話もあるくらいよ」

「自素石のように判別は難しいのですか」


「今では鑑別技術が進んで、ルビーとスピネルは見分けられる。硬度はルビーよりも低いから、それでも判断できそう。結晶は八面体でダイヤモンドと同じみたい」

「時代によって異なるのですね。今回の魔法も花が咲く感じでしょうか」


 花が舞う感じにはしたい。あわせて間近で見られるようにもしたい。

「花や花びらが自分の周囲で舞う感じにしたい。そのほうが踊りにもあうと思う」

「華やかな感じで素敵になると思います。早く実際の魔法を見たいです」


「宝石魔図鑑に書くね。自分の周囲でランダムに変化する。一つの花ごとに魔法を唱えていたら面倒よね。オンとオフでの切り替えも書きたい。基本はオフがよさそう」

 オン状態なら、ずっと花や花びらが舞う。踊りに集中できるからよさそう。呪文も考えた。準備が完了した。

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